皇位継承を安定させるため皇族の数を確保する「皇室典範等の一部を改正する法律案」の審議が、国会で大詰めを迎えている。2026年2月に召集された第221回特別国会は7月17日に会期末を控え、政府が6月30日に提出したこの改正案が会期内に成立するかどうかが焦点となっている。
法案の柱は「養子縁組」による皇族数の確保
改正案の背景には、皇族の減少がある。現在の皇室典範では女性皇族は結婚すると皇籍を離れるため、このままでは皇位の継承や皇室の活動を担う人が先細りになる、という懸念が長く指摘されてきた。
こうした課題を受け、2026年6月10日には衆参両院の正副議長が与野党13党派との全体会議を開き、国会としての「立法府の総意」を取りまとめた。示されたのは、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ②旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎え入れる――の2つの方策だ。
政府はこれを踏まえ、皇室典範などの改正案を国会に提出した。養子縁組を原則として認めていない現行規定に例外を設け、妻や子のいない15歳以上の男系男子を養子にできるようにし、その子孫にも皇位継承の資格を認める内容となっている。
「男系維持」か「女性・女系の議論」か
この養子案をめぐっては、賛否が分かれている。推進する側は、父方に天皇の血を引く「男系男子」による継承の伝統を保ちつつ、現実的に皇族数を確保できる方策だと位置づける。立法府の総意を踏まえた案だとも説明する。
一方、立憲民主党の一部議員などからは慎重論が出ている。旧宮家の男系男子を養子に迎える案について「国民の理解が得られない」「立法府の総意を超えた例外的な仕組みだ」と批判し、女性天皇や女系天皇を認めるかどうかの議論が置き去りにされていると指摘する。天皇陛下の長女である愛子さまの継承資格に触れていない点への異論もある。国会では全体会議の議事録が公開され、各党が意見を表明している。
会期末が迫り、延長論も
政府がこの国会に提出した法案のうち、皇室典範改正案や防災庁設置法案など一部は、会期末を目前にしてなお成立していない。参議院での審議に充てられる日程は限られており、与党内では会期を延長して成立を目指す案も出ている。
戦後の皇室制度で、養子縁組による皇族復帰が認められた例はない。改正案が成立すれば、皇位継承をめぐる制度の大きな転換となる。会期内に決着させるのか、延長して審議を続けるのか、政府・与党は判断を迫られている。
「女系天皇」論は認められない
改正案への慎重論のなかには、女性天皇や女系天皇の議論が置き去りにされているという主張がある。この点について、本紙の立場を明確にしておきたい。女系天皇は認められない。
まず条文を確認する。日本国憲法第2条は「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定め、これを受けた皇室典範第1条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と明記している。つまり現行法の下で、母方のみで皇統につながる「女系」の子孫には、皇位を継ぐ資格がそもそも存在しない。
混同してはならないのは、「女性天皇」と「女系天皇」はまったく別のものだという点だ。歴史上の8人10代の女性天皇は、いずれも父方が天皇につながる「男系の女性」であり、女系の天皇はただの一人も存在したことがない。神武天皇以来126代、皇位は例外なく男系で受け継がれてきた。憲法第2条が皇位を「世襲のもの」と定めたとき、その前提にあったのはこの男系による継承の伝統である。「世襲」の中身を勝手に読み替えて女系に道を開くことは、憲法が守ろうとした皇位の本質を骨抜きにするものだと言うべきだ。
そしてこの理は、日頃から「憲法を守れ」と説く護憲派にとってこそ、受け入れやすいはずである。皇位の継承は憲法第2条に定められた事柄であり、その「世襲」が前提としてきた男系継承を堅持することは、条文を尊重する態度そのものだからだ。男系維持は保守派だけの主張ではなく、憲法を重んじる立場からも支持を得られるものだと本紙は考える。
女系への転換は、単なる制度変更ではない。男系の血統という一本の糸で2000年以上つながってきた皇統が、そこで別の系統に切り替わるということであり、歴史的に見れば王朝の交代にほかならない。それを承知の上でなお「女系天皇を認めよ」と唱えるのは、意識するとしないとにかかわらず、日本を日本でなくそうとする主張である。「議論が置き去りだ」という批判に押されて、女系容認への扉を開く必要はまったくない。
一方、男系の「女性天皇」については、男系男子による継承をあらゆる手段で追求し尽くしてもなお途絶の危機が現実になった場合の、最終手段としてであれば議論の余地はあり得る。ただしそれは女系容認への入り口にしてよいものではなく、順序はあくまで男系維持の方策が先だ。旧宮家の男系男子の養子縁組は、まさにその王道である。本紙は改正案の方向性を支持する。会期内の成立が難しいのであれば、会期を延長してでも成立させるべきだ。