音源のライセンス販売を手がける株式会社オーディオストック(岡山市北区、西尾周一郎社長)は16日、東京証券取引所グロース市場に新規上場した。同社が同日午前11時に公表したプレスリリースで明らかにした。クリエイターから預かった楽曲や効果音の著作権を管理し、映像制作者や放送局にライセンス販売する「音源ライツビジネスプラットフォーム」を運営しており、登録音源は100万点を超える。

同社は2007年10月設立。プレスリリースでは「100万点を超える音源ラインアップと独自の権利管理・収益化モデルを強みに、映像制作者や放送局などの幅広いユーザーと音楽クリエイターを繋ぐ環境を構築してまいりました」と説明し、上場を機に経営基盤と事業基盤を強化する方針を示した。

AI向けデータ販売は「音楽生成AI開発のための使用はできません」

同社は通常のライセンス販売とは別に、研究・機械学習向けの音源データセットも販売している。公式サイトの案内によると、提供可能な音源は40万点以上。想定する用途として音声認識・音声処理、楽曲解析、雑音抑圧・騒音低減、ヒューマンセンシングを挙げる一方で、「音楽生成AI開発のための使用はできません」と明記している。

提供形態は3つある。あらかじめ選定したデータを短納期で渡す「パッケージ販売」、40万点から要望に応じて選ぶ「カスタムセレクト」、3万組を超える登録クリエイターから新たに素材を調達する「オーダーメイド調達」である。パッケージ販売は雑音抑制向けが150点から、楽曲解析向けが150曲から、音源分離向けが20曲分からと、用途ごとに単位が異なる。

つまり同社は、AIに音を聞き分けさせる研究には音源を売り、AIに音楽を作らせる開発には売らない、という線を引いている。音楽生成AIは、学習に使われた楽曲の権利処理が国内外で争点となってきた分野であり、同社はその用途を提供条件から外している。

規約はAI生成曲の登録も禁じている

売る側だけでなく、預かる側にも制限がある。2025年5月23日に改定されたクリエイター利用規約は、第5条第1項で作品の保証事項を列挙し、その一つに「作曲AI(人工知能)・自動作曲システムその他のアルゴリズムによって生成された作品ではないこと」を挙げる。AIで作った曲を登録することを認めていない。

一方で規約は、同社自身が作品を分析することは認めさせている。第4条第7項は、審査手続の精緻化などのために「作品等に表現された思想又は感情の享受を目的としない方法により利用できる」と定める。第4条第9項では、楽曲がテレビ放送で使われたかを調べるフィンガープリントサービスの外部事業者へ作品を提供することも、クリエイターがあらかじめ許諾する形になっている。

条文の言葉をそのまま借りた規約

規約にある「思想又は感情の享受を目的としない」という言い回しは、著作権法30条の4から取られている。同条は「著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」と定め、2号で「情報解析」に供する場合を明示する。

かみ砕けば、人が聴いて楽しむためではなく、機械が解析するために使うのなら、原則として著作権者の許諾は要らない、という条文だ。AIの学習が日本で広く認められてきた根拠でもある。ただし同条にはただし書きがあり、著作物の種類や利用の態様に照らして「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」とされる。どこまでが「不当に害する」のかは条文からは一義に決まらない。

オーディオストックの設計は、この不確かな線引きに寄りかからず、契約で許諾を取り、用途を絞って売るという形を選んだものだ。同社は上場にあわせて投資家向け情報ページ(https://ir.audiostock.co.jp)を開設し、これまでの歩みをまとめた上場記念の特設ページも同日公開した。