10月1日、ビール系飲料にかかる酒税の税率が一本化される。財務省の資料によると、ビール・発泡酒・新ジャンル(発泡酒②)で分かれていた税率が、そろって1キロリットル当たり155,000円、350ミリリットル換算で54.25円になる。現在の税率は1キロリットル当たりでビールが181,000円(同63.35円)、麦芽比率25%未満の発泡酒といわゆる新ジャンルが134,250円(同46.99円)で、ビールは下がり、新ジャンルは上がる。国税庁が公表したリーフレットは、350ミリリットル缶1本当たりの変動額を、ビールが約9.1円の引き下げ、新ジャンルが約7.26円の引き上げと示している。

チューハイやサワーが含まれる「その他の発泡性酒類」も引き上げの対象だ。現行の1キロリットル当たり80,000円(350ミリリットル換算で28円)から100,000円(同35円)になり、缶1本当たり7円上がる。

「第三のビール」という区分が実質的に消える

税率が同じになれば、麦芽を減らして税を抑える設計の商品を作る理由がなくなる。大手4社はいずれも、主力の新ジャンル商品を「ビール」に品目変更して売り直す。

先陣を切るのはサントリーで、7月16日のニュースリリースで「金麦」「金麦〈糖質75%オフ〉」を新ジャンル製法(発泡酒②)からビール製法に変更し、10月6日に全国発売すると発表した。ラガービール「金麦〈豊潤〉」も10月13日に加える。同社は「10月の酒税改正により、ビールと発泡酒で酒税の税率が一本化されますが、一定の価格差が残ると見込んでいます」とし、ビール化した金麦で「デイリービール」の市場を作るとしている。

サッポロビールは6月17日、「サッポロ GOLD STAR」「サッポロ 麦とホップ」を新ジャンルからビールへ変更し、缶を10月20日に発売すると発表した。麦とホップの樽商品は10月13日から。同社はビールの中に「プレミアム」「メインストリーム」「エコノミー」の価格帯をそろえるポートフォリオへ移り、2ブランドをエコノミーの中心に置くと説明している。

アサヒビールは9月18日、「クリア アサヒ」を『クリア アサヒ<生>』と改め、10月27日に発売すると発表した。品目を新ジャンルからビールへ変える点を商品名の「<生>」で示す。業務用の樽は10月6日以降に順次切り替える。キリンビールは5月27日、「本麒麟」を新ジャンルから麦100%の生ビールへ製法変更し、11月4日に発売すると発表した。同社は2018年の本麒麟発売時点で、将来の税率一本化を見据えていたと明かしている。

9年かけた3段階の改正だった

この一本化は、2017年度(平成29年度)の税制改正で決まったものだ。財務省は狙いを「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する」ためと説明している。税収全体は増減しない前提(税収中立)で設計された。

実施は2020年10月から3段階で進んだ。350ミリリットル換算でみると、ビールは77円から70円、63.35円と下げられ、10月に54.25円に達する。逆に新ジャンルは28円から37.8円、46.99円と上げられてきた。10月が最終段階にあたる。

もともと新ジャンルは、酒税法上の「その他の発泡性酒類」として28円という低い税率で売られていた区分だった。2023年10月の改正で発泡酒②に組み入れられ、税率も発泡酒と同じ46.99円にそろえられている。この年、国税庁の統計で発泡酒の課税数量が前年度の585,774キロリットルから1,230,741キロリットルへ倍増したのは、新ジャンルがこの品目に移ったためだ。今回の改正で、税制上はビールとの区別もなくなる。

店には10月1日午前0時の在庫を数える宿題

小売店や飲食店にとっては、税率より在庫の扱いが当面の実務になる。国税庁は、10月1日午前0時の時点で流通段階にある課税済みの酒類について、新旧税率の差額を調整する「手持品課税(戻税)」を実施する。税率が上がる酒を持っていれば差額を納め、下がる酒を持っていれば差額が戻る仕組みだ。

申告が必要になるのは、引き上げ対象の酒類を販売のために2,000リットル以上持っている販売業者らと、差額を計算した結果として還付を受けようとする人。申告書兼届出書の提出期限は11月2日で、納付が必要な場合の納期限は2027年3月31日となる。国税庁は「全ての酒類の販売業者等の方(酒場・料飲店等を経営されている方も含みます)は、令和8年10月1日時点において貯蔵場所で所持する対象酒類の在庫数量を確認する必要があります」と呼びかけている。

なお、税率が下がっても店頭価格がそのまま下がるとは限らない。酒税は製造場からの出荷時にかかる税で、メーカーはこの秋、原材料費や物流費の上昇も踏まえて生産者価格を見直している。キリンビールは5月20日、10月1日納品分からビール・発泡酒・新ジャンル・RTD(缶チューハイなど)・樽詰商品の生産者価格を改定すると発表しており、減税対象のビールと増税対象の商品が同時に改定される。缶1本当たり9.1円の減税分が、そのまま消費者の手元に届くとは限らない。