製品評価技術基盤機構(NITE=ナイト)は9月17日、9月21日の敬老の日に合わせ、介護ベッドと電動車いすによる高齢者の事故に注意するよう呼びかけた。NITEに通知された製品事故情報によると、2016年から2025年までの10年間に、高齢者が被害に遭った事故は介護ベッドで43件、電動車いすで59件起きている。いずれの製品も事故が続いており、ほぼ毎年、死亡事故が確認されているという。
NITEは経済産業省が所管する独立行政法人で、消費生活用製品安全法に基づいて報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度で集めた重大に至らない事故の情報も持っている。今回の集計はその両方を含む。資料では、内閣府の高齢社会白書の定義に合わせ、65歳以上を高齢者としている。
挟まれ23件、側溝などへの転落26件
事故の中身は、製品ごとにはっきり分かれる。
介護ベッドの43件では、ベッド周りの隙間に体が挟まった事故が23件と半数以上を占めた。続いてベッドの背上げ部などが落下した事故が5件、火災が5件、転倒が2件、その他が8件となっている。火災は電源プラグや電源コード、電気部品、バッテリーに関連したものだ。
電動車いすの59件では、側溝や川などへの転落が26件で最も多い。次いで踏切で電車と接触した事故が13件、下り坂や段差などでの転倒が11件、火災が7件、その他が2件だった。屋内で使う製品と屋外を走る製品の違いが、そのまま事故の形に出ている。
いずれも、事故が起きた場合に死亡や重傷に至る割合が高いことが特徴だとNITEは説明している。
原因の半数以上は「誤使用・不注意」
原因の内訳は、さらに踏み込んだ話になる。調査中の案件を除いた介護ベッド38件、電動車いす57件について原因別に数えると、「誤使用・不注意またはそれが疑われるもの」がいずれも半数以上を占めた。製品自体の不具合ではなく、使用環境や使い方、事前確認の不足が背景にあるケースが多いということだ。
製品の不具合以外による事故は、介護ベッドで約5割、電動車いすで約8割にのぼる。裏を返せば、使用前の確認や周囲の見守りで未然に防げる可能性のある事故が、それだけ多いことになる。
NITEが挙げた死亡事故の例は3件ある。2022年6月に静岡県で、80歳代の女性が介護ベッドの手すりとマットレスにけい部を挟まれた状態で見つかり、搬送先で死亡が確認された。ベッドに異常は認められず、不注意が疑われるとされている。2024年4月には愛媛県で、80歳代の男性が電動車いすとともに水路で見つかり、死亡が確認された。こちらも製品に異常はなく、誤った操作や不注意が疑われるという。
2021年12月に大阪府で起きた事故では、60歳代の男性が電動車いすで踏切を渡り終える直前に下りてきた遮断機に引っかかって転倒し、列車にはねられて死亡した。NITEは、遮断機が閉まる直前に単独で踏切内へ入り、出口側で下がっていた遮断桿(しゃだんかん)を持ち上げて外へ出ようとした際にバランスを崩したと推定している。この製品の取扱説明書と本体には、踏切の横断はできるだけ避けること、やむを得ず渡る場合は介助者に同行してもらうこと、警報機が鳴り始めたときは踏切内へ絶対に入らないことが記載されていた。
JIS規格と、乗る前の点検
防止策としてNITEが挙げたのは、まず介護ベッドではJIS規格に適合した製品を使うことだ。サイドレールやベッド用手すりの隙間に頭や首を挟み込む窒息事故を防ぐため、「JIS T 9254 在宅用電動介護用ベッド」が2009年に改正・公示され、対応する国際規格に合わせて隙間の規定が見直された。2015年にも国際規格の改定に合わせた見直しが行われている。
問題は、2009年より前に製造された製品が今も使われている可能性があることだ。NITEは、そうした製品には挟み込み防止の措置を施すよう求めている。資料は隙間の大きさについて、図に示した箇所ごとに直径120ミリ、直径60ミリ、318ミリという目安の数値を挙げ、これを外れる隙間があれば注意が必要だとしている。規格に適合していても、隙間から外の物を取ろうとしたり体勢を崩したりして挟まれるおそれがあるため、スペーサーや保護カバーで隙間をふさぐことも勧めている。
電動車いすでは、走行する道路環境を家族や介助者とあらかじめ確認することを挙げた。避けるべき場所として、ガードレールのない崖や蓋のない側溝、水路、踏切、横断に時間のかかる広い道路や信号のない交差点、急な坂道を具体的に列挙している。やむを得ず走る場合は、脱輪を防ぐため踏切や道の端を走行しないよう求めた。
乗る前にバッテリー残量を確認することも重要だという。残量が少ないまま使うと、途中で電池が切れて帰宅できなくなったり、踏切内で停止して電車と接触したりするおそれがある。転倒防止バーなどの装置が付いている場合は、正常に働くかを乗車前に確かめ、ハンドルやアクセルレバーの緩み、タイヤの亀裂も点検するよう促している。
65歳以上は3624万人、総人口の29.6%
NITEは、介護ベッドと電動車いす以外にも、加齢に伴う認知機能や身体機能の変化が思わぬ事故につながる例があるとしている。洗剤や柔軟剤を飲み物と間違えて誤飲する、EMS機器などの運動器具を若い人と同じ感覚で使ってけがをする、視力の低下でガスこんろの青い炎が見えにくくなり衣服への着火に気づくのが遅れる、長年使った杖が壊れて転倒する、といった形だ。
こうした呼びかけの背景には、高齢者そのものの多さがある。総務省統計局が9月20日に公表した統計トピックスによると、65歳以上の人口は3624万人で、前年に比べて2万人増えた。総人口に占める割合は29.6%と過去最高で、39か国の比較では日本が世界で最も高い。
NITEは、高齢者本人だけでなく、家族や介助者など周りの人も事故を防ぐための注意点を確かめ、安全に過ごせる環境を整えてほしいとしている。過去の事故事例は、同機構がウェブで公開している製品事故の検索ツール「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト)」で製品名から調べられる。
