厚生労働省が7月7日に発表した5月分の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価の変動を考慮した「実質賃金」が前年の同じ月に比べて1.4%増え、5か月連続のプラスとなった。賃上げの動きが、賃金全体に波及している。
「実質賃金」がプラスを続ける
「実質賃金」とは、実際に受け取る賃金(名目賃金)から、物価の上昇分を差し引いた指標だ。たとえ給料の額面が増えても、それ以上に物価が上がれば、実際に買えるモノやサービスは減ってしまう。この「暮らし向きの実感」に近いのが実質賃金で、その増減は生活のゆとりを左右する。
日本ではここ数年、物価高に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金がマイナスになる状態が長く続いていた。今回、5か月連続でプラスを保ったことは、その流れが変わりつつあることを示している。
給与総額は31万円、34年ぶりの伸び
賃金の実額も伸びている。基本給や残業代、ボーナスなどを合わせた1人あたりの現金給与総額は、5月は31万1165円で、前年同月より3.2%増えた。3%以上の増加は4か月連続で、これは1992年3月以来、およそ34年2か月ぶりの長さだ。
このうち、基本給にあたる「所定内給与」は3.0%増の27万5942円だった。背景には、2026年の春闘(春の賃上げ交渉)での高い賃上げや、2025年に引き上げられた最低賃金の効果が、幅広い企業に及んできたことがある。
家計の実感と今後
もっとも、物価の上昇そのものは続いている。5月の消費者物価(持ち家の家賃を除く)は前年同月比1.7%上昇し、4月の1.5%から伸びが拡大した。賃上げが一巡した後も、物価を上回る賃金の伸びを保てるかが焦点となる。
とりわけ、賃上げの余力が大企業に比べて乏しい中小企業に、どこまで波及するかが課題だ。実質賃金のプラスが定着すれば、消費の底上げにもつながると期待される。今後の統計で、この流れが続くかどうかが注目される。