外務省は10日、イラク、レバノン、イスラエル・パレスチナの3か国・地域について、海外安全ホームページに掲載する「危険情報」を同じ日に相次いで引き下げた。イラク南東部8県とレバノンのベイルート県などでは、最も重いレベル4(退避勧告)が外れた。ガザ地区やレバノン南部などはレベル4のまま据え置いた。

イラク南東部8県とベイルート、「退避勧告」が外れる

イラクは、バービル、カルバラー、ナジャフ、ディーワニーヤ(カーディシーヤ)、バスラ、ムサンナー、ズィーカール、ミーサーンの南東部8県をレベル4からレベル3(渡航中止勧告)へ引き下げた。8月以降、これらの地域でイランなどからの攻撃が発生していないことを理由に挙げた。8県以外はレベル4を継続する。

引き下げた地域でも「渡航は止めてください」という水準は変わらない。ただし外務省は、イラクの復旧・復興に寄与する企業・団体の取り組みなど「真にやむを得ない事情」がある場合には、在イラク日本大使館などと連絡を取り組織として安全対策をとることを条件に、レベル3地域への渡航・滞在を妨げないとした。

レバノンでは、ベイルート県、ラフィーク・ハリーリ国際空港の敷地内、同空港とベイルートを結ぶ幹線道路51号線、山岳レバノン県メトン地区とバーブダ地区(ベイルート南部郊外のダーヒエ地区を除く)、ケセルワン・ジュベイル県、北レバノン県のバトルーンなど4地区をレベル4からレベル3へ引き下げた。首都と、そこへ入る空の玄関口が退避勧告の対象から外れた形だ。

根拠は、4月17日(現地時間)に発効したレバノン・イスラエル間の停戦合意である。外務省は、合意後もイスラエル国防軍(IDF)による攻撃の対象がおおむねレバノン南部、バールベック=ヘルメル県東部、ダーヒエ地区に限られ、ダーヒエ地区を除く山岳レバノン県以北では攻撃が確認されていないと説明した。6月26日(現地時間)に発表された「3か国枠組み合意」で両政府間の緊張が一定程度和らいだことも挙げた。

一方、南レバノン県、ナバティーエ県、ベカー県、バールベック=ヘルメル県、アッカール県、ダーヒエ地区などはレベル4を継続する。南部ではIDF部隊の駐留と攻撃が続いており、情勢は流動的だとしている。

イスラエルは大半がレベル2 ガザは退避勧告のまま

イスラエル・パレスチナでは、2月末以降の中東情勢を受けてレベル2からレベル3へ引き上げていた地域を、6月以降攻撃が発生していないとしてレベル2(不要不急の渡航は止めてください)へ戻した。3か国・地域のうち、一般の渡航が事実上可能な水準まで下がったのはここだけだ。

据え置いたのは、ガザ地区と同地区との境界周辺、レバノンとの境界地帯のレベル4と、ヨルダン川西岸地区のレベル3である。ただし西岸でも、ジェリコ、ベツレヘム、ラマッラの3都市とエルサレムを結ぶ幹線道路などは対象から外れ、レベル2の扱いとなる。

4段階の「危険情報」 レベル4が外れる意味

危険情報は、渡航や滞在の目安を4段階で示す仕組みだ。レベル1は「十分注意してください」、レベル2は「不要不急の渡航は止めてください」、レベル3は「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」、レベル4は「退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)」となる。

レベル4とレベル3の違いは、すでに現地にいる人への呼びかけの有無にある。レベル4は滞在者に安全な国・地域への退避を求めるが、レベル3は新たな渡航を止める勧告が中心で、退避そのものは求めない。今回イラク南東部やベイルートで起きたのは、この「出てください」という呼びかけが外れる変化であり、駐在員や企業が現地にとどまる判断をしやすくなる。

危険情報に法的な強制力はなく、渡航を禁じたり退避を命じたりするものではない。ただし海外旅行保険の引き受けや企業の出張規程の基準として参照されることが多く、事業活動への影響は小さくない。

中東・北アフリカで続く引き下げ

外務省は8月4日にも、エジプトの南シナイ県のうちアカバ湾沿岸地域を除く全域をレベル3からレベル2へ引き下げている。北シナイ県はテロリスト掃討作戦が続いているとしてレベル3を維持した。

部分的な引き下げは約1か月で4か国・地域に及んだ。いずれも全土一律ではなく、攻撃が確認されていない地域を切り分けて下げる形をとっている。外務省は今後も不測の事態が起きる可能性は排除されないとして、複数の情報源から最新情報を得るよう呼びかけている。