総務省は11日、800MHz帯広帯域小電力無線システムの追加の制度整備として、電波法施行規則の一部を改正する省令案をまとめたと発表した。12日から10月16日まで意見を募集する。改正案は、このシステムの携帯局を「登録局」の枠組みで使えるようにするものだ。

携帯局を「登録局」の対象に加える

改正案は、電波法施行規則17条が定める「登録局の無線設備の規格」に、無線設備規則49条の37の技術基準のうち携帯局に関するものを加える内容である。登録局は、無線局ごとに免許を受ける代わりに、決められた規格の無線設備であれば総務大臣の登録を受けて開設できる仕組みだ。

49条の37は、7月30日の改正で無線設備規則に設けられた「800MHz帯広帯域小電力無線システムの携帯局の無線設備」の規定にあたる。送信出力を200ミリワット以下とすること、同時に使えるチャネル数を1・2・4・8のいずれかに限ることなどを定めている。省令は公布の日から施行する。

総務省は意見募集の結果を踏まえて電波監理審議会(会長・笹瀬巌氏=慶応義塾大名誉教授)に諮問し、答申が得られれば速やかに改正の手続きを進める方針だ。資料はe-Govのパブリック・コメント欄に掲載される。

2029年に空く「MCA跡地」

背景にあるのはデジタルMCAの終了である。1994年に導入されたMCAは、数十キロ程度の広いエリアをカバーする自営用の業務無線で、業務連絡や車両の情報管理、国や自治体のBCP(事業継続計画)対策に使われてきた。ただ第2世代携帯電話に相当する技術を用いており、保守や維持管理を続けるのが難しくなったなどの理由から、2029年5月末でのサービス終了が公表されている。

空くのは845〜860MHzと928〜940MHzだ。総務省は2019年度に跡地利用の調査を実施し、800MHz帯に3件、900MHz帯に5件の計6件(うち2件は両方の帯域に提案)のシステム提案を受けた。既存システムと電波を分け合えるかを検討した結果、800MHz帯の3件について実現の可能性が示され、うち1件は導入時期が未定として取り下げられている。残ったのが広帯域小電力無線システムと3次元測位システムの2つだ。

映像も送れる「Wi-Fi HaLow」を800MHz帯へ

800MHz帯広帯域小電力無線システムは、IEEE802.11ahという規格を使う。LPWA(省電力で広い範囲をカバーする無線)より高速で、無線LANより広いサービスエリアを確保できるのが特徴で、Wi-Fi Allianceは2021年11月から「Wi-Fi HaLow」の名称で認証を始めている。日本ではすでに920MHz帯でIoT(モノのインターネット)向けに使われてきたが、多様な小電力無線が同じ帯域を分け合うためチャネル幅と送信時間に制限があり、実効の通信速度が規格上の上限から大きく下がっていた。

800MHz帯では送信出力の上限を200ミリワットとし、1時間あたりの送信時間の総和制限は設けない方向とされた。使える周波数は846.5〜854.5MHzで、MCAが動いている2029年5月31日までは846.5〜848.5MHzに限られる。総務省の委員会報告は、高画質映像による施設監視や防災、携帯電話の圏外となる山間部・農地・工場での映像利用やセンシング、ドローンなど上空での利用を想定用途に挙げている。

GPSを地上から補う測位網

もう一方の3次元測位システムは、GPSに代表されるGNSS(全球測位衛星システム)を地上から補う仕組みだ。ビルの屋上のような高い場所に置いた基地局から、GNSSと同じ原理の信号を送る。端末が4局以上の信号を受け取れば位置を計算できるため、基地局は半径数キロから十数キロの間隔で配置する。アンテナの地上高は40メートル、送信出力は20ワット以下を想定している。

周波数は855〜860MHz(2029年5月31日までは857〜860MHz)。帯域幅が広いほど反射波を分離する分解能が高くなり、5MHz幅では屋内で5〜10メートル程度の精度が得られている。3MHz幅では精度が落ちるため、1マイクロ秒程度の時刻同期信号としての利用が想定されている。

建物の中に専用の装置を置いたり事前に測定したりする必要がなく、気圧の分析と組み合わせれば高さ方向も測れる。委員会報告は、マンション内でのロボットによる個別配送、建築用資材の管理、位置情報に基づく情報提供や広告配信、施設のナビゲーション、災害時の避難誘導や救助隊員の位置のリアルタイム把握などを利用ニーズとして示した。

地上系の測位を整える動きは各国で進んでいる。米国では、電波を妨害するジャミングや偽の信号を送るスプーフィングに対するGPSの弱さが広く認識され、2023年に公表された「補完的PNT導入に向けた行動計画」に基づく取り組みが進む。EUでも2023年3月、欧州委員会の共同研究センター(JRC)が地上測位システムへ周波数を割り当てるべきだとする報告をまとめている。

意見の提出期限は10月16日必着で、郵送の場合は締切日の消印有効となる。900MHz帯の空き周波数の使い道については、MCA利用者の移行状況や新しい技術の開発動向を見極めたうえで別途検討するとしている。