三菱自動車工業は7月9日、東京大学発のロボットスタートアップ、Highlanders(ハイランダーズ、東京都豊島区)と、人型ロボット(ヒューマノイド)の共同開発と量産化に関する基本合意書を締結したと発表した。三菱自動車の京都製作所京都工場の遊休建屋を活用し、2027年の早い時期に生産を始めることを検討する。加藤隆雄社長兼最高経営責任者(CEO)は同日の共同記者会見で、量産開始後に月1000台規模の生産体制を目指す考えを示した。

「N」=深層学習で全身を動かす国産ヒューマノイド

量産の対象となるのは、Highlandersが自社開発した人型ロボット「N(エヌ)」だ。身長・体重を人間に近づけた設計で、5本指のハンドや複数のカメラを備え、ボタンやペダルなど人間向けに作られた道具や設備をそのまま扱える。全身の関節は深層学習(ディープニューラルネットワーク)を用いたAIが制御し、歩行時には毎秒100回ほどの頻度で次の動作を計算し続ける。エンジンの組み立てのように、体を大きく動かさず手先の細かい作業が中心となる工程での活用を想定する。

ヒューマノイドとは、人間の作業空間や道具に合わせて設計された人型のロボットを指す。専用の生産ラインを組み直さなくても、人が働く既存の現場にそのまま入れられる点が、決められた場所に固定して使う従来の産業用ロボットとの違いだ。

三菱は「量産」、Highlandersは「頭脳」で分担

両社は役割を分ける。三菱自動車は長年の自動車生産で培った量産設計・品質保証・工場運営のノウハウを提供し、Highlanders製ロボットの生産そのものを担う。Highlandersはロボット本体とAIの開発に集中する。三菱自動車は今年、Highlandersに出資しており、今回の基本合意で協業を一段進めた形だ。

背景には、国内の生産現場が抱える人手不足がある。三菱自動車は合意の狙いを「労働力不足への対応や生産現場の高度化、柔軟な生産体制の構築」と説明する。まず自社工場に導入して有効性を確かめ、将来は外部への販売も視野に入れる。危険な作業や重い物を扱う作業、単純な反復作業をロボットに任せ、省力化や安全性の向上につなげる狙いだ。

自動車大手が「人型ロボット」に相次ぎ参入

自動車メーカーが人型ロボットに乗り出すのは三菱に限らない。米テスラは自社工場向けに「オプティマス(Optimus)」を開発し、トヨタ自動車も米企業などとの連携を進めてきた。作業データを大量に集めてロボットのAIを鍛える「フィジカルAI(現実世界で動くAI)」の競争は、米国や中国の巨大テック企業が先行してきた分野だ。

自動車の生産は、多数の部品を高い精度で繰り返し組み立てる典型的な量産産業である。人型ロボットも「1台ずつの試作」から「月に千台単位で造る工業製品」へと段階が移りつつあり、車づくりで築いた量産技術を持つ自動車大手が、国産ヒューマノイドの担い手として名乗りを上げた格好だ。実際の生産開始は2027年で、計画通りに立ち上がるかどうかは、今後の開発と工場での実証にかかる。