日本銀行は9月15日、日本とマレーシアが第三次の二国間通貨スワップ契約に署名したと発表した。交換の上限額は60億米ドル相当で、2020年に結んだ第二次契約の30億米ドルから倍に広がる。契約は9月18日に発効する。
署名は日銀とマレーシア中央銀行
署名を交わしたのは、日本国財務大臣の代理人である日本銀行と、マレーシア中央銀行(バンク・ネガラ・マレーシア)だ。日銀の発表によると、この契約は両国の当局が互いに米ドルと自国通貨を交換できるようにするもので、これに加えてマレーシア側は日本円と自国通貨リンギットを交換することもできる。財務省がまとめた一覧では、日本からマレーシアへ、マレーシアから日本へ、どちらの方向も上限は60億ドル相当と記されている。
日銀は、この契約が「両国間における更なる金融協力の深化に資するとともに、アジア域内の金融安定に貢献する」ことで両国が合意したと説明している。
第二次契約は2020年9月18日の署名で、上限は30億米ドルだった。2023年9月には金額を据え置いたまま更新している。6年間動かなかった枠が、今回2倍に広がる。
外貨不足に備える「引き出せる枠」
二国間通貨スワップは、相手国がドルなどの外貨を手当てしにくくなったときに、あらかじめ決めた上限まで自国通貨と引き換えに融通し合う取り決めである。輸入代金や対外債務の支払いに必要な外貨が細ったときの備えにあたる。
契約を結んだ時点で資金が動くわけではない。財務省の一覧は、米ドルとリンギットの交換は「馬要請時」、米ドルと日本円の交換は「日本要請時」と、どちらの求めで発動するかを通貨の組み合わせごとに書き分けている。使うかどうかは必要が生じたときに決まり、平時は枠が用意されているだけとなる。
上限額はインドが最大の750億ドル
財務省が9月15日時点でまとめた一覧によると、日本がアジアで二国間通貨スワップを結んでいる相手はインド、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、マレーシア、韓国の7か国だ。
上限額はインドの750億ドルが最も大きい。次いでインドネシアが227億6000万ドル相当で、これは日本からインドネシアへ融通する一方向のみの契約となっている。フィリピンは日本から120億ドル、フィリピンから日本へは5億ドル。韓国は双方向で100億ドルとなっている。マレーシアの60億ドルは5番目の規模で、いずれも双方向30億ドルのシンガポールとタイを上回る。
起点は1997年のアジア通貨危機
こうした取り決めの出発点は、1997年のアジア通貨危機だ。財務省によると、危機の経験を踏まえて2000年5月にタイ・チェンマイで開いた会議で二国間の通貨スワップ網「チェンマイ・イニシアティブ」が合意され、2010年3月にはこれを一本の多国間契約にまとめた「CMIM」(チェンマイ・イニシアティブのマルチ化)が発効した。CMIMの資金規模は総額2400億ドルで、2014年に1200億ドルから倍に引き上げられている。2024年5月には、自然災害や感染症の流行など外からの衝撃に対応する緊急融資の枠組みも加わった。日本が個別に結ぶ二国間契約は、この地域全体の仕組みを補う二層目として残されている。
日本とマレーシアの間では、エネルギー分野でも同様の備えが固まったばかりだ。経済産業省が9月14日に公表した「LNG産消会議2026」の結果によると、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とマレーシア国営石油会社のペトロナスLNG社が、緊急時に日本へのLNG(液化天然ガス)供給を確保する連携枠組みで合意している。金融とエネルギーの両面で、平時は使わない枠をあらかじめ持ち合う取り決めが、今月に入って相次いで整った。
