経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施するAIの懸賞金型コンテスト「GENIAC-PRIZE」の応募受け付けが、9月30日正午に締め切られる。企業・団体を対象とする「社会課題」テーマは懸賞金の総額が6億円で、1位には1億円が贈られる。学生を対象とする「人材育成」テーマには、9月18日時点で463人が応募している。

1位に1億円、4省庁が総額約2億円の特別賞

社会課題テーマの懸賞金は、1位が1億円、2位が8000万円、3位が6000万円、4位が4000万円、5位が2000万円で、いずれも1者ずつとなっている。これとは別に、特定の項目に秀でた応募へ贈る特別賞を総額3億円程度用意する。

特別賞のうち約2億円は、警察庁、厚生労働省、国土交通省、農林水産省の4省庁が設ける「協力省庁特別賞」だ。各省庁が約5000万円ずつを出し、それぞれの所管分野の課題に沿った応募を特別審査員が別に評価する。このほか、地域特有の課題に取り組んだ応募に贈る「地域賞」と、難しい用途に挑んだ応募を成果にかかわらず表彰する「チャレンジ賞」も決まった。

懸賞金型は、あらかじめ支援先を選んで資金を配る補助金と違い、出てきた成果を競わせて順位に応じ賞金を払う方式である。経産省とNEDOは2024年2月、国内の生成AI基盤モデルの開発力を強化する目的でプロジェクト「GENIAC」を始めた。計算資源の提供支援などで一定の成果は出たものの、さらに競争力を確保するには開発と利活用を一体で進める必要があるとして、使う側を後押しするために設けたのがGENIAC-PRIZEにあたる。

課題は「エッセンシャルワーカーの人手不足」 最大76兆円の損失試算

課題名は「エッセンシャルワーカーの人手不足解消に資するAIを活用した業務プロセス改革」。この事業では、人々の生活に不可欠な物品や役務を供給する業務をエッセンシャルサービス業と定義し、その従業員をエッセンシャルワーカーと呼んでいる。

公募条件を定めた懸賞広告は、高齢化で生産年齢人口が減る中でこれらのサービスの維持が困難になった場合、経産省の試算で最大76兆円規模の経済損失が生じると見込まれると記した。課題の例として挙がるのは、診断書作成などの事務が医療機関の業務全体を圧迫していること、介護分野で2040年に約57万人の介護職員が新たに必要になるとの推計、農林水産業者の減少による生産環境の悪化、災害対策や老朽インフラの維持を担う建設技術者の不足、そして匿名・流動型犯罪グループによる特殊詐欺への対応で警察や通信・金融業界の負担が膨らんでいることの5分野だ。

解決手段はAIだけに限らず、センサーやロボットといった物理的な技術と組み合わせた提案も対象に含まれる。

応募できるのは「使う側」 国産基盤モデルの利用が必須

応募資格を持つのは日本国内の法人・団体と農業・林業・漁業の経営体で、AIを実際の業務で使う「ユーザー」であることが条件になる。開発会社が単独で応募することは原則できない。事務局は9月18日、応募時の注意点を特設サイトに掲載し、応募フォームの所属欄には開発会社ではなく、介護施設や建設会社、農家といった現場の組織名を書くよう求めた。企業規模の制限はなく、自治体や官公庁の職員がエッセンシャルサービスを担う場合はそれも対象に入る。

開発と実証では、いずれかの「国産基盤モデル」を使うことが要件となる。国産基盤モデルとは、日本国内で登記され、かつ国内に開発拠点を持つ企業・大学などが開発したモデルを指し、ゼロから作ったモデルだけでなく、既存のモデルを追加学習させたものも含む。事務局が認めた開発事業者の一覧が特設サイトに掲載されており、一覧にないモデル名を書いた応募は受け付けない。海外のモデルを使ったシステムを併せて開発・実証することは認められている。

応募者は9月30日正午までに取り組みの概要を提出し、11月末までに提案書と3分以内のデモ動画を出す。審査は応募確認、1次、2次、最終の4段階で12月から3月にかけて実施し、最終審査は一般に公開してプレゼンテーション方式で行う。

学生向けは463人が応募 関東191人、四国13人

もう一つのテーマ「人材育成」は12〜29歳の学生が対象で、懸賞金の総額は3000万円。フィジカルAI(ロボットなど現実世界の機械を制御するAI)への応用を見据えた基盤モデルを、事務局が編成するチームで開発する。チームには最大4億円相当の計算資源が提供される。応募は個人単位で受け付け、書類審査を通った人がいずれかのチームに割り振られる仕組みだ。

特設サイトが公表した9月18日時点の応募状況によると、7月31日に締め切ったチームリーダーは41人、募集中のメンバーは463人。地域別では関東が191人で最も多く、関西が82人、中部が67人と続く。一方で九州・沖縄は37人、北海道は25人、東北は23人、中国は18人、四国は13人にとどまり、国外からの応募も7人ある。メンバーの応募期間は当初の8月31日から9月30日へ延ばされた。

コンテスト本体は2026年11月から2027年3月まで続き、参加者には週10時間以上の活動と途中離脱しないことが求められる。社会課題テーマの成果物提出は11月末で、両テーマとも結果発表と表彰式は3月下旬を予定している。