世界経済フォーラム(WEF)が9月16日に公表した2026年版のジェンダー・ギャップ指数で、日本は145か国中117位だった。スコアは0.670で、前年の118位(0.666)から1つ上がった。ただ、報告書の日本のページを分野別に見ると、上がったのは政治で、経済は112位から119位に下がっている。立憲民主党は9月18日、辻元清美ジェンダー平等推進本部長名のコメントを発表し、政治分野の男女格差の大きさを指摘したうえで、前日に発足した第2次高市改造内閣の女性閣僚が2人にとどまると批判した。
総合117位の中身 経済は112位から119位に下がった
ジェンダー・ギャップ指数は、経済、教育、健康、政治の4分野について、各分野で使うデータに重み付けをして算出する。完全に平等な状態を1、完全に不平等な状態を0とし、男女の格差そのものの大きさを見る。国の豊かさや水準の高さではなく、その国の中で男女の差がどれだけ残っているかを測る指標で、教育水準や所得水準が高い国でも、男女差が大きければ順位は下がる。
WEFの報告書に載った日本の分野別の結果は次の通りだ。
- 経済(経済参画と機会): 0.609で119位(前年は0.613で112位)
- 教育: 0.994で68位(前年は0.994で66位)
- 健康: 0.973で49位(前年は0.973で50位)
- 政治: 0.105で121位(前年は0.085で125位)
総合の順位を押し上げたのは政治で、経済は逆にスコアも順位も下げた。報告書は日本について、経済分野のスコアが2025年の61.3%から2026年は60.9%に下がったと書いている。日本の順位は東アジア・太平洋地域で下から3番目だという。
経済分野の中で特に低いのは、管理職の指標だ。「議員・高級官僚・管理職」に占める女性は14.4%、男性は85.6%で、この指標は125位だった。同じ仕事での賃金の平等さ(経営者への意識調査による)は109位、推計所得は女性が3万4860ドル、男性が5万7930ドル(購買力平価)で101位である。労働力率は女性56.4%、男性71.7%で78位、専門職・技術職は女性48.37%で77位と、働く人の数ではほぼ肩を並べつつある一方、決める立場とお金の面で差が残っている。
教育は識字率と中等教育の在学率がともに1位だが、高等教育の在学率が女性63.63%、男性65.31%で113位となり、総合を少し下げている。内閣府男女共同参画局が掲載した2026年版の総合順位では、首位はアイスランドで0.930、2位がフィンランドの0.872、3位がノルウェーの0.857だった。
政治は0.105で121位 初の女性首相の分は「0.013」
政治分野は前年の0.085から0.105に上がり、125位から121位に順位を上げた。それでも4分野で最も低い。この分野は、国会議員に占める女性、閣僚に占める女性、過去50年に女性が首脳を務めた年数の3つの指標でできている。
報告書の日本のページでは、国会議員に占める女性は14.62%で118位、閣僚に占める女性は15.79%で97位だった。首脳の指標は、過去50年のうち女性が首脳を務めた期間が0.65年、男性が49.35年で、スコアは0.013、71位である。報告書は、日本が初の女性首相として高市早苗氏を選んだことを「歴史的な出来事」と書き、この指標のスコアを1.3%に引き上げ、政治分野の上向きに寄与したとした。同時に、閣僚と国会議員の女性の割合は時間をかけて少しずつ改善してきたとも記している。
つまり、首相が女性になったことの効果は、首脳の指標の上では在任期間の分しか表れない。50年という長い物差しで測るため、1年弱の在任では数字はほとんど動かない。順位を大きく動かすのは、残る2つの指標、閣僚と国会議員に占める女性の割合の方である。
立憲民主党「仕方がないで済ませることはできない」
立憲民主党のコメントは、117位について「前年の118位から1つ上がったものの、依然として低い水準です」としたうえで、「とりわけ政治分野における男女格差は大きく、政策決定の場への女性の参画は、まだまだ進んでいません」と指摘した。
そのうえで「昨日発足した第2次高市改造内閣でも、女性閣僚はわずか2人です」「衆議院議員に占める女性の割合は14.6%と低く、『選択的夫婦別姓』導入などジェンダー平等を発展させる政策議論はいっこうに進みません」と述べ、「政策決定の場にいる女性を増やすとともに、女性が意思決定に実質的に参画し、政策形成に主体的に関わることが必要です」と続けた。
自党については「現在、国会議員は女性20人、男性19人と、パリテ(男女同数)を実現しています」とし、全国から「女性ゼロ議会」をなくす取り組みを強化するとした。さらに、男女共同参画の担当部署だけの課題にせず、経済、雇用、社会保障、教育、子育て、介護、防災、地域づくり、外交・安全保障といった全分野を平等の視点から点検する「ジェンダー主流化」を進めると表明。「117位という結果を、もう『仕方がない』で済ませることはできません」と結んだ。
閣僚2人、衆院議員68人という現状
首相官邸が公表した閣僚名簿(10月15日現在)によると、9月17日に発足した第2次高市改造内閣で女性の国務大臣は、留任した片山さつき財務相と小野田紀美経済安全保障担当相の2人である。内閣総理大臣の高市早苗氏を加えれば3人になる。10月15日に農林水産相が簗和生氏から武部新氏に代わったが、女性閣僚の数は変わっていない。
国会側の数字も動いていない。衆議院が公表する会派別所属議員数(令和8年9月28日現在)では、定数465(欠員1)のうち女性は68人で、定数に対する割合は14.6%となる。立憲民主党のコメントが挙げた数字と一致する。会派別では、自由民主党・無所属の会が315人中39人、中道が47人中8人、日本維新の会が36人中1人、国民民主党・無所属クラブが28人中8人、参政党が15人中8人、チームみらいが11人中2人、日本共産党が4人中2人となっている。
政治分野の遅れは国政に限らない。内閣府男女共同参画局が2026年7月に作成したマップでは、全国の自治会長23万9459人のうち女性は1万8629人の7.8%で、政府が3つの男女共同参画基本計画に掲げ続けてきた10%の目標に届いていない(自治会長の女性は7.8% 23万9459人中1万8629人 政府の「10%」目標は2度先送りされ2030年度に 大阪19.8%、群馬1.3%で15倍の差)。
差が残るのは「決める立場」 人口が減る国で見過ごせない損失
今回の結果で目を引くのは、政治の議論が集まる一方で、順位を下げたのが経済だった点だ。立憲民主党のコメントは政治分野と選択的夫婦別姓を前面に出したが、報告書の数字が示す日本の弱点は、管理職の女性が14.4%、推計所得が男性の約6割という、企業の中の意思決定とお金の差でもある。
働き手が減っていく日本にとって、働く女性の数がほぼ追いついているのに、管理職や所得の段階で力が生かされていないのは、国全体の稼ぐ力にとっての損失である。この差は理念の問題にとどまらず、経済の底力に直結する。政治の場の女性を増やすことと並んで、企業の中で女性が昇進し、能力に見合った所得を得られるかどうかが、順位以上に日本の国益を左右する。
コメントが名指しした「選択的夫婦別姓」は、結婚するときに夫婦が同じ姓を名乗るか、それぞれの姓のままでいるかを選べるようにする制度だ。現行の民法は夫婦同姓を定めており、制度を変えるには法改正が要り、まだ実現していない。
ジェンダー・ギャップ指数は毎年公表される。女性首相の効果が首脳の指標にゆっくりとしか表れない以上、次回の順位を左右するのは、閣僚と国会議員の構成、そして経済分野の管理職と所得の差がどれだけ縮むかである。
