野党の審議拒否で止まっていた国会が、正常化に向かう見通しとなった。高市早苗首相が7月6日、参議院の決算委員会で、首相が出席する集中審議や党首討論の開催について「求めがあれば出席し、答弁する」と述べ、応じる方針を示したためだ。集中審議と党首討論は、7月中に開かれる見通しだ。
なぜ国会は止まっていたのか
対立の焦点は、与党の自民党と日本維新の会が今国会での成立を目指す二つの法案だった。一つは衆議院の比例代表の定数を削減する法案、もう一つは東京一極集中の是正を掲げる「副首都構想」の関連法案で、いずれも先の衆院選で高市自民党などが掲げた公約に関わる。
これに対し野党側は、法案の審議に入る前に、まず首相が出席する集中審議で説明責任を果たすよう求めた。念頭にあるのは、選挙をめぐる費用の問題や、首相の周辺が関与したと指摘される、いわゆる「中傷動画問題」など、高市首相自身に関わる一連の疑義だ。「重大な疑義への説明が先で、制度改正はその後だ」という順番を主張し、この要求が通らない間は審議に応じられないとして、委員会への出席を拒んできた。
与党は「まず法案の審議に入るべきだ」と進めようとしたが、野党が審議そのものを拒んだため、国会は「空転」と呼ばれる停滞に陥った。今回国会を止めていたのは審議を拒否した野党の側だ。要求を通すために審議を丸ごと拒み、国会全体を止めてしまう手法に、世論の理解は広がっていない。
「質疑をしたくてたまらない」という釈明
そうしたなか、国民民主党の井戸まさえ衆議院議員は6日、自身のX(旧ツイッター)に「国会が正常化しないまま、月曜日を迎えました」と投稿した。「質疑をしたくてたまらない」としながらも、「出席できかねる状況」があると釈明している。
しかし、本当に質疑をしたいのであれば、まず審議の場に出ればよい。出席を拒んでおきながら「質疑がしたい」と述べるのは、体のよい言い訳と言わざるを得ない。
受けて立った首相、次は野党の番だ
野党が審議拒否の理由に掲げてきたのは、「首相が説明の場に出てこない」という点だった。高市首相の答弁時間が歴代の首相に比べて短いという指摘があり、それが集中審議へのこだわりの根拠になっていた。
その言い分に対して、首相は「求めがあれば出席し、答弁する」と正面から受けて立った。これで膠着を動かしたのは首相の側であり、野党が審議を拒み続ける口実は消えた。疑義があると言うのなら、審議拒否ではなく、7月中に開かれる集中審議の場で中身のある質疑をぶつければよい。国会の正常化が本物になるかどうかは、もはや野党の対応にかかっている。
止まっていた間も、議員報酬は満額
一方、空転が続いた間も、議員への報酬は変わらず支払われていた。国会議員の報酬は「歳費法」で定められており、歳費(給与にあたる)は月額129万4000円。これに加えて期末手当(ボーナス)が年間で約638万円、さらに活動費として月100万円の「調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通費)」も支給される。ボーナスは6月末に支払われたばかりだ。
これらは、国会が実際に動いているかどうかにかかわらず、議員の身分がある限り基本的に支払われる。つまり、審議が止まっていた間も、議員には税金から報酬が満額出続けていた。「議論の場である国会を止めておきながら、報酬は満額なのか」という批判が出ていたのは、こうした事情による。
今後の焦点
会期末は7月中旬に迫っており、与党が成立を目指す定数削減法案と副首都構想関連法案の扱い、そして会期を延長するかどうかが今後の焦点となる。空転で費やした時間と、その間も満額支払われ続けた報酬のツケを取り戻す方法は、中身のある審議しかない。せっかく整った集中審議と党首討論の場を、また政局の駆け引きに使うようでは元も子もない。限られた会期を今度こそ実のある審議に充てることを、与野党双方に、とりわけ国会を止めてきた野党に求めたい。