NTTドコモビジネスは7月6日、全国のデータセンターに分散して置いたGPU(画像処理半導体)を、1つの大きな計算資源のようにまとめて使える実証環境「GPU over APN Testbed」の提供を始めたと発表した。次世代の光通信基盤「IOWN(アイオン)」の技術を活用する。

全国8拠点のGPUを光でつなぐ

実証環境は、札幌、金沢、福岡、大阪と、首都圏の秋葉原・三鷹・川崎・横浜の計8拠点を結ぶ。各拠点のデータセンターを、100ギガビット(毎秒)級の大容量で遅延の少ない光回線でつなぐ。

使うのは、IOWNの中核技術である「APN(オールフォトニクス・ネットワーク)」だ。従来の通信は途中で光を電気信号に変換する必要があり、その分だけ遅れや電力の無駄が生じる。APNは経路をできるだけ光のまま通すことで、遅延を大幅に抑えられるのが特徴とされる。この低遅延のおかげで、離れた場所にあるGPUどうしでも、距離をあまり意識せずにAIの学習や推論を実行できるという。

なぜGPUを「分散」させるのか

背景には、生成AIの急速な広がりがある。AIの学習や推論には大量のGPUが必要で、世界的に需要が逼迫している。

一方で、GPUは動作時に大量の電力を消費し、発熱も大きい。高性能なGPUを1か所のデータセンターに集中させると、電力の供給や冷却、設置スペースが追いつかなくなる恐れがある。GPUを各地のデータセンターに分けて置き、それを光ネットワークで束ねられれば、こうした一極集中の制約を和らげられる。地方のデータセンターや、比較的電力に余裕のある地域を活用しやすくなる利点もある。

IOWNとは何か、今後の展開

IOWNは、NTTが次世代の情報通信基盤として推進する構想で、光を電気に変えずに扱う技術を軸に、低消費電力・低遅延・大容量の通信を目指している。

今回の実証環境は、分散したGPUを実際に試せる「テストベッド(試験の場)」と位置づけられる。NTTドコモビジネスは、ここで得られた成果や知見を積み重ね、将来の本格的な展開につなげるとしている。AIを支える計算基盤をどう効率よく整えるかは、電力問題とも絡む重要な課題となっている。