米エメラルドAI、グーグル、エヌビディアの3社は9月16日、AIデータセンターが電力網の状況に応じて使う電気を自ら増減させる仕組みを広めるための業界団体「AIエネルギー管理連合(AEMA)」を設立したと発表した。エヌビディアは公式ブログで「目的ははっきりしている。電力網につなぐだけでなく、電力網とともに働くAIインフラを築くことだ」と説明した。

ピーク時に消費を絞る「動かせる需要」に変える

連合が掲げるのは、データセンターを一定量の電気を使い続ける固定的な負荷ではなく、制御できる資源として扱う考え方だ。エヌビディアによると、柔軟性を持つデータセンターは、計算処理を別の場所や別の時間帯へ移す、蓄電池を放電する、併設した発電設備を使う、系統の事故に応じて出力を落とす、といった複数の方法で送電網から引く電力を調整できる。

AEMAは公式サイトで、1年を通してみれば電力システムの容量の半分は使われていないと指摘し、データセンターに適度な柔軟性を持たせれば既存の送電網から新たに1億キロワットを引き出せるとしている。これは1億世帯分の電力に相当するという。緊急時を想定した実証では、1分足らずで消費電力を3分の1減らした例があるとも説明している。

狙いは5年から7年に及ぶ「接続待ち」の短縮

米国でAIインフラの拡大を阻む最大の制約が電力だ。AEMAによると、米国の主要市場では新設のAIデータセンターを送電網につなぐまでに現在5年から7年以上かかっている。従来の接続手続きは需要が平らで動かない施設を前提に組まれており、電力系統が逼迫したときに賢く反応できる設備は想定していなかった、とエヌビディアは指摘した。

連合は、特定の機器やソフトを指定せず、応答の速さ、継続できる時間、予測のしやすさ、緊急時の振る舞いといった「測れる性能」で評価する方式を掲げる。具体的には、接続前に瞬時電圧低下などの短い擾乱の間も運転を続ける義務や、出力抑制・緊急時対応の義務を定めること、技術要件と性能指標を標準化すること、柔軟性を確かに実行できると検証された事業者には接続を早める経路を用意すること、接続費用を実際の系統への影響に応じて配分することを求めている。AEMAは、送電網の利用率が10%改善するごとに電気料金を3.4%下げられ、柔軟性を備えたデータセンター1ギガワットあたり7億3300万ドルの系統コストを回避できるとの試算も示した。

アンソロピックや電力大手も参加

創設メンバーはエメラルドAI、グーグル、エヌビディアの3社。公式サイトに掲げられた参加企業には、AI開発のアンソロピック、英ナショナル・グリッド、米コンステレーション・エナジー、NRG、独RWE、蓄電システムのフルーエンス、半導体のアナログ・デバイセズなどが並ぶ。AI側と電力側の双方を1つの団体に集めた形だ。

AEMAは新設の団体ではない。2014年に設立され、需要側の電力管理を推進してきた「アドバンスト・エネルギー管理連合」が前身で、2026年に名称を改めて再出発した。米連邦エネルギー規制委員会(FERC)やエネルギー省、州の公益事業委員会との長年の関係を基盤に、接続や送電、大口需要をめぐる政策づくりに関与するとしている。

日本は年494億kWh増を見込み、省エネ規制で対応

日本でもデータセンターの電力需要は増える見通しだ。電力広域的運営推進機関(OCCTO)が今年1月21日に公表した2026年度の需要想定では、データセンターと半導体工場の新増設分を個別に積み上げており、最大需要電力の押し上げは2026年度の83万キロワットから2035年度には762万キロワットに達する。全国の最大需要電力に占める割合は0.52%から4.63%に高まる計算だ。このうちデータセンター分だけで64万キロワットから661万キロワットに増え、年間の需要電力量でも48億キロワット時から494億キロワット時へ広がる。

もっともOCCTOは、前回の想定と比べると事業者の工事延期や設計変更で運転開始時期が後ろにずれており、今後もデータセンターの動向に注視が必要だとしている。

日本の政策は、需要を動かすより効率を引き上げる方向に軸足がある。資源エネルギー庁によると、省エネ・非化石転換法に基づく新たな措置が2026年4月に施行された。データセンター業には2030年度までにPUE(施設全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値。低いほど効率が高い)を1.4以下にする目標が課されており、2029年度以降に新設する施設には稼働開始から2年が過ぎた時点の翌年度以降、1.3以下という基準を求める。基準を満たせない事業者は合理化計画の提出を求められ、従わなければさらに行政措置が取られる可能性がある。借りた場所に自社の機器を持ち込むテナント型のデータセンターも、2026年度の提出分から報告の対象に加わった。

AEMAは創設3社にローンチパートナーが加わる形で、技術・運用方式の策定、電力会社と組んだ接続の解決策づくり、需要側の柔軟性を評価する政策への働きかけを進める方針で、公式サイトで会員の募集を始めている。