消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」(座長・大屋雄裕慶応大教授)は10日、中間取りまとめを公表した。SNS(交流サイト)のメッセージ機能などを通じた事業者からの勧誘を新たに「チャット等」と定義し、電話勧誘販売と同等の規律を課すことを基本とすべきだと明記した。柱の一つが、書面を受け取った日から起算して8日を経過するまでのクーリング・オフだ。

「文字か音声か」で保護の水準は変えない

現行の特定商取引法は、インターネット通販を「消費者が事業者から直接の圧力を受けずに判断する取引」と位置づけている。そのため広告の表示義務が規律の中心で、訪問販売や電話勧誘販売と違って勧誘行為そのものを縛る決まりがない。SNSのダイレクトメッセージで個別に声をかけられ、そのまま契約に至っても、電話で同じことをされた場合のような保護は働かなかった。

検討会はこの点について、不意打ちで始まる性質や相手を引き込む性質は「通信手段が音声による通話であるか文字等であるかによって本質的に異なるものではなく、通信手段の違いのみを理由として、消費者保護の水準が低下することは適当ではない」と指摘した。

規制の対象に想定するのは、事業者の側からチャットを始めて勧誘する場合に加え、勧誘目的を告げずに、あるいは著しく有利な条件を示して消費者からチャットを始めさせ、そのやり取りの中で契約を取る場合である。一方、返信できない一斉配信や単発のポップアップ表示など、双方向のやり取りを想定しないものは、それだけでは対象にしない。

具体的な規律としては、勧誘に先立って事業者名・勧誘者名・商品や役務の種類・販売目的を告げる義務、うそや重要な事実を伏せる行為の禁止、威迫して困惑させる行為の禁止、消費者が断った後に別アカウントなどで勧誘を続けることの禁止を挙げた。うその説明で契約させられた場合の取消権、必要以上の量を買わされた場合の解除権も認めるべきだとしている。

相談件数は9年で19倍に

背景には相談の急増がある。参考資料集によると、SNSが関係する消費生活相談は2025年に10万1000件。このうちメッセージアプリ等で事業者から勧誘を受けて契約したとみられるものは、2015年の467件から2024年は9018件(推定値)へと、9年で約19倍に膨らんだ。

内閣府消費者委員会は2023年の報告書で、「副業を探す」つもりで事業者と接触した消費者が、やり取りの末に投資関連の情報商材を買わされる例を挙げ、SNSのメッセージには不意打ち性や密室性があると指摘していた。検討会はこの議論を引き継いだ形だ。

「お試し」表示や解約妨害にも網

中間取りまとめは、画面表示や操作の流れ(UI)で消費者の判断をゆがめる「ダークパターン」への対応も打ち出した。「お試し」などの表示で1回限りの購入と思わせながら実際は定期購入が条件になっている手法を例示し、手口を列挙し尽くすのは困難だとして、変化に追随できる包括的な規律を検討すべきだとしている。

解約の場面では二つの行為を名指しした。一つは、商品が届かない、注文と違う、不良品だったといった申し出に対し、通常必要な事実確認もせずに返品特約だけを理由に「権利はない」と告げる行為で、これを行政処分の対象にすべきだとした。もう一つは、解約手続きを不当に遅らせる行為や、申し込み手続きに比べて合理的な理由なく過度に複雑な解約手続きを課す行為で、違法行為として規制対象に加えるべきだとしている。

法改正の時期は未定

検討会は今年1月22日に初会合を開き、9月2日までに9回の議論を重ねた。中間取りまとめは、消費者庁に対し、相談現場の実情や事業者の実務、関連法制との整合性を踏まえてさらに検討し、「必要な制度整備の実現を早期に図るべきである」と求めている。サブスクリプションなど継続的な契約の通知義務や中途解約権については、別に開かれている消費者契約法検討会の整理も踏まえるとした。法改正案をいつ国会に提出するかは示されていない。