米オープンAIは9日(米国時間、日本時間10日未明)、対話AIの新しい基盤モデル「GPT-5.6」を公開した。あわせて、目標を伝えるだけで作業を代行するAI「ChatGPT Work」も投入し、質問に答えるだけの道具から「仕事を仕上げる相棒」への転換を印象づけた。
用途で使い分ける3つのモデル
GPT-5.6は、性能とコストの異なる3つのモデルで構成する。最上位で最も賢い「Sol(ソル)」、日常業務向けの中位「Terra(テラ)」、高速・低コストの「Luna(ルナ)」の3種類だ。ChatGPT、プログラム開発を助ける「Codex(コーデックス)」、外部サービスと接続するためのAPIで、9日から世界に向けて順次提供を始めた。全面展開までは24時間ほどかけて段階的に広げるとしている。
ChatGPTでは有料のPlus・Pro・Business・Enterpriseの利用者が、標準以上の設定で最上位のSolを使える。より難しい作業向けには、Pro・Enterprise向けに一段上の「GPT-5.6 Pro」も選べる。複数のAIを同時に走らせて処理を速める最高性能の「ウルトラモード」も新設した。使う計算量(トークン=AIが処理する文字のかたまりで、料金の単位)は増えるが、難題での速さと精度を優先する設定だという。
数時間かけて仕事を仕上げる「ChatGPT Work」
同時に発表した「ChatGPT Work」は、GPT-5.6とCodexを土台にした業務代行のエージェント(人が細かく指示しなくても、目標に向けて複数の手順を自ら進めるAI)だ。利用者のアプリやファイルをまたいで操作し、必要なら数時間にわたって一つの案件に取り組み、資料作成などを最後まで仕上げるという。資料や表計算、スライドを利用者のひな型に合わせて作り、いつも使うツールへ書き出せる点を売りにする。
ChatGPT Workは9日からPro・Enterprise・Edu(教育)向けに提供を開始し、Plus・Businessにも数日内に広げる。パソコン向けアプリでは、会話・Work・Codexの機能を無料プランを含む全利用者が世界中で使えるようにした。
自社ベンチで競合を上回ると主張
オープンAIは、自社が公表したベンチマークの数値を示し、性能面での優位を強調した。プログラム作成能力を測る「Artificial Analysis Coding Agent Index」でSolは80.0点をつけ、競合であるアンソロピックの「Claude Fable 5」を2.8点上回りつつ、出力するトークンは半分未満、時間も半分未満、費用は約3分の1で済んだとしている。難しい自律作業を測る「Agents' Last Exam」でも53.6点で、Fable 5を13.1点引き離したという。
ただし、これらはいずれもオープンAIが自ら示した数値で、第三者による独立検証はこれからだ。
加速する「AIエージェント」競争
新モデルの投入は、他社の動きが相次ぐ中でのものだ。8日にはイーロン・マスク氏率いるxAIが「Grok 4.5」を、アンソロピックも最新の「Fable 5」や業務代行AI「Claude Cowork」を相次いで打ち出しており、各社の主戦場は「質問に答えるAI」から「作業を任せられるAI(エージェント)」へと急速に移っている。人手をかけずに一連の業務を任せられれば、企業の働き方に影響しうる一方、誤作動や情報漏れなどのリスク管理も課題となる。オープンAIが掲げる「目標を伝えるだけ」の使い勝手が実務でどこまで通用するかが、今後の普及を左右しそうだ。