総務省が7月24日に公表した令和8年版情報通信白書によると、自分の心身や生活、将来についての専門的な相談をする場面で「AIのみ」または「主にAI(他の方法は補助的)」と答えた15〜19歳は、合わせて34.9%に上った。10代の3人に1人が、人生に関わる相談をAI中心で済ませている計算になる。同じ設問で60代は4.9%にとどまり、7倍の開きがある。
相談は3割超、ニュースは1割台 場面で割れる使い分け
白書は、情報を得る場面ごとにAIと他の手段をどう使い分けているかを年齢階層別に調べた。15〜19歳では「自身の心身や生活、将来に係る専門的な相談をするとき」がAIのみ8.7%、主にAI26.2%で合計34.9%。20代も10.2%と22.3%で32.5%だった。以下、30代21.4%、40代18.5%、50代7.3%、60代4.9%と、年齢が上がるほど下がる。
一方、同じ10代でも「社会の出来事やニュースの情報を深く調べるとき」は合計15.5%、「ニュースの概要をつかむとき」は14.1%にとどまった。ニュースの場面では「他の方法のみ」がそれぞれ43.2%、40.8%と最も多い。相談の場面はニュースの場面の2倍を超えており、若年層は何でもAIに寄せているわけではなく、用途を選んで深く頼っていることになる。
利用頻度でも同じ傾向が出た。「日常の行動や判断にかかわる相談」のためにAIを定期的に利用していると答えた割合は15〜19歳で25.7%、20代で21.8%。医師や弁護士にするような「専門家にするような相談」でも10代19.4%、30代18.9%、20代16.0%と、40代以下で高い。生成AIの利用経験率は日本全体で58.8%(前年度26.7%)まで伸びており、その伸びの中身が相談へと広がっている形だ。
白書は「頼りすぎ」の研究例も併記
白書は第3章で、AI利用が人間の記憶や思考に与える影響を扱った研究例を両論で紹介している。ドイツ・レーゲンスブルク大学のチームの実験では、AI支援ツールを使った群は使わない群より短時間で質の高いアイデアを出し、満足度や作業への関与度も高かった。
逆にMITメディアラボなどのチームは、小論文の執筆を4回繰り返す実験で、最初からAI(大規模言語モデル)を使った群は脳内の神経結合が比較的弱く、書いた直後の自分の文章を正確に引用する力も低かったと報告した。自分の成果だという感覚も、この群が最も低かった。逆に、自分の頭だけで書いた後にAIを使った群は記憶の想起が良好で、広い範囲で神経活動の再活性化がみられたという。論文はこの状態を「認知的負債(cognitive debt)」と呼ぶ。参加者は1〜3回目が54人、4回目まで終えたのは18人で、規模は小さい。
「どういう社会を目指すか」を論点に
白書はこの2本を並べたうえで、専門家の見方を紹介している。東京大学大学院の唐沢かおり教授は、便利さを評価する語り口と、人間の自律性を損なうと批判する語り口のどちらも成り立つとし、どの価値を重視してどんな社会を目指すのかを議論することが重要だと指摘した。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一教授は、AIへの代替が進めば人間単体の能力は落ちうるとしつつ、人間とAIの協働によって全体としての能力は向上するのではないかとの見方を示している。
令和8年版の情報通信白書は、特集にあたる第I部全体をAIに割いた。国内では2025年5月に人工知能関連技術の研究開発及び利用の推進に関する法律(AI法、令和7年法律第53号)が成立して同年9月に全面施行され、同年12月には同法に基づく人工知能基本計画が初めて閣議決定されている。制度づくりが先行する一方、今回の個人向け調査は前年度まで20歳以上だった対象に15〜19歳を新たに加えたもので、10代の使い方が数字で示されたのは今回が初めてとなる。
