国連の国際移住機関(IOM)は10月7日、戦闘が続くイエメンで家を追われた人が10県で20万1217人、3万3776世帯に達したと発表した。このうち19万7755人は9月1日以降に避難している。9月21日時点の12万9438人から、16日間で7万1779人増えた。

IOMのエイミー・ポープ事務局長は「人々は命がけで逃げているのに、安全な行き先が見つからない。必要なのは屋根と食料と安全で、それはきょう必要だ。私たちのチームは現地にいるが、資金がない」と述べ、各国に資金の拠出を求めた。

1か月で10倍超 9月下旬にいったん鈍った増え方が再び加速

今回の避難は、西部沿岸とタイズ県で戦闘が急激に強まった9月3日を起点に膨らんできた。IOMの発表をたどると、増え方は次のようになる。

  • 9月7日……1万8500人(激化から72時間)
  • 9月12日……7万6千人
  • 9月13日……8万5818人(うち9月に入ってからが8万2164人)
  • 9月14日……9万3864人
  • 9月16日……10万4796人・1万7461世帯
  • 9月18日……11万8086人
  • 9月21日……12万9438人・2万1573世帯
  • 9月28日……14万5308人・2万4218世帯
  • 10月7日……20万1217人・3万3776世帯

9月7日からの1か月で、およそ11倍になった。

1日あたりの増え方でみると、波がある。9月16日から21日までの5日間は2万4642人、1日およそ4900人だった。次の9月21日から28日までの1週間は1万5870人で、1日およそ2300人に落ちた。ところが9月28日から10月7日までの9日間は5万5909人、1日およそ6200人と、9月中旬を上回る速さに戻っている。

なお、IOMは10月5日に「8月1日から10月4日までに18万4千人超が避難した」とも発表している。こちらは日々の新たな避難を数える別の集計(迅速避難追跡)によるもので、9月27日から10月3日までの1週間に2万1798人、10月4日の1日だけで6474人が少なくとも1度は家を追われた。前の週より26%多い。

タイズ県が11万4708人で57% アデンは2週間余りで2.3倍に

10月7日時点の県別の内訳は次のとおり。9月21日には7県だった避難先が、10県に広がった。

  • タイズ県……11万4708人(9月21日は7万3494人)
  • ラフジ県……4万2264人(同3万3828人)
  • アデン……2万814人(同8946人)
  • アビヤン県……9030人(同3324人)
  • ホデイダ県……8244人(同8244人)
  • ハドラマウト県……2478人(同1008人)
  • シャブワ県……1188人
  • マアリブ県……1080人(同594人)
  • マハラ県……936人
  • ダーリウ県……475人

南西部のタイズ県だけで全体の57%を占める割合は、9月21日から変わっていない。県内ではアルマアファルが3万1230人、ジャバルハバシが3万1020人、アッシャマヤタインが2万4894人で、この3地区がタイズ県の4人に3人を受け入れている。9月21日に2万3千人超で最多だったジャバルハバシを、1万6500人超だったアルマアファルが追い抜いた。

目立つのは南部の港湾都市アデンへの流入だ。9月21日の8946人から、28日には1万2456人、10月7日には2万814人と、2週間余りで2.3倍になった。IOMは9月28日の発表で、アデンの避難者が1週間で40%近く増えたとし、「都市部へ向かう家族が増え、もともと逼迫していた住宅や行政サービス、生計の手段にさらに負担がかかっている」と指摘している。アデンではアルブライカ地区だけで1万320人を数える。

一方、西部のホデイダ県は9月21日から8244人のまま動いていない。9月21日以降に増えたのは、タイズ県のほかラフジ県・アデン・アビヤン県といった南部の県だ。

紅海を渡ってジブチへ3700人超

陸路で県外へ逃げるだけでなく、海を渡る人も増えている。IOMによると、紅海を越えてイエメンからジブチへ渡った人は10月7日時点で3700人を超えた。9月13日時点では2千人超、16日時点では2776人、20日夕方時点では3106人だった。IOMによると、人々は疲れ切った状態で、食料も水もほとんど持たずに過密な船で着く。家族はほとんど何も持たずに家を出ており、多くは夜に逃げ、大半は女性と子どもだという。

