東京のAI企業サカナAI(Sakana AI)は9月11日、複数の生成AIを束ねて使う自社基盤「Sakana Fugu(サカナ・フグ)」の新モデル2種、「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」を公開したと発表した。性能を最優先するUltra v2と、費用を最優先するMaxの二本立てで、同日からOpenAI互換のAPI(外部のソフトから呼び出す仕組み)で提供している。
窓口は1つ、裏では複数のAIが分担
Fuguは単体の生成AIではない。届いた依頼を読み、どのAIに何をやらせるかを決めて割り振り、返ってきた答えをまとめ上げる「指揮役」として訓練されたモデルだ。同社はこれをオーケストレーション(指揮)と呼んでいる。利用者が触るのは1本のAPIだけで、内部で何体のモデルが動いたかを意識する必要はない。
割り振りの基準は「軽さ」に置かれている。同社の説明によると、Fuguはタスクを解くのに必要な最も軽いモデルへ仕事を渡す。重い依頼にだけ強力なモデルを呼ぶことで、単体のモデルでは届かない費用と性能の組み合わせに達するという考え方だ。発表文は、業界がこの10年「より大きく、より高価な基盤モデルを作る」という一本の軸で競ってきたと指摘したうえで、これからは「問題をどう解くかだけでなく、どの機械を最も安く動かすかを知っているシステムのものだ」と主張している。
「Fable 5」「GPT-6 Astra」を手札に入れずに達成
Fugu Ultra v2は、複雑で手順の多い作業での到達点を狙った上位版という位置づけだ。図表やグラフの読み解きを測るChartographyでは48.3を記録し、同社の比較では米アンソロピックの「Opus 5」が27.3、「Fable 5」が29.5で、これを大きく上回った。ソフト開発能力を測るDeepSWEでは74.3で、3〜5倍高価なモデルを上回ったとしている。ほかにGDP.pdf、自社製のSWEFish、Toolathonで最高または2位の成績だったという。
同社が強調したのは成績そのものより内訳だ。発表文には「Fugu Ultra v2は、Fable 5、Fable 5.1、GPT-6 Astraをエージェントの手札に入れずにこのスコアを達成した」と明記している。最上位の商用モデルに頼らず、公開された重みを持つオープンウェイトのモデルと用途特化モデルの組み合わせで届いた、という主張になる。同社はこれを供給の強さとしても説明し、特定企業への依存(ベンダーロックイン)やAPIの利用停止、地政学的な混乱、突然のサービス終了から利用者を守る設計だとしている。
価格は出力で4〜6割安いと主張
費用側を担うFugu Maxの価格は、入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり6ドルだ。トークンはAIが文章を扱うときの細かい単位を指す。同社は、アンソロピックの「Sonnet 5」、OpenAIの「GPT-5.6 Terra」、「Kimi K3」と比べ、出力の価格が40〜60%低いとしている。
Maxでは割り振り先のモデル群自体も広げた。NVIDIAとの協業で同社のオープンウェイトモデル「Nemotron」ファミリーなどを新たに取り込んでいる。同社の集計では、Terminal Bench 2.1、GPQAD、AA-LCR、GDP.pdf、AutomationBench、SWEFishの6指標で最高得点だった。
ベータ公開から5か月で5段階目
Fuguの更新は速い。同社が示した経緯によると、4月にベータ版で複数AIの指揮という発想を実証し、6月の正式提供と「Fugu Ultra v1」で商用の先端モデルと性能で並んだ。7月にサイバーセキュリティ向けの「Fugu-Cyber」とコーディング用の接続口を追加し、8月には対話サービス「Sakana Chat」へ載せて一般利用者に広げるとともに、NVIDIAと組んでNemotronを取り込んでいる。今回のMaxとUltra v2が5段階目にあたる。
新モデルは開発者向けの「console.sakana.ai」から利用でき、すでにFuguを使っている開発者は設定を1行書き換えるだけで切り替えられる。消費者向けのSakana Chatにも組み込むとしている。
