国連安全保障理事会は9月17日、イランへの国連制裁が守られているかを調べる専門家パネルの任期を延長する決議案を採決し、中国とロシアの反対で否決した。採決は賛成11、反対2、棄権2で、棄権はパキスタンとソマリアだった。決議案は米国が提出していた。

安保理の決議は、常任理事国である米英仏中ロ5か国のうち1か国でも反対すると成立しない。賛成が11あっても、反対した2か国が常任理事国だったため決議案は通らなかった。

制裁違反を独自に調べる組織

専門家パネルは、イランの核開発をめぐる2006年の決議1737で設けられた制裁委員会(1737委員会)を補佐する組織として、2010年に置かれた。制裁の抜け道や違反の疑いを独自に調べ、安保理に報告するのが役目だ。委員会自体も、活動状況を90日ごとに理事会へ報告する義務を負っている。

米国代表は、独立したパネルがなければ「この理事会は、制裁違反について公平で証拠に基づいた報告を受ける主要な手立てを失う」と述べた。パナマ代表は、パネルの分析があるからこそ加盟国は「十分な根拠のある一貫した判断」ができると主張し、コロンビア代表は外交に役立つ情報が意思決定者の手元から消えると訴えている。ギリシャ代表は、制度上の道具を欠けば理事会の監視能力は損なわれると述べた。

対立の根にある「スナップバック」

安保理は2015年、イラン核合意(包括的共同行動計画=JCPOA)を決議2231で承認している。イランが核開発を制限する見返りに制裁を解除する10年の枠組みで、この決議にはイランが約束を破った場合に解除済みの制裁を元へ戻す「スナップバック」の仕組みも書き込まれていた。

米国は2018年5月に合意から離脱し、イランはその後、自らの約束の履行を縮小した。英仏独の3か国は10年の期限が切れる直前の2025年9月、イランが合意に違反しているとしてスナップバックが発動されたとの立場を取った。安保理は制裁解除を続ける決議を採択できず、国連事務局は、いったん解除された制裁が2025年9月27日に再適用されたと理事会に伝えている。

中ロはこの手続きそのものを認めていない。ロシア代表は、西側諸国にはスナップバックを発動する「権利も正当性もなかった」と述べ、決議案は「深刻な欠陥がある」と主張した。中国代表は決議2231が2025年10月18日に終了したとしたうえで、長期的な合意は国際原子力機関(IAEA)の保障措置のもとで外交によって達成されるべきだ、との考えを示している。

「設置に賛成したのは中ロ自身」

英国代表は採決後、2006年の委員会設置と2010年のパネル設置に、中国とロシアがいずれも賛成票を投じていた事実を指摘した。ラトビア代表は今回の結果について、特定の一加盟国の利益のために国連制裁の枠組みが弱められていく流れの一部だと述べている。バーレーン代表は、否決は「事実を変えるものではない」として、理事会は自らの決議を履行し、制裁の履行状況を監視する仕組みを設けるべきだと主張した。

1737委員会は、この対立のために委員長も決まらず、専門家パネルの任命もできない状態が続いている。安保理は9月10日にも委員会の活動をめぐる会合を開いたが、会合を開くかどうかの手続き投票から中ロが反対に回り、賛成11、反対2、棄権2という17日と同じ並びになった。委員会が負う90日ごとの報告義務は、それを担う体制が整わないまま残っている。