総務省は14日、ドイツとの「日独ICT政策対話」の第9回を8日にベルリンで開いたと発表した。ドイツ連邦デジタル・国家近代化省などとの政府間会合で、AI、5G及びBeyond 5G(6G)、オンライン上の未成年者保護、ワイヤレス電力伝送(WPT)、データ政策の5分野を議論し、二国間の協力を深めることで一致した。前回の第8回は2024年11月28日に東京で開かれており、約1年9か月ぶりの開催となる。

日独ICT政策対話は、情報通信分野の政策について両国の相互理解を深め、連携・協力を進めるための 政府間の協議の場である。今回は政府間会合に続いて官民セッションも開き、双方の民間企業や研究機関、業界団体の関係者が加わった。総務省は「今次会合結果を受け、日独間の協力の一層の深化、具体化に向けて議論してまいります」としている。

AIは「ガバメントAI」と広島AIプロセス

政府間会合のAIの議題では、ガバメントAIと広島AIプロセスについて、双方の取組状況の認識を共有した。ガバメントAIは、行政機関が自ら業務に使うAIを指す。

広島AIプロセスは、日本がG7の議長国だった2023年に立ち上げた、生成AIの国際的なルール作りの枠組みである。開発者が守るべき事項をまとめた「国際指針」と「国際行動規範」からなり、2023年12月のG7閣僚級会合で包括的政策枠組みとして取りまとまった。2024年に議長国を引き継いだイタリアのもとで、行動規範を守っているかを開発者自身が報告・公表する「報告枠組み」が作られ、2025年2月に運用が始まっている。

前回の第8回では、日本側が広島AIプロセスと「AI事業者ガイドライン」の進捗を説明し、ドイツ側はEUのAI法の域内適用の状況やAIオフィスの設置といった欧州委員会の取り組みを説明していた。双方はそのとき、行動規範を実行に移すことの重要性を共有し、参加国を広げる「広島AIプロセス・フレンズグループ」を通じた協力を深めることを確認している。今回はその続きにあたる。

6Gは国際共同研究の進捗を確認、オープンRANとAI RANも

5G及びBeyond 5G(6G)については、日独で進めている国際共同研究の進捗状況を確認したうえで、オープンRANとAI RANについても議論した。総務省は、引き続き両国の関心事項を中心に二国間の協力を深めていくことで一致した、としている。

オープンRANは、携帯電話の基地局を構成する装置の間のつなぎ方(インターフェース)を公開の仕様にそろえ、異なるメーカーの機器を組み合わせて基地局を作れるようにする考え方だ。特定のメーカーにネットワーク全体を任せきりにしなくて済むため、調達先の選択肢が増え、供給網の安全性を高める手立てとしても各国が取り組んでいる。第8回では、ドイツ側が同国の検証拠点であるOTIC(Open Testing & Integration Centers)「i14yラボ」の取り組みやO-RANアライアンスとの協力を説明し、日独双方がドイツの携帯電話事業者によるオープンRANの商用展開の発表を歓迎していた。AI RANは、その無線アクセスネットワークの制御や運用にAIを組み合わせる取り組みを指す。

官民セッションでも6Gは3テーマのうちの一つとして取り上げられ、各社・各団体の事業や日独協力の現状の説明に加え、ビジネスと研究開発の現場が抱える課題を踏まえた議論が行われた。

無線で電気を送る技術が新たな議題に

今回新しく議題に入ったのが、ワイヤレス電力伝送(WPT)である。政府間会合と官民セッションの両方で取り上げられた。

WPTのうち、今回の対話で扱われた「空間伝送型」は、電波の送受信によって数メートル程度の距離を、有線でつながずに電力を送る技術だ。充電ケーブルをつないだり電池を交換したりせずに小さな電力を供給できるため、工場内のセンサー機器への給電などでの利用が見込まれている。機器を置く場所を配線に縛られずに決められるようになる点が利点とされる。

日本では、他の無線システムとの周波数の共用や電波の安全性、技術的条件、運用調整の仕組みについて検討が重ねられ、一定の要件を満たす屋内での利用に限って、920MHz帯・2.4GHz帯・5.7GHz帯の3つの周波数帯の構内無線局として、2022年5月に制度が整えられた。まだ用途が屋内に絞られている段階の技術であり、両国が政府間会合と官民の場の双方で扱ったことは、実用化の広がりを見据えた段階に入りつつあることをうかがわせる。

議題も相手の省庁も、前回から入れ替わった

今回と前回の発表文を並べると、扱う中身の移り変わりが見てとれる。

第8回(2024年11月、東京)で挙げられていたのは、安全でオープンな通信ネットワーク、Beyond 5G/6G、偽・誤情報対策、AI、メタバースの5項目だった。今回まで引き継がれたのはAIと6Gの2つで、偽・誤情報対策とメタバースは今回の発表には挙がっていない。代わりに、オンライン上の未成年者保護、WPT、データ政策の3つが新たに入った。官民セッションのテーマも、前回はオールフォトニクス・ネットワーク(APN)などの通信ネットワーク新技術が並んでいたのに対し、今回はWPTが入っている。

相手方も変わった。ドイツ側の窓口は、前回の発表では「連邦デジタル交通省」と記されていたが、今回は「連邦デジタル・国家近代化省」となっている。同省は公式サイトでもこの名称を掲げている。出席者も、ドイツ側は前回のシュノール事務次官からヤーツォムベック政務次官に、日本側も今川総務審議官から布施田総務審議官に代わった。今回のドイツ側には、連邦研究・技術・宇宙省と連邦家族・高齢者・女性・青少年省も加わっている。未成年者保護が議題に入ったことと、家族・青少年を所管する省が参加したことは対応している。

総務省は今回の結果を踏まえ、日独間の協力の具体化に向けた議論を続けるとしている。