欧州委員会のフォンデアライエン委員長は9月16日、フランス・ストラスブールの欧州議会で行った一般教書演説で、子どものSNS(交流サイト)利用を年齢で区切って制限する法案「EU KIDS ACT」を翌17日に提案すると表明した。13歳未満にはSNSの利用そのものを認めず、13歳から15歳になるまでは保護者が開設・管理する機能限定の口座だけを認めて1日1時間の時間制限をかける、という内容だ。
年齢を三つに区切り、保護の強さを変える
委員長は演説で「13歳未満はSNSなし。15歳未満は個人の口座なし」と述べた。13歳から15歳の誕生日までは、保護者や後見人が開設して監督する「ミニ口座」に限って利用を認め、使える機能を絞ったうえで1日1時間の制限を設ける。15歳から18歳までは、口座の保有は認めたうえで、事業者側に「安全な設計」を義務づける。
一律禁止にしなかった理由について、委員長は「段階的で年齢差を踏まえた方法をとる。年齢ごとに敏感さは異なり、それぞれに合わせた保護の水準を設ける」と説明した。制度づくりにあたっては専門家パネルを招集して若者から聞き取り、先行して規制に踏み切ったオーストラリアなどの制度を調べたという。
背景として挙げたのが利用時間である。委員長は、欧州の若者が1日4〜6時間を画面の前で過ごし、子どもがスクロールを続けさせる設計のフィードに引き込まれていると指摘。「子どもたちの注意、集中、心が奪われている」と述べ、保護者が睡眠不足や不安といった代償を目の当たりにしていると訴えた。
「安全だと企業側が証明せよ」
法案の骨格は、安全性の説明責任をどちらが負うかの転換にある。委員長は「我々は立証責任を逆転させる」「プラットフォームは、自らが安全であることを我々に証明しなければならない」と明言した。従来は規制当局や利用者の側が害を立証する必要があったが、それを事業者側の証明義務に置き換える考え方だ。
委員長は「未成年がSNSに接続できるかどうかの問題ではない。SNSが未成年に接続することを、いつ、どのように許すかの問題だ」とも述べ、「ルールを決めるのは我々であって、巨大テック企業ではない」と強調した。あわせて、中毒性のある設計は未成年に限らず害を及ぼすとして、より広い枠組みとなる「デジタル公正法(Digital Fairness Act)」を今秋に提案する方針も示した。
EUの法案は、欧州委員会が提案した後、欧州議会と加盟国でつくる理事会の審議と修正を経なければ成立しない。年齢の線引きや事業者の負担をめぐって各国・業界の反発が予想され、提案どおりの内容で決着する保証はない。
日本の10代は平日1日5時間27分
日本には、年齢を理由にSNSの利用そのものを禁じる法律はない。こども家庭庁が今年3月に公表した令和7年度の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、満10歳から満17歳でインターネットを利用していると答えた人の平日1日あたりの平均利用時間は約5時間27分(326.6分)で、前年度の約5時間2分から約25分延びた。学校種別では高校生が約6時間44分、中学生が約5時間24分、10歳以上の小学生が約3時間54分。5時間以上使う人の割合は47.6%にのぼる。0歳から9歳でも平均約2時間18分だった。調査は令和7年11月1日から12月18日に行われ、青少年3,060人から回答を得た。
日本の枠組みの柱は、2009年4月に施行された青少年インターネット環境整備法に基づくフィルタリングである。同調査では、子どもが使うスマートフォンについて「契約時または契約変更時にフィルタリングに加入した」と答えた保護者は54.3%にとどまった。利用時間の長さでは欧州と大差がない一方、対応は保護者の選択に委ねられているのが現状で、EUが示した「事業者に証明させる」方式とは出発点が異なる。