渡航先となっているのは、ジブチ北部のオボック周辺の海岸だ。イエメンとジブチの間には、紅海とアデン湾を結ぶバブエルマンデブ海峡がある。この海峡は、ふだんはアフリカ側からイエメンへ渡る出稼ぎ移民のルートとして知られてきたが、いまは逆向きの流れが生じている。

日本政府は10月6日、イエメンとジブチの両国を対象に緊急無償資金協力を決めた(イエメンとジブチに緊急無償資金協力1,000万ドル 外務省が決定 内訳はイエメン800万・ジブチ200万、WFPなど国連4機関経由で食料と保健)。

同じ海峡をめぐっては、国連安全保障理事会が9月15日、武装組織フーシ派が紅海南部の複数の島を占拠したとされる情勢を協議している(イエメンの戦線、紅海の要衝バブエルマンデブ海峡へ)。避難民が海を渡っている海域は、世界の海上輸送にとっての要衝でもある。

求められているのは住まい35%・食料33% 計画の資金は20%

IOMは避難した家族から毎日聞き取りをしている。10月7日の発表によると、最も必要なものとして住まいを挙げた人が35%、食料が33%、現金の支援が22%で、10人に1人は身の安全の確保(保護)を挙げた。

住まいの不足は、別の調査でも裏づけられている。IOMが中部マアリブ県の避難所3か所で行った保護の調査では、安全な住まいがないことが最も深刻な弱点とされ、屋外で寝ている世帯もあった。空爆など戦闘の影響や暴力にさらされる状態だ。女性や少女からは、適切なトイレが足りないという声が上がった。調べた世帯のおよそ45%は以前にも避難した経験があり、財産や安定した生計を失っているため、子どもを働かせるといった有害な手段に頼るおそれがあるとIOMは警告している。

これに対して、支える側の資金は細っている。IOMによると、イエメンの人道対応計画(国連と支援団体が年間の必要額を示した計画)に集まった資金は必要額の20%にとどまり、救援物資の備蓄も残り少ない。IOMは自治体や支援団体と組んで、緊急の避難所、生活用品、現金、清潔な水、保護の支援を届けているが、10月7日の発表では「それでは足りない」と書いた。

支援の余裕は早い段階から失われていた。IOMは9月7日の発表で、直前まで洪水や西部沿岸での対応にあたっていたため、食料や避難所の資材、生活用品の緊急備蓄が大きく減っていると説明している。戦闘で道路が通れず、通信も途絶えた地域が多く、避難した人を登録し確認する作業も遅れている。

12年続く内戦 「避難を繰り返す」人々

イエメンでは、武装組織フーシ派が2014年9月に首都サヌアの政府施設を占拠して以降、政府側との戦闘が続いている(公安調査庁「国際テロリズム要覧」)。IOMは一連の発表で、この争いを「12年間の紛争」と表現した。

そのため、新たに家を追われた人の多くは、初めての避難ではない。IOMイエメン事務所のアブドゥサトル・エソエフ代表は9月7日、「家族は何も持たずに到着している。避難所も食料もない」「多くはこれまでに1度、2度、4度も避難してきた人々で、戦闘が再燃するたび、建て直したわずかな暮らしを失う」と述べた。ポープ事務局長も9月13日の発表で「一つひとつの数字の裏には、すべてを失った家族がいる」と述べている。

同じ人が何度も逃げ、そのたびに手元の物を失っていく――というのが、20万1217人という数字の内側で起きていることだ。IOMは、すべての当事者に民間人と支援要員を守り、支援が必要な人のもとへ安全で妨げられない通行を認めるよう求めている。