国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は11日、5年ぶりとなる「第17回出生動向基本調査」の結果の概要を公表した。18〜34歳の未婚者で「いずれ結婚するつもり」と答えたのは男性75.1%、女性77.8%にとどまり、男女とも8割を下回った。夫婦が持つつもりでいる子どもの数は1.95人で、1977年の第7回調査以降で初めて2人を割った。子どもが2人いる夫婦の割合も、同じく1977年以降で初めて5割を下回った。
結婚意思が男女とも8割を切る
前回の2021年調査では男性81.4%、女性84.3%が「いずれ結婚するつもり」と答えていた。今回は男性が81.4%から75.1%へ、女性が84.3%から77.8%へ下がり、そろって8割を下回った。「一生結婚するつもりはない」と答えた未婚男女は2割を超えた。
ただし社人研は、「一生結婚するつもりはない」と答えた人のうち4割程度が「いずれ結婚するつもり」に変わる可能性があると回答した点も示している。結婚を完全に捨てたわけではなく、当面は考えないという層が厚くなっている構図だ。
結婚に利点があると考える割合も落ちた。男性は6割台から5割台へ、女性は7割から6割台へ下がった。項目別では「子どもや家族をもてる」「精神的な安らぎ」「経済的な余裕」が減り、「愛情を感じる人と暮らせる」だけが増えている。結婚を、暮らしの基盤づくりよりも情緒的な結びつきとして捉える見方が相対的に強まった形である。
交際の実態も細っている。恋人がいる未婚者は男性19.6%、女性27.8%で、未婚者の3人に1人は交際そのものを望んでいなかった。
予定子ども数が初めて2人を割る
夫婦調査では、持つつもりの子どもの数を指す「予定子ども数」が1.95人(前回2.01人)となり、1977年の第7回調査以降で初めて2人を下回った。理想とする子ども数も2.18人(同2.25人)に下がった。予定子ども数が1人にとどまる夫婦が増えている。
理想と予定の差は0.24人だった。社人研はこの差が2000年代半ば以降ゆるやかに縮まっていると説明している。ただし今回は理想の数そのものが2.25人から2.18人へ下がっており、差が縮んだのは「望みがかなうようになった」からではなく、望む数が実際に持てる数のほうへ寄ったためである。結婚してからの年数ごとに見ると、どの層でも理想・予定の両方が下がり、結婚して0〜4年の夫婦では理想とする子どもの数までが2人を下回った。
理想の数の子どもを持たない理由として増えたのは「子育てにお金がかかりすぎる」と「育児の心理的・肉体的な負担」だった。未婚者が希望する子どもの数も男性1.64人(同1.83人)、女性1.70人(同1.79人)と下がり続けている。
子ども全体の数が減るのに合わせて、親と暮らせない子どもの数も減っている(里親などに預けられた子ども8499人、代替養育の26.3% 10年前の16.5%から上昇 登録1万8038世帯のうち実際に預かっているのは5411世帯)。
子ども2人の夫婦が48.7%、1977年以降で初の5割割れ
今回の調査でもう一つ記録が変わったのは、夫婦が最終的に持った子どもの数の内訳である。
結婚してから15〜19年たった夫婦をみると、子どもが2人いる割合は48.7%で、1977年の第7回調査以降で初めて5割を下回った。一方で子どもが1人の夫婦は20.4%まで増え、子どもがいない夫婦も前回から増えて9.6%となった。子どもが1人の夫婦の割合は2005年の第13回調査から増え続けている。「夫婦と子ども2人」という家族の形が、結婚して15年以上たった夫婦の過半数ではなくなった。
この層が最終的に持った子どもの数は平均1.86人(前回1.90人)で、最低を更新した。2002年の第12回調査までは2.2人前後で安定していた数字である。
もう一つの見方として、妻の年齢が45〜49歳の夫婦(45歳を過ぎるとほとんど出産がないため、最終的な数とみなせる層)をみると、平均1.81人で前回と同じだった。この層でも子どもが1人の夫婦は21.2%に増え、子どもがいない夫婦は10.4%だった。
2人目へ進む夫婦が減っている
なぜ平均が下がるのかを、社人研は「パリティ拡大比」という指標で示している。すでにn人産んだ人のうち、次の1人を産んだ人がどれだけいたかを表す割合で、妻の年齢が45〜49歳の夫婦で計算している。
