総務省が7月24日に公表した令和8年版情報通信白書によると、文章を作る生成AIサービスを「使っていない(過去使ったことがない)」と答えた人にその理由を尋ねたところ、日本では「使い方がわからない」を挙げた割合が38.8%に上った。同じ設問で米国は18.5%、ドイツは16.5%にとどまり、日本はその2倍を超える。中国の32.9%も上回り、調査した4か国で最も高かった。

調査は総務省の「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」で、日本・米国・ドイツ・中国の個人に同じ設問で尋ねている。理由は複数回答で、何らかの生成AIサービスを使ったことがないと答えた人が対象である。

「不安だから使わない」のは日本ではない

白書が示した理由の内訳を見ると、日本で最も多かったのは「自分の生活や業務に必要ない」の42.4%で、次が「使い方がわからない」の38.8%だった。必要ないと答えた割合そのものは、米国47.7%、ドイツ50.9%より低い。白書も、米国やドイツと比べて「必要ない」は日本もそれほど変わらない一方、「使い方がわからない」は日本が最も高いと整理している。

使わない理由(複数回答・%) 日本 米国 ドイツ 中国
自分の生活や業務に必要ない 42.4 47.7 50.9 24.7
使い方がわからない 38.8 18.5 16.5 32.9
魅力的なサービスがない 12.9 10.6 5.7 9.6
情報漏えい、セキュリティ、安全性に不安がある 10.4 19.9 16.0 20.5
品質に不安がある 6.5 13.4 14.2 26.0
利用環境が整っていない 6.5 11.6 9.0 23.3
費用が高額である 5.0 6.9 7.5 20.5
従来の文化や習慣を変えられない 2.7 6.9 2.8 15.1

(出典)総務省「令和8年版情報通信白書」図表I-1-1-6(テキスト生成AIサービスを利用しない理由)。「その他」は省いた。

安全面の受け止めは逆方向に振れている。「情報漏えい、セキュリティ、安全性に不安がある」と答えた割合は日本が10.4%で、米国19.9%、中国20.5%、ドイツ16.0%より低い。「品質に不安がある」も日本は6.5%で、4か国で最も低かった。「費用が高額である」は5.0%、「従来の文化や習慣を変えられない」は2.7%と、こちらも低い水準にある。一方で「魅力的なサービスがない」は日本が12.9%で、4か国で最も高い。

つまり、日本で生成AIが使われない事情は、危ないから避けているというより、触れる入口がわからないまま止まっている状態に近い。中国は「利用環境が整っていない」が23.3%、「費用が高額である」が20.5%と、日本にはほとんど見られない条件面の制約が並ぶ。同じ「使っていない」でも、その中身は国ごとに違う。

使っている側の理由も日本は「安いから」

使っている人の側を見ても、日本の特徴は変わらない。生成AIを使う理由として最も多かったのは「利用にかかるお金が無料又は安い」の53.9%で、ドイツ50.8%、米国43.0%、中国35.6%より高く4か国で最も多い。次いで「時間や手間を省いてくれ、作業の効率が上がる」が42.8%だが、これは中国62.0%、ドイツ49.2%、米国45.1%を下回り、4か国で最も低い。3番目は「多様な発想や視点を示してくれる」の34.1%だった。

「内容が正確・中立そうだと感じる」は日本が12.7%で、中国32.0%の半分にも届かない。「特に理由はない(なんとなく)」は日本が7.2%で最も高く、中国は0.3%だった。白書は、ドイツが日本とよく似た傾向を示す一方、米国は「他の人に相談・依頼しにくいことを聞ける」(36.9%)、中国は「自分の意図やアイデアを形にしてくれる」(48.5%)が比較的高いと分析している。仕事や生活の役に立つと見込んで選ぶよりも、無料で提供されているから試している、という使われ方が日本では相対的に強い。

利用経験は58.8%、米独の75.6%に届かず

利用経験率そのものは1年で大きく伸びた。何らかの生成AIサービスを「使っている(過去使ったことがある)」と答えた割合は日本全体で58.8%。前年度調査の26.7%から2倍以上になった。文章を作る生成AIに限っても、24.0%から55.0%に上がっている。白書によると、前年度からの伸びは4か国の中で日本が最も大きかった。

それでも水準では他の3か国に届かない。何らかの生成AIサービスの利用経験率は米国75.6%、ドイツ75.6%、中国93.6%で、文章を作る生成AIに限ると米国65.4%、ドイツ66.0%、中国88.3%だった。画像・動画、音声、音楽、プログラムコードを作るサービスでも、3か国はいずれも日本を上回る。

日本の中では年齢による差が大きい。15〜19歳が91.7%、20代が78.2%で、30代56.3%、40代49.0%、50代44.2%、60代33.5%と下がっていく。10代と60代では3倍近い開きがある。なお今回の調査は、前年度まで20歳以上としていた対象に15〜19歳を新たに加えたもので(米国・ドイツ・中国も同じ)、20歳以上に限った日本の利用経験率は52.2%だった。前年度の26.7%と比べるなら、この52.2%の方が条件のそろった数字になる。

施策の照準がどこに向くか

白書の第I部は全体をAIに充てている。政府は2025年6月4日に人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)を公布し、同年9月1日に全面施行した。同法に基づく人工知能基本計画は2025年12月23日に初めて閣議決定され、2026年7月14日には第Ⅱ期の計画が閣議決定されている。制度づくりの側は着実に前へ進んでいる。

一方、今回の数字が示すのは、個人の側の未利用が安全性への警戒から来ているわけではないという事実である。危険視が理由なら、リスクを抑える制度整備が利用を後押しする。使い方がわからないことが理由なら、効くのは学ぶ機会や身近な使い道を示すことになる。白書の企業向け調査では、活用方針を「わからない」と答えた企業を除くと、自社の何らかの業務で生成AIを使っている割合が日本で86.4%に上った。個人は58.8%で、しかも中高年層で低い。職場で触れる機会があるかどうかが、そのまま個人の利用経験の差として表れている可能性がある。

同じ調査では、心身や生活、将来に関わる専門的な相談をするとき、15〜19歳の8.7%が「AIのみ」、26.2%が「主にAI(他の方法は補助的)」と答え、合わせて34.9%がAI中心で済ませていることも分かっている。60代では同じ2つを合わせても4.9%にとどまる。使い始めた層は急速に深いところまで頼り、使っていない層は入口で止まったまま――日本の生成AI利用は、その両端に分かれつつある。