山中竹春前市長の辞職に伴う横浜市長選は、10月4日告示、10月18日投開票で行われる。各党の動きが出そろいつつあり、日本共産党神奈川県委員会は9月18日、党公認としてあさか由香党県副委員長を擁立すると発表した。参政党は9月11日に立候補予定者の福山あつし(敦士)氏と政策協定を結び、同氏を推薦して「党を挙げて応援する」としている。
共産党はあさか由香氏を公認 「平和」「市民生活」「人権」の3本柱
日本共産党神奈川県委員会は9月18日、あさか由香党県副委員長を党公認で擁立すると横浜市政記者クラブで発表した。同委員会は「職員へのパワハラによる市長辞職に伴う横浜市長選」と位置づけ、「全国注目の選挙となっています」としている。会見では藤原正明党県委員長が党の立場と候補者擁立の経過を報告し、あさか氏が決意を述べた。
あさか氏は発表文で「重視する3つの柱」を挙げた。第1は「横浜の発展にとって平和が鍵」で、横浜市が米軍基地の返還を市是としてきたことを踏まえ、「憲法9条を守り生かす立場で国にも米国にも言うべきことは言う」とした。横浜港にある米軍施設ノースドックへの新しい部隊の配備にも触れている。
第2は市民生活で、「横浜市は財政規模2兆円の豊かさを持っています」として、それを市民の生活に回す仕組みが必要だと訴えた。具体策として、避難所の質の改善とインフラ整備、市営バスと地下鉄の運賃を18歳未満まで子ども料金にすること、教材費や修学旅行費への補助、年金だけで入れる高齢者施設の増設を挙げた。中学校給食については「異物混入や残食の多さなど問題が指摘されるデリバリー方式でなく、できたてでおいしい中学学校給食へ、学校調理方式を進めます」としている。学校給食は参政党と福山氏の政策協定にも入っており、争点になりそうだ。
第3は「世界水準の人権都市」で、ハラスメント根絶を基本に据えて第三者委員会の調査報告書の提言を速やかに実行するとし、多文化共生と人権尊重を市政の基本原則として「実効性のある差別禁止条例」の制定を目指すとした。
協定は8分野 学校給食や地域交通も
参政党の発表によると、協定は「横浜市の将来世代に、活力があり、安全で自立した地域社会を引き継ぐとの共通認識のもと」に結んだとしている。
挙げられた項目は、市政改革および財政の透明化、横浜市民の所得向上と子育てや教育環境の向上、質の高い学校給食、防災対策、地域交通の強化、GREEN×EXPO 2027の費用検証および跡地利用、スポーツ振興および子どもの遊び場の確保、地域の安全や生活秩序の確保と公正な雇用――の8分野。同党は「横浜市の現在と将来に関わる重要な政策課題について、双方が具体的な方向性を共有した」と説明し、「一部の組織や団体のためではなく、横浜市民のための政策実現」に取り組むとした。協定書そのものも同党のサイトで公開している。
協定に入ったGREEN×EXPO 2027は、2027年3月19日から9月26日まで横浜市の上瀬谷地区で開かれる2027年国際園芸博覧会である。主催は日本国際園芸博覧会協会で、市は開催都市として会場整備や跡地のまちづくりに関わる。次の市長の任期は、そのまま博覧会の開催期間と重なる。
告示10月4日、投票資格は7月3日までの転入者
横浜市選挙管理委員会によると、告示日は10月4日(日曜日)、投票日は10月18日(日曜日)で、投票時間は午前7時から午後8時まで。開票は即日で、午後9時15分から始まる。立候補予定者を対象にした説明会は12日に開かれた。
投票できるのは、投票日時点で満18歳以上(2008年10月19日までに生まれた人)の日本国民で、住民票が作成された日から引き続き3カ月以上、横浜市の住民基本台帳に記録されている人である。市外からの転入者は、選挙人名簿登録基準日の3カ月前にあたる7月3日までに転入届を出していれば投票でき、7月4日以降の届け出では投票できない。市内で区をまたいで引っ越した場合は、9月1日までに異動届を出していれば新しい住所での投票となる。
立候補の届出は、告示日の10月4日午前8時30分から午後5時まで、横浜市会議事堂3階の多目的室(中区本町6丁目50番地の10)で受け付ける。届出書類の事前審査は9月14日から10月2日までの平日に市役所17階の市選管で行われており、誰が実際に立つかは4日の受付を終えて確定する。9月12日には同じ会場で立候補予定者説明会が開かれた。
選挙公報は投票日2日前の10月16日までに各世帯へ配られ、区役所や地区センターにも置かれる。候補者情報と選挙公報を載せるページは市選管が用意しているが、掲載は立候補届出の受理後、10月5日以降の予定である。市選管は横浜市視覚障害者福祉協会の協力を得て、点字訳と音声訳の「選挙のお知らせ」も作成しており、希望者に郵送するとしている。
前市長の辞職に伴う任期途中の選挙
今回の市長選は、山中竹春前市長の辞職に伴うものである。市会事務部の記者発表によると、山中氏は8月28日に辞職願を提出した。渡邊忠則市会議長はその日、「今回のパワー・ハラスメント問題は、本市職員の士気や組織全体へ大きな影響を及ぼすとともに、市政に対する市民の信頼を著しく損なうものであり、極めて重大な問題であると認識しております」とコメントしている。市長の言動をめぐっては、第三者による調査の報告書が7月30日に市へ提出されていた。報告書が調査7事項のほとんどで事実を認め、特別職も対象にしたハラスメント防止条例の制定を提言したことは、横浜市の第三者委、前市長のパワハラを認定 調査7事項のほとんどで事実あり 特別職も対象の「ハラスメント防止条例」制定を提言で伝えている。あさか氏が掲げる「ハラスメント根絶」も、この提言の実行を指している。10月18日の投開票の結果は横浜市長選、新人の原沢あつみ氏が初当選 約55万票で全18区首位、前市長の山中氏は3位で伝えている。
市会は9月25日、前市長の退職手当を支給しないための条例(市第44号議案)を可決した。市長職務代理者の平原敏英副市長が同日提出したもので、「令和7年8月30日において市長の職にあった者の同日を含む任期に係る退職手当は……支給しない」と定める。市会の議案説明によると、対象となる在職期間は令和7年8月30日から令和8年9月7日までで、本来支給される予定だった退職手当は931万2576円だった。条例は公布の日から施行し、退職日である9月8日にさかのぼって適用され、退職日から5年を経過した日に効力を失う。
任期満了を待たない選挙のため、当選者の任期は前市長の残り任期ではなく、新たに4年となる。
同じ政令指定都市でも、新潟市長選は任期満了に伴って10月11日に告示され、10月25日に投票が行われる。告示日の届け出の状況は新潟市長選、現新3人の争いに 3選目指す中原氏に青木氏・早武氏が挑むで伝えた。
横浜市は政令指定都市のなかで最も人口が多い自治体である。中学校給食の方式、地域交通の運賃、上瀬谷地区の開発など、各陣営が掲げる項目はいずれも市が単独で判断できる範囲が広く、市長が交代すれば方針が変わりうる分野にあたる。誰が実際に立つかは、10月4日の立候補届出を終えて確定する。
