東北大学や沖縄科学技術大学院大学、理化学研究所などの研究チームは7月2日、原子1個分の薄さしかないホウ素のシート状物質「ボロフェン」を、安定した形で作り出すことに成功したと発表した。成果は米科学誌「Science Advances」に掲載された。
ボロフェンを理解する手がかりになるのが「グラフェン」だ。グラフェンは、炭素原子が網目状に1層だけ並んだ、極めて薄いシート状の物質を指す。薄くて丈夫なうえ電気をよく通すため、2000年代に注目を集め、電子部品などへの応用研究が世界中で進んできた。この成功をきっかけに、炭素以外のさまざまな元素でも同じような1原子の厚さのシートを作れないかと探索が続けられてきた。
ボロフェンは、その「ホウ素版」にあたる。理論上は、電気や磁気の面で優れた性質を示すと期待されてきた。しかし、ホウ素の原子は単独では結びつきが不安定で、シートを作ってもすぐに壊れてしまい、安定した形で用意するのが難しいという壁があった。
研究チームは今回、「LaRh3B2」という安定した3次元の結晶に着目した。この結晶の中に、ホウ素の原子がシート状に並んだ層が含まれていることを利用し、その層を結晶の表面に露出させることで、ボロフェンを安定した状態で取り出すことに成功した。壊れやすいシートを、丈夫な土台となる結晶ごと扱う発想だ。
取り出したボロフェンを詳しく調べると、電子が特定のエネルギーに集中する現象や、六角形の対称性が一方向に偏る特殊な状態など、興味深い電子的な性質が確認されたという。
チームは、今回の手法が、単独では作りにくい不安定な2次元材料を安定して扱う新しい道を開くもので、次世代の量子材料の開発を加速させると期待している。現段階は基礎研究で、すぐに製品に使えるわけではないが、グラフェンに続く新しい素材の候補を実際に手にして調べられるようにした点に意味がある。