警察庁は9月15日、今年夏の山岳遭難と水難の概況を公表した。統計でいう「夏期」は7月と8月の2か月間を指す。山岳遭難は発生763件・遭難者839人で、前年より45件・78人減った。水難は発生436件・水難者535人で、件数は10件減ったものの、人数は前年と同じだった。死者・行方不明者は山岳遭難が52人、水難が226人で、合わせて278人だった。数値はいずれも速報値で、確定値で動く可能性がある。

目を引くのは、事故に遭った人がそのまま命を落とす割合の差だ。山岳遭難は839人のうち死者・行方不明者が52人で6.2%にとどまったのに対し、水難は535人のうち226人で42.2%にのぼった。山では遭難しても大半が救出されるのに対し、水辺では被災した4割超が助からない。救助が届く前に短時間で決着してしまう水の事故の性質が、そのまま数字に出ている。

山は「転ぶ・迷う・滑り落ちる」で6割

遭難者839人を目的別にみると、登山が686人と8割を超え、次いでハイキングが31人だった。行楽目的の軽装の行動ではなく、登山そのものが遭難の大半を占める構図は例年と変わらない。

態様別では転倒が193人で最も多く、道迷い166人、滑落131人と続いた。この三つで490人となり、遭難者全体の6割近くを占める。前年と比べると転倒は216人から23人減ったが、滑落だけは126人から131人へ増えた。滑落は転倒や道迷いに比べて致命傷につながりやすく、減少基調の中で唯一増えた点は注意がいる。

発生件数を都道府県別にみると、長野県が129件で突出し、静岡県71件、富山県65件が続いた。北アルプス、富士山、立山連峰といった標高の高い山域を抱える県に集中している。

年齢層別では60歳代が183人で最も多く、50歳代168人、70歳代167人の順だった。60歳以上を合わせると384人で、遭難者全体の45.8%を占める。一方、全体が8.5%減る中で、20歳未満だけは49人から57人へ16.3%増えた。中高年に偏っていた山岳遭難に、若年層の増加という別の動きが重なっている。

水難は海で291人 水泳中が38.8%増

水難者535人を場所別にみると、海が291人で最も多く、河川177人、湖沼池41人と続いた。死者・行方不明者226人でも海114人、河川83人の順で、海は前年と同数、河川は94人から11人減った。

行為別では水遊びが122人で最多、水泳93人、魚とり・釣り80人が続いた。このうち水遊びは前年より15人減り、魚とり・釣りも16人減ったが、水泳だけは67人から93人へ26人、率にして38.8%増えた。全体の人数が前年と同じだった中で、水泳中の被災だけが押し上がった形になる。

死者・行方不明者226人を年齢層別にみると、65歳以上が108人で47.79%と半数近くを占めた。高校卒業に相当する年齢以上65歳未満は79人だった。発生件数の都道府県別では静岡県が32件で最も多く、沖縄県28件、東京都と岐阜県が各26件で続いた。

子どもの死者・不明は11人 最も多いのは「水遊び」

中学生以下だけを取り出すと、発生54件、水難者101人、死者・行方不明者11人だった。前年と比べ件数は7件(11.5%)、死者・行方不明者は4人(26.7%)減っている。過去5年でみると令和4年の9人に次いで少ない水準にあたる。

11人の内訳は、場所別が海7人、河川4人。行為別では水遊びが6人で最も多かった。大人では釣りや水泳といった目的を持った行動が目立つのに対し、子どもは水際で遊んでいる場面がそのまま事故になっている。

警察庁が挙げた原因と備え

警察庁は山岳遭難について、その多くが天候に関する不適切な判断や、不十分な装備で体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足によって起きていると指摘した。そのうえで、体力や技術、体調に見合った山を選び休憩を確保した日程を組むこと、危険箇所と途中で下山できるエスケープルートを事前に把握すること、雨具やツェルト、地図とコンパス、予備バッテリーを含む連絡用通信機器をそろえることを挙げている。

登山計画書・登山届についても、家族や職場と共有しておけば万一の際の捜索救助の手掛かりになると説明し、登山口の提出ポストのほかインターネットや登山地図アプリを通じて都道府県警察や自治体へ出すよう求めた。GPS機能付きの携帯電話は現在地を救援機関へ速やかに伝えられる一方、多くの山岳で通話エリアが限られることやバッテリー残量に注意が必要だとしている。単独登山はトラブル発生時の対処が難しくなるとして、複数人での行動に努めるよう呼びかけた。