丸井グループが東京・渋谷で建て替えを進める「渋谷マルイ」が、日本初の本格的な木造商業施設として2026年に開業する。木材をふんだんに使った外観がすでに姿を現し、脱炭素の時代を象徴する建物として注目を集めている。

構造の6割に木材、CO2を2000トン削減

新しい渋谷マルイは地上9階建てで、建物を支える構造部分の約6割に木材を使う。高層の建物では火災への強さが課題となるが、燃えにくく加工した「耐火木材」の技術を用いることで、木造でありながら都市部の商業ビルに必要な安全性を確保するという。

丸井グループによると、同じ規模を一般的な鉄骨造で建て替えた場合と比べ、二酸化炭素(CO2)の排出量を約2000トン削減できる。設計は、世界的な建築家ノーマン・フォスター氏が率いる英国のフォスター・アンド・パートナーズ、施工は戸田建設と住友林業の共同企業体が手がける。

なぜ今「木造ビル」なのか

木造が見直される背景には、地球温暖化対策がある。鉄やコンクリートは製造の過程で大量のCO2を出すのに対し、木は成長する過程で大気中のCO2を吸収して内部にため込む。木材を建物に使えば、その炭素を長期間、街の中に固定しておけるという考え方だ。

かつて木造の建物は「高く建てられない」「火に弱い」とされてきたが、複数の木材を接着した強度の高い集成材や、耐火技術の進歩によって、中高層のビルでも木を主役にできるようになった。国も、脱炭素や国内の林業再生の観点から「都市の木造化」を後押ししており、7月上旬には国土交通相が別の木造商業ビルの工事現場を視察している。

街のシンボルへ

渋谷マルイは、50年余りにわたって親しまれてきた旧店舗が2022年に一時休業し、木造での建て替えが進められてきた。木の温もりを感じさせる外観は、鉄とガラスが立ち並ぶ都心の風景の中で異彩を放つ。

近年は、オフィスビルやホテルでも木造・木質化を取り入れる動きが広がっており、「都市に森をつくる」とも呼ばれる。渋谷という発信力の高い街に、生活者が実際に足を運べる大規模な木造商業施設が生まれることは、こうした流れを一段と後押ししそうだ。