吉野家ホールディングスは9月15日、これまで期間限定で販売してきた「厚切り豚角煮定食」を、販売期間を設けないレギュラーメニューとして18日15時から売り出すと発表した。ただし一日中いつでも頼めるわけではなく、毎日15時から翌4時までの時間帯限定とする。牛丼チェーンが看板商品以外を夜の時間帯に常設する、珍しい形の定番化となる。

「期間限定」をやめ、代わりに時間を区切った

発表によると、厚切り豚角煮定食の価格は本体1098円、店内税込1207円、テイクアウト税込1185円。公式サイトの商品ページにも販売時間を「15時〜翌4時(一部店舗では異なります)」と明記している。定食のご飯は増量とおかわりが無料で、テイクアウトにはみそ汁が付かない。一部店舗では販売しておらず、デリバリーを含め価格が異なる店舗もある。

同時に、この豚角煮に吉野家の牛小鉢を組み合わせた「厚切り豚角煮牛小鉢定食」も発売した。価格は本体1300円、店内税込1429円、テイクアウト税込1403円で、こちらは今回が初登場となる。

商品は、厚切りの豚角煮を箸で簡単にほぐれるほどやわらかく仕上げたもので、白髪ねぎと食べるラー油を合わせ、和からしを別添する。同社は「夕食にはもちろん、頑張った自分へ『一日のご褒美』としても楽しんでいただける」としている。

客数は前年割れ、売上を支えてきたのは客単価

今回の判断の背景には、吉野家の足元の数字がある。同社が公表している月次報告によると、吉野家の既存店は今年6月、客数が前年同月比98.3%と前年を下回り、8月も98.7%にとどまった。一方で客単価は6月が102.1%、8月も102.1%と前年を上回っている。既存店売上高が6月100.4%、8月100.7%と前年並みを保てたのは、来店する人の数ではなく、一人あたりの支払額が押し上げたためだ。

3月から8月までの上期累計でも、既存店は売上高106.5%、客数101.3%、客単価105.1%で、伸びの大半を客単価が占める。1000円を超える定食を夜の時間帯に常設する今回の変更は、この形をさらに進めるものといえる。

「時間帯限定」という売り方

外食チェーンの新商品は、数週間から数か月の「期間限定」で出し、売れ行きが良ければ再登場させるのが通例だ。今回はその再登場のたびに告知と仕込みを繰り返すのをやめ、販売期間の縛りを外した代わりに、提供する時間を絞った。

15時から翌4時という区切りは、昼のピークを外し、夕食から深夜までを対象にするものだ。牛丼チェーンは短時間で食事を済ませる昼の客と、腰を落ち着ける夜の客とで求められるものが違う。厚切りの角煮に小鉢を足した1400円台の定食は、前者よりも後者に向く。看板の牛丼で客数を集めながら、夜は単価の高い定食を常に置いておく——時間帯で品ぞろえを変える売り方に、吉野家が一歩踏み込んだ形だ。