文章から曲を作る音楽生成AIを手がける米Sunoは9日、新世代の音楽モデル「v6」を公開した。ワーナーミュージック・グループ(WMG)、BMG、Believeといったレコード業界のパートナーと共同で開発した初のモデルだと位置づけている。曲全体を作り直さずに歌詞を1語だけ差し替えられるなど、細かく手を入れる編集機能を前面に出した。
3種類のモデル、最長8分
v6は用途の違う3種類で構成される。旗艦の「v6」は、同社の説明では「信頼でき、精密で、一貫して仕上がりのよい音楽を届ける」モデルで、有料のProとPremierの契約者が使える。同じく有料向けの「v6-wild」は「予測しにくく、より多様」で、「予想外で、質感があり、野心的な結果」を狙うときに選ぶ。無料を含む全ユーザーが使えるのが軽量版の「v6-mini」で、同社は「どのプラットフォームのどの無料モデルより速く、よい結果を出す」としている。いずれも1曲あたり最長8分まで生成できる。
編集機能では、普通の言葉で指示して既存の曲の一部分だけを直す、複数の音源から一度の指示でマッシュアップを作る、音を抜き出して新しいビートを組む、雰囲気やジャンルの組み合わせから作り始める、といった操作を挙げている。なかでも「曲全体を作り直さずに歌詞を1つだけ更新する」機能は、これまでの音楽生成AIで使いにくかった点にあたる。従来は歌詞を少し直したいだけでも曲を作り直す必要があり、声や演奏が前と違うものに変わってしまうことが多かった。
レコード大手との提携を積み上げた先の1本
Sunoはこの1年足らずで、レコード業界との提携を段階的に発表してきた。2025年11月25日にWMGとの提携を公表し、参加を選んだWMG所属アーティストの名前や肖像、声、楽曲が新しいAI音楽の制作体験に使われる可能性があること、新しいモデルは「ライセンスされた高品質な音楽」で作られることを示した。同時に、曲のダウンロードには有料契約が必要で、契約ごとに月あたりの本数に上限を設ける仕組みも導入した。
2026年8月12日にはBMGとの世界規模の提携を発表し、参加を選んだアーティストやソングライターに新たな経済的機会を作るとした。9月8日にはBelieveおよびTuneCoreとの提携を公表し、「業界パートナーモデルを使ってアーティストが作った楽曲はすべて、BelieveとTuneCoreを通じて配信できる対象になる」と説明している。TuneCoreは自主制作のアーティスト向けの配信プラットフォームで、AIで作った曲が権利者と合意した流通経路に乗る道筋が用意された形だ。今回のv6は、これらの提携を前提に作られた最初のモデルにあたる。
無断利用の検出と透明性の仕組み
権利者との協調を打ち出す一方で、Sunoは判別と遮断の仕組みも整えている。8月6日に公表した説明では、Audible MagicやMusixmatchなど第三者の技術を使い、利用者がアップロードした音源と歌詞を無断利用がないか照合しているとした。特定のアーティスト名を使った指示は受け付けず、アーティスト名を取り除いて「明るい」「疾走感がある」といった音楽的な特徴の記述に置き換える処理をしているという。
生成した曲を後から識別できるようにするため、音声への電子透かしと指紋照合の技術も導入するとしており、同社はこれらを改ざんに強い仕組みだと説明している。コミュニティ規約でも、既存曲の再現や、本人の許可がない声・容姿の利用を禁じている。v6の発表でも、アップロードされた音源と歌詞を無断利用がないか選別する保護策を設け、「音楽でAIがどう使われたかの透明性を高める」と重ねて述べた。
ダウンロードは有料契約が前提に
音楽生成AIは、学習に使う楽曲の権利処理をめぐって各国で議論が続いてきた分野である。Sunoが2025年11月以降に公表してきた提携は、いずれも所属アーティストが参加を選んだ場合に限って名前や声、楽曲を使うという「オプトイン」の形をとっている。
利用者側の条件も変わった。WMGとの提携にあわせて、生成した曲のダウンロードには有料契約が必要になり、契約の区分ごとに月あたりの本数に上限が設けられた。音楽制作向けの「Studio」の利用者だけは、無制限のダウンロードが維持されている。BelieveとTuneCoreを通じた配信にも、電子透かしと指紋照合、ダウンロード上限が適用される。
一方、各社の発表は、参加したアーティストやソングライターへの収益の配分方法を具体的には示していない。BMGとの提携についてSunoは「新たな経済的機会」を作るとするにとどめ、金額や比率には触れていない。
