デジタル庁は9月10日、大学の学園祭での年齢確認にマイナンバーカードを活用する取り組みを進めていると公表した。酒類を出す学園祭で20歳未満への提供を防ぐためで、同庁が配布する「マイナンバーカード対面確認アプリ」でカードのICチップを読み取る。12日から13日にかけて開かれる東京都市大学「横浜祭」を皮切りに、11月までに計5大学で実施する。

学生スタッフに見えるのは「20歳以上」かどうかだけ

手順は三段階である。来場者が実物のマイナンバーカード、またはiPhoneに追加した「iPhoneのマイナンバーカード」を学生スタッフに示す。スタッフがアプリで読み取り、20歳以上であることを確認する。確認が済めばリストバンドを受け取るなど、各学園祭の決めた方法で酒類を買えるようになる。

注目されるのは、アプリが画面に出す情報を絞り込んでいる点だ。デジタル庁によると、確認するのは「20歳以上か20歳未満か」のみで、氏名や住所といった年齢確認に不要な個人情報は表示されない。実年齢すら学生スタッフには渡らない仕組みになっている。暗証番号の入力も必要ない。

必要な項目だけを相手に示すこの考え方は「選択的開示」と呼ばれ、同庁が公的証明書のデジタル化で検討を進める仕組みにも共通する(住民票の写しをスマホの「ウォレット」へ デジタル庁が発行・検証の技術要件を検討 委員11人、取りまとめは2027年2月)。

免許証や学生証を目視で確かめる従来のやり方では、生年月日と同時に氏名や住所まで相手に見えてしまう。見せる側の抵抗感は小さくなく、確認する側も相手の顔と書類を見比べる手間を負っていた。読み取り結果を「はい・いいえ」の一つに切り詰めたことで、双方の負担を同時に減らす狙いがある。

目視では防ぎにくい偽造・なりすましへの対策

もう一つの狙いが、偽造された本人確認書類によるなりすましを防ぐことだ。実物のカードを使う場合、アプリはICチップを読み取って券面の情報と照合する。券面を眺めるだけの確認と比べ、作り替えられた書類を見抜きやすくなるとしている。

年齢確認は本来、20歳未満の飲酒を禁じる法令上の要請に応えるための手続きである。学園祭は未成年の学生と成人の来場者が入り混じる場で、運営を担うのは実務経験の乏しい学生だ。確実さと手早さの両立が難しい現場に、公的な本人確認の仕組みを持ち込んだ形になる。

5大学で11月まで、iPhoneのみに限る会場も

実施予定は、12日から13日の東京都市大学「横浜祭」、19日から20日の長岡技術科学大学「技大祭」、10月24日の信州大学工学部キャンパス「光芒祭」、11月7日の信州大学伊那キャンパス「落葉松祭」、11月20日から23日の京都大学「11月祭」の5大学6日程。ただし一部の大学は、確認の対象を「iPhoneのマイナンバーカード」に限定している。

iPhoneのマイナンバーカードは、Appleウォレットにカードを追加して使う機能で、マイナ保険証としての受診やコンビニでの証明書取得にも使える。スマートフォンだけで年齢確認を済ませられるため、デジタル庁は来場前の追加を呼びかけている。Android端末については、同庁は2026年10月20日に「Androidのマイナンバーカード」2026年10月20日に開始予定 デジタル庁が発表 本人確認と年齢確認ができる「属性証明機能」を追加と発表しており、対面での本人確認・年齢確認に使える属性証明機能が加わる予定だ。

マイナンバーカードは行政手続きでの利用が中心だったが、同庁は民間の現場での活用も広げようとしている。オンラインでの本人確認については、マイナンバーカードで本人確認、民間1355社に 1年前は813社 増えた542社のうち295社は銀行・農協など デジタル庁のとおり、導入する事業者が1年で1.6倍に増えている。学園祭という小さな場での実践は、酒類を扱う店舗やイベントなど、日常的に年齢確認が必要な場面へ広げられるかを測る試みでもある。