欧州疾病予防管理センター(ECDC)は9月15日、コンゴ民主共和国で続くエボラ出血熱の流行について、13日時点の確認症例が7,258人、死者が3,510人に上ったとする集計を公表した。同センターが7月にまとめた7月8日時点の1,792人・625人から、症例は約4倍、死者は5.6倍に膨らんでいる。世界保健機関(WHO)は15日、流行の制圧には「何か月もかかる」との見通しを示した。

2か月で死者5.6倍、致死率も悪化

ECDCの集計では、州別の確認症例と死者はイトゥリ州が5,659人・2,583人と最も多く、北キブ州の1,281人・797人が続く。以下、オー・ウエレ州が281人・115人、ツォポ州が28人・10人、バ・ウエレ州が5人・3人、南キブ州が3人・1人、スッド・ウバンギ州が1人・1人で、感染は全26州のうち7州に及ぶ。

深刻なのは死者の伸び方だ。確認症例に占める死者の割合は48.4%で、7月8日時点の34.9%から悪化している。現在905人が入院中で、回復したのは1,726人。ECDCの集計は前日から症例が58人、死者が35人増えた。

WHO「一つではなく、別々の流行だ」

WHOで対応のための疫学・分析を統括するオリビエ・ル・ポラン氏は15日、国連ジュネーブ事務局の記者ブリーフィングで「7つの州で7,200件の症例と3,500人の死亡が記録されている」と述べた。地域ごとに様相が違うとして、「一つの課題ではなく、別々の流行として捉えるべきだ」とも指摘している。

具体的には、北キブ州で症例が急速に増える一方、南キブ州では5月以降の新規症例が無い。同一の流行として一括りに対策を打てる状況ではなく、州ごとに封じ込めをやり直す必要があるという説明だ。隣国ウガンダでは5〜6月に20人の症例が出たが、8月25日に流行の終息が宣言された。

ワクチンも治療薬も無い「ブンディブギョ型」

今回の原因は「ブンディブギョ型」と呼ばれるウイルスだ。エボラウイルスは型によって性質が異なり、過去の大流行で知られる「ザイール型」には承認済みのワクチン「エルベボ」と治療薬がある。だがブンディブギョ型には、人での効果が確かめられたワクチンも治療薬も存在しない。WHOは8月28日の疾病流行情報で、エルベボが唯一の優先候補だとしつつ、この型への効果は未確認だと明記した。

空白を埋める試みは動き出している。WHOは7月2日、国際共同試験「PARTNERS」の患者登録をコンゴ民主で始めたと発表した。抗体医薬「MBP134」と抗ウイルス薬「レムデシビル」の効果を調べるもので、同国の国立生物医学研究所(INRB)、英オックスフォード大、ベルギー熱帯医学研究所などが参加する。WHOによれば今回の流行は、型を問わずコンゴ民主で記録された中で最大規模で、同国のブンディブギョ型としては2012年に次ぐ2例目だ。WHOは5月17日、国際保健規則に基づく「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に当たると判断している。

資金は必要額の半分

国連人道問題調整事務所(OCHA)のジュリアン・ハーネイス特別エボラ調整官は同じブリーフィングで、当局間の連携が進んで治療用の病床は増えたとする一方、人道支援の対応に必要な資金は「現時点で49%しか手当てされていない」と述べた。対応を強化し、必要な資源をすべて投じるべきだとしている。

リスク評価は地域によって大きく分かれる。WHOはコンゴ民主国内を「非常に高い」、国境を接する国々を「高い」とする一方、世界全体では「低い」と位置づけている。ECDCも欧州連合(EU)・欧州経済領域(EEA)への持ち込みリスクについて「引き続き非常に低い」との判断を維持した。感染の主な経路が患者の体液との直接接触に限られるためで、日本を含む流行地域の外では、渡航者を通じた散発的な持ち込みへの備えが対応の中心となる。