米ゲーム大手バルブ(Valve)は9月14日午前10時(米太平洋時間、日本時間15日午前2時)、無線のVR(仮想現実)ヘッドセット「Steam Frame」の販売をSteamストアで始めた。米国での価格は、保存容量256GBのキットが1059ドル、1TBのキットが1299ドル。日本・台湾・香港では、この3地域の正規販売代理店であるKOMODO(コモド)のサイトで注文方法が案内される。韓国は後日発売としている。

ヘッドセット自体が「SteamOSのパソコン」

Steam Frameは、バルブがゲーム機やパソコン向けに開発してきた基本ソフト(OS)「SteamOS」を搭載した1台のパソコンである。頭脳にあたるのはスマートフォン向けとして知られるクアルコムの「Snapdragon 8 Gen 3」(回路の線幅4ナノメートル)で、メモリーは16GB。バルブは「PCからのストリーミングを必要とすることなく、増え続けるVRゲームと非VRゲームの両方でスタンドアロンプレイをサポートします」と説明する。VR向けに作られたゲームだけでなく、平面の画面で遊ぶ普通のゲームも本体単体で動く、という意味だ。

ただし、このプロセッサーの設計は「ARM64」で、Steamに並ぶゲームの多くが前提としてきたパソコン向けの設計とは系統が違う。そこでバルブは、携帯ゲーム機Steam Deckや据え置き機Steam Machineと同じように、ライブラリのどのゲームが本体単体で動くかを示す「Steam Frame Verified」の一覧を用意した。一方、手元のパソコンから映像を飛ばして遊ぶ「ストリーミング」であれば、Steamライブラリの全タイトルが対象になる。開発者向けには、Steamのパートナー用画面から申し込める開発者キットの配布も始めている。

視線の先だけを高画質で送る

新機能として目立つのが「中心窩(ちゅうしんか)ストリーミング」だ。中心窩は網膜の中心にあり、ものを細かく見分けられる部分を指す。ヘッドセット内側の2個のカメラで視線を追い、その先にあたる場所にだけ最も高画質な映像を割り当てる仕組みで、バルブは「通常、画質と実効帯域幅が10倍以上向上します」としている。画面全体を一様に高画質で送らずに済むため、無線でも画質を保ちやすくなる。

無線は電波を2系統に分けた。同梱される6GHz帯のアダプターをパソコンに挿すと映像と音声の専用回線ができ、もう一方の電波でWi-Fiにつなぐ。1本の電波を映像とインターネット通信で奪い合わないようにする設計だという。

重さ440グラム、手の追跡は設定不要

画面は片目あたり2160×2160の液晶パネルを2枚使い、対応するリフレッシュレート(1秒間の画面の書き換え回数)は72〜144Hz。レンズは薄型の特注パンケーキレンズで、視野角は最大110度とした。

重さは、頭に載せる本体部分(コアモジュール)が185グラム、後頭部のヘッドストラップまで含めると440グラム。ヘッドストラップにはスピーカーと充電池(21.6ワット時)が入り、前後の重量配分を取っている。コントローラーは電池込みで1台130グラム。周囲に向いた4個のモノクロカメラと赤外線LEDでコントローラーと頭の位置を追うため、部屋に別売りのセンサーを置く設定作業は要らない。暗い部屋でも追跡できるとしている。

保存容量は256GBと1TBのUFSメモリーの2種類で、microSDカードを挿して増やせる。充電はUSB-C(最大45ワット)。カメラを通して周囲の実際の景色を見る「カラーパススルー」は本体の標準機能ではなく、別売のアークトゥルス・ビジョン製カメラを取り付けることで5K画質のHDRに対応する。

バルブは自社のゲーム配信基盤Steamに合わせ、携帯型のSteam Deck、据え置き型のSteam Machineとハードを手掛けてきた。Steam Frameはその並びに加わる無線VR機にあたる。日本・台湾・香港での販売は、Steamハードウェアの公式販売代理店であるKOMODOが担う。