経済産業省は11日、脱炭素を武器に新たな産業集積をつくる「GX戦略地域制度」の第1弾を認定した。川崎市は、川崎臨海部の約2800ヘクタールが「コンビナート等再生型」として全国で初めて認定され、北海道は「データセンター集積型」で石狩市と苫小牧市の2市が全国で唯一の認定を受けた。新潟県柏崎市の鯨波産業団地も「脱炭素電源活用型」に選ばれ、各自治体が同日、それぞれ発表した。

「跡地」「再エネ」「原発」をそれぞれの核に

GX戦略地域制度は、コンビナート跡地や地域に偏った脱炭素電源を核として、自治体や企業の発意で産業クラスター(同じ分野の企業が集まる集積地)をつくる取り組みを国が支援する仕組みだ。GXはグリーントランスフォーメーションの略で、脱炭素と経済成長を同時に進める政策の総称である。地域を選ぶ類型は「コンビナート等再生型」「データセンター集積型」「脱炭素電源活用型」の3つで、ほかに事業者を選ぶ「脱炭素電源地域活用型」がある。

認定された3地域は、産業を呼び込む核がそれぞれ違う。川崎市が使うのは製鉄所の跡地を含む臨海部の広大な用地で、北海道が使うのは国内随一とされる再生可能エネルギーの供給力、柏崎市が使うのは原子力発電を含む脱炭素電力だ。柏崎市は、整備中の鯨波産業団地について「脱炭素電力100%の安定供給によりGXを強みとする事業者の進出を促す」と説明している。

川崎はJFEと共同申請、2800ヘクタールの転換へ

川崎市の申請者は、市とJFEホールディングス、民間企業や金融機関でつくる川崎臨海部GX戦略推進コンソーシアムの共同だ。市は認定を受けた事業として3つを挙げる。南渡田地区では、脱炭素分野の新興企業が研究開発から試作、実証、量産へと事業を広げる「スケールアップ」を支える拠点をつくる。研究開発拠点は2027年度中のまちびらきを目指し、既存の工場建屋を改修して試作・実証に使える場を整える。電気や産業ガス、蒸気といったインフラを地域内で共同利用する仕組みも構想している。

扇島地区では、首都高速湾岸線の扇島出入口(仮称)や物流拠点の整備を進め、首都圏最大級の産業用地として企業誘致に動く。同地区では2030年度までに液化水素の受け入れ基地の実証を予定しており、これを軸に水素の製造・輸送・利用をつなぐ供給網を築く方針だ。福田紀彦市長は「土地利用転換の早期実現に向けた取り組みを一層推進してまいります」とのコメントを出した。

支援は補助金だけでなく規制改革とセット

この制度の特徴は、補助金と規制・制度改革を一体で講じる点にある。コンビナート等再生型では、既存設備の転換支援やインフラ整備支援に加え、不要な設備を撤去して用地を転換する費用の支援、日本貿易振興機構(ジェトロ)と協力した海外からの投資呼び込み、GX推進機構による金融支援、国家戦略特区と連携した規制・制度改革が用意される。工場の建て替えや土地の用途変更は現行規制が壁になりやすく、資金と規制の両面を同時に動かす狙いがある。

制度は2025年2月に閣議決定されたGX2040ビジョンを踏まえて創設され、同年12月に自治体を対象に公募が行われた。今年4月24日に1次審査を通過した「有望地域」が選ばれ、各地域が事業計画を練り上げてきた。今回はそのうち、有識者でつくる審査委員会が計画の熟度が十分に高まったと判断した地域が認定された形だ。

認定を逃した地域は「磨き上げ」継続

有望地域に選ばれながら今回認定に至らなかった地域も残る。北海道では脱炭素電源活用型の有望地域として稚内、留萌、帯広、白糠、苫小牧、三笠、石狩、松前、奥尻の9市町が選ばれていたが、今回の認定はデータセンター集積型の2市にとどまった。鈴木直道知事は「今回認定されなかったものの、(中略)国は、伴走しつつ事業計画の磨き上げを継続し、計画の熟度が十分に高まった段階で認定するとしている」とし、関係市町と連携して今後の認定を目指す考えを示した。

認定は1回で打ち切られるわけではなく、計画が固まった地域から順次追加される。川崎市は南渡田地区の研究開発拠点を2027年度中に開き、扇島地区では2030年度までに液化水素の受け入れ基地の実証に入る日程を示している。