- 結婚(子ども0人)から1人目へ … 0.90。2002年の第12回調査までは0.97前後で、その後下がったが、2015年の第15回調査以降は横ばい
- 1人目から2人目へ … 0.76。2005年の第13回調査までは0.90前後だったが、その後はっきり下がった
- 2人目から3人目へ … 2015年の第15回調査以降、低下
言い換えると、子どもを1人持った夫婦のうち2人目を持ったのは4組に3組ほどにとどまる。かつては10組のうち9組が2人目に進んでいた。1人も産まない夫婦が増えたことよりも、1人で止まる夫婦が増えたことが、平均を押し下げている。実際に3組に1組の夫婦が結婚時に予定していた子ども数を実現できておらず、妻の初婚年齢が30歳以上だと、この割合は半数に上る。
出会いはアプリが2割、出産後も8割が働き続ける
一方、結婚と子育ての形は大きく変わった。マッチングアプリなどで知り合った夫婦は20.2%で、前回の11.0%からほぼ倍増した。職場や友人の紹介を介した結婚は減っている。
第1子の出産前後に仕事を続けた妻の割合は、2015〜19年に出産した層の69.9%から、2020〜24年に出産した層では80.5%へ伸びた。就業を続けた人の82.4%が育児休業を利用しており、5年前の79.7%から上積みされた。2020年以降に子育てをしている夫婦では、日常的に育児をする夫が5割を超えた。
3つの「子ども数」を分けて読む
出生動向基本調査は、社人研がおおむね5年ごとに実施している統計法上の一般統計調査だ。第17回は2025年6月30日現在の事実を調べ、対象は18歳以上55歳未満の独身者と、妻の年齢が55歳未満の夫婦(回答者は妻)である。独身者を対象とする「独身者調査」と、夫婦を対象とする「夫婦調査」の2本立てで、有効回答は独身者調査6756票(有効回収率42.7%)、夫婦調査5024票(同47.9%)だった。前回の第16回は2020年に予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、2021年6月の実施となっている。
数字を読むときは、次の3つを分けて見る必要がある。
- 理想子ども数(2.18人・前回2.25人) … 理想的な家庭の子どもの数。願望に近い
- 予定子ども数(1.95人・前回2.01人) … 実際に持つつもりの数。制約が反映される
- 完結出生児数(1.86人・前回1.90人) … 結婚から15〜19年たった夫婦が実際に持った数
理想と予定の差が広がっていれば、望んでいるのに持てていない人が増えていることを意味する。今回はいずれの数字も前回から下がっており、願望そのものと、実際に持てる数の両方が縮んでいる。完結出生児数には、集計対象の取り方が第16回調査から変わっている点に注意が必要だ。結婚して15〜19年の夫婦のうち、第15回調査までは妻が50歳未満の夫婦を集計していたが、第16回調査からは55歳未満に広げた。妻が30歳代で結婚した夫婦を取りこぼさないための変更で、50歳未満に限ると子どもの少ない層が落ちて平均が高めに出る。
この調査が重く扱われるのは、社人研が将来推計人口を作る機関であり、結婚や出産に関する人々の意向がその前提となる仮定値の根拠になるためだ。結婚する意思と、持つつもりの子ども数がそろって下がった今回の結果は、出生数の見通しを下押しする材料になる。出生数の減少は、分母である総人口を縮めることで高齢化率の上昇にもつながる。社人研の推計を踏まえた長期の姿は高齢化率29.4%で過去最高 令和8年版高齢社会白書、2070年には「2.6人に1人」が65歳以上にまとめている。
出生数そのものの動きは別の統計で追える。厚生労働省が2026年9月30日に公表した2025年の人口動態統計(確定数)によると、出生数は67万1270人で過去最少、合計特殊出生率は1.14で過去最低だった(2025年の出生数は67万1270人で過去最少)。今回の調査は、その背景にある結婚と出産の意識を5年ごとに測るものにあたる。
意思ではなく実際の配偶関係は、国勢調査が5年ごとに全数で数えている。令和7年調査では15歳以上の未婚率が31.2%に上がった(15歳以上の未婚率は31.2% 2020年の29.6%から上昇 男性36.3%・女性26.4% 有配偶は286万人減って53.3%に 令和7年国勢調査)。仕事と子育ての両立をめぐる状況は、こども白書でも数字が示されている(男性の育休取得率は40.5% 取らなかった理由の最多は「会社に制度がなかったから」29.1%)。
