米マイクロソフトのチャット・会議ツール「Microsoft Teams」では、会議の中身を要約したり質問に答えたりするAI「Copilot(コパイロット)」を、会議ごとに使わせないようにできる。決めるのは会議の主催者で、会議オプションの「Copilot and other AI」という欄で「オフ」を選ぶ。マイクロソフトが管理者向けの解説(Microsoft Learn)と利用者向けのサポートページで公表している仕組みを整理した。
訂正・更新(2026年10月13日): 本記事は7月6日の初報で、会議中にCopilot、Recap、Facilitatorをまとめてオフにできる切り替え機能を7月末までに一般提供すると伝えました。マイクロソフトが一般に公開している資料では、この切り替えの仕様と提供時期を確認できなかったため、公開資料で確認できた設定方法に書き改めました。また初報の「会議AIをオンにすると文字起こしも自動で始まる」との記述は、文字起こしをせずにCopilotを使う設定があるため誤りでした。
選べるのは3通り、「オフ」なら録画もできない
マイクロソフトの管理者向け解説によると、主催者が会議を作るときにCopilotについて選べる値は3つある。
一つ目は「During and after the meeting(会議中と会議後)」。誰かが文字起こしを始めると、Copilotのライセンスを持つ参加者が会議の最中にも、終わった後にもCopilotに質問できる。会議後に使えるのは、文字起こしの記録が残るからだ。
二つ目は「Only during the meeting(会議中のみ)」。会議中にCopilotを使えるが、その材料になる音声の文字データは一時的なもので、会議が終わると保存されない。
三つ目が「Off(オフ)」で、会議の参加者は誰もCopilotを使えなくなる。解説は、オフにするとその会議では録画も文字起こしもできなくなると明記している。「AIに発言を拾わせたくない」会議なら、まずこの値を選ぶことになる。
設定の場所は、Teamsの「予定表」から自分が主催する会議を選び、「オプション」を開いた先の「Copilot and other AI」だ。マイクロソフトはこの欄を、ライセンスを持たない人も含めて組織の全員に見せている。主催者本人がCopilotのライセンスを持っていなくても、自分の会議でのCopilotの扱いを決められるようにするためだという。
なお、Copilotの使える人と範囲も決まっている。使えるのはCopilotの追加ライセンスを持つ参加者で、参加者が1,000人までの会議やイベントが対象。参加者がCopilotに尋ねた質問と答えは、その本人にしか見えない。
「会議中のみ」でも記録が残る場合がある
「会議中のみ」は、文字起こしや録画を残さずにAIを使う方法として、マイクロソフトが機密性の高い会議向けに案内している設定だ。この設定では、Copilotをオンにしても文字起こしは自動では始まらない。会議後にRecap(会議のまとめ)のタブからCopilotを使うこともできない。
ただし注意書きがある。組織が情報管理の仕組み「Microsoft Purview」の保持ポリシーを設定していれば、録画も文字起こしもしていない会議でも、Copilotへの質問と答えはコンプライアンスのために保存されることがある。訴訟などに備えて社内の記録を検索する「電子情報開示(eDiscovery)」で見つかる可能性もある、とサポートページは説明している。
つまり「会議中のみ」は、会議の発言を文字起こしとして残さない設定であって、AIとのやりとりの記録まで消える設定ではない。どこまで残るかは組織の保持ポリシー次第だ。
途中で誰かが文字起こしを始めた場合は、そこから先の部分だけ会議後もCopilotで扱えるようになる。社外から参加した人は、Copilotのライセンスを持っていても、この設定の会議ではCopilotを使えない。
組織の設定で、主催者が変えられないことも
主催者が選べる範囲は、組織の管理者が設定する会議ポリシーで決まる。管理画面(Teams管理センター)での選択肢は次の4つだ。
- On(オン): 既定値は「会議中のみ」。主催者は「会議中と会議後」「オフ」に変えられる
- On with saved transcript required(保存された文字起こしが必須): 既定値は「会議中と会議後」。主催者は変更できない
- On with transcript saved by default(既定で文字起こしを保存): 既定値は「会議中と会議後」。主催者は「会議中のみ」「オフ」に変えられる
- Off(オフ): 既定値は「オフ」。主催者は「会議中のみ」「会議中と会議後」に変えられる
注意したいのは、マイクロソフトが2番目の「保存された文字起こしが必須」をこの設定の既定値としている点だ。管理者が手を加えていない組織では、主催者がCopilotの欄を変えられない可能性がある。サポートページも、選択肢が見当たらなければ社内のIT管理者に問い合わせるよう案内している。
逆に、管理者が「オフ」にしていても、それは既定値をオフにするだけで、主催者は会議ごとにCopilotを使う設定へ戻せる。組織として一律に使わせないという意味ではない。
文字起こしのポリシーとの組み合わせでも動きが変わる。主催者が「会議中と会議後」を選んでいても、文字起こしを許されていない参加者しかいなければ、Copilotは使えない。主催者が「オフ」を選んだ会議では、文字起こしのポリシーにかかわらず、誰もCopilotを使えず、録画も文字起こしもできない。
メモ係のAI「Facilitator」は会議中に止められる
Copilotとは別に、Teamsには会議に「参加」してメモを取るAI「Facilitator(ファシリテーター)」がある。議題に沿って議論を整理し、AIによるメモを会議中にリアルタイムで作る機能だ。こちらは会議の途中でオン・オフを切り替えられるとサポートページに書かれている。
止め方は、会議画面の「その他の操作(…)」から「Facilitatorをオフにする」を選ぶ。オフにすると自動のメモ取りは止まるが、それまでに作られたメモは消えない。メモはMicrosoft Loopのページに保存され、参加者なら誰でも会議の前後や最中に編集できる。
切り替えられる人は限られる。会議中にFacilitatorをオン・オフできるのは、主催者か発表者で、Teamsのウェブ版かデスクトップ版を使っている人だけだ。スマートフォンから参加した人は、作られていくメモを見ることはできるが、切り替えはできない。Facilitatorを加えたり会議中にオンにしたりするにはCopilotのライセンスが要る。
Facilitatorは、予定された会議にしか加えられない。チャネル会議、今すぐ始める会議、Teamsの通話は対象外だ。予定を作るときに加える場合は、会議オプションの「Copilot and other AI」で「Allow Copilot and Facilitator」を「会議中のみ」か「会議中と会議後」にしたうえで、Facilitatorの切り替えをオンにする。つまり、Copilotを「オフ」にした会議ではFacilitatorも加えられない。Copilotを文字起こし無しで始める設定なら、Facilitatorも文字起こし無しで動く。
プライバシーへの配慮も書かれている。主催者しか会議に入っていない段階では、Facilitatorは主催者の手元にある会議の招待状を読めない。また、「社外秘」などの秘密度ラベルで暗号化された招待状やメモからは、議題を読み取れない。
会議でAIをどこまで使うかは、主催者の会議オプションと、組織の管理者のポリシーの二段で決まっている。AIに発言を拾わせたくない会議を開くなら、事前に会議オプションのCopilotの欄を確かめ、変えられなければ社内のIT管理者に相談するのが確実だ。
