国連の国際移住機関(IOM)は12日、内戦が続くイエメンで7月以降に戦闘を逃れて家を追われた人が、少なくとも7万6千人に達したと発表した。数日前の4万6千人から急増し、前週の集計の4倍にあたる。IOMは発表文で「数はほぼ一夜にして倍増した」とし、戦闘の当事者に対し、民間人と人道支援要員の保護、支援の安全な通行を求めた。
9月3日から急拡大 5日間で4倍に
IOMによると、避難が加速したのは西部沿岸とタイズ県で戦闘が急速に強まった9月3日以降だ。7日の発表では、激化から72時間でタイズ、ホデイダ両県の1万8500人が家を離れたとしていた。それが11日に4万6千人を超え、12日には7万6千人に達した。5日間でおよそ4倍である。
県別では、最も多いのが南西部のタイズ県で8300世帯・約5万人。次いで南部ラフジ県が2819世帯・約1万7千人、西部ホデイダ県が1374世帯・8100人超、南部の主要都市アデンが191世帯・1100人超となっている。IOMは「家族が丸ごと、多くは夜に移動している。安全な行き先はない」と、避難の状況を説明した。
影響が出ている地区として、IOMはタイズ県南部の都市部のほか、西部沿岸のアルモカ、ハイス、マウザ、マクバナ、ジャバルハバシ、アルマアファルなどを挙げた。アルモカは紅海に面した港町で、内陸のタイズ市方面へ通じる交通の要衝にあたる。
支援物資は底を突き、活動は一時停止
数字の伸びに、支援が追いついていない。IOMは7日、タイズ、ホデイダ両県で663世帯に毛布や調理器具などの生活用品を配ったと発表したが、直前まで各地の洪水対応にあたっていたため、緊急用の備蓄が大きく減っていると説明した。いま必要なものとして、現金の給付、緊急用の避難所、食料、飲み水、衛生、医療の6点を挙げている。
さらに11日には、治安の悪化を理由に現地での全業務を一時的に止めたことを明らかにした。避難者が最も増えている時期に、支援する側が動けなくなる状況が生じている。IOMのエイミー・ポープ事務局長は「家族はこの紛争で2度目、3度目の避難を強いられ、ほとんど何も残っていない」と述べ、戦闘の広がりによって、命をつなぐ支援を届けることが難しくなっていると指摘した。
12年続く内戦 「避難を繰り返す」人々
イエメンでは、武装組織フーシ派が2014年9月に首都サヌアの政府施設を占拠して以降、政府側との戦闘が続いている(公安調査庁「国際テロリズム要覧」)。IOMは今回の発表で、この争いを「12年間の紛争」と表現した。
そのため、今回新たに家を追われた人の多くは、初めての避難ではない。IOMは7日の発表で、現地職員の言葉として「家族は何も持たずに到着している。避難所も食料もない」「多くは以前にも複数回避難した人々で、戦闘が再燃するたび、建て直したわずかな暮らしを失う」と伝えた。同じ人が何度も逃げ、そのたびに手元の物を失っていく――というのが、数字の内側で起きていることだ。
イエメンは紅海とアデン湾を結ぶバベルマンデブ海峡に面し、世界の海上輸送の要衝でもある。今回の戦闘が集中する西部沿岸は、この海峡に近い。避難者の増加は、人道上の問題であると同時に、地域の物流や治安の不安定さとも重なっている。IOMは支援の受け入れ余地について「ニーズが、われわれが届けられる量をはるかに上回っている」としている。
