米連邦最高裁は6月30日、米国で生まれた子に自動的に市民権を与える「出生地主義」を制限しようとしたトランプ大統領の大統領令について、憲法に違反すると判断した。6対3の判決で、不法滞在者らの子も、出生により市民権を得られるとした。
「出生地主義」とは
出生地主義は、親の国籍や在留資格に関係なく、その国で生まれた子に市民権(国籍)を与える考え方だ。米国では、憲法修正第14条が「米国で生まれ、その管轄に服する者」は市民だと定めており、これに基づいて長く採用されてきた。日本など多くの国が採る「血統主義」(親の国籍を受け継ぐ)とは異なる仕組みだ。
連邦法(合衆国法典8編1401条)も、ほぼ同じ文言で市民権を定めている。
大統領令をめぐる経緯
トランプ大統領は2025年、不法滞在者や一時的な滞在者の子には市民権を認めない内容の大統領令に署名した。厳格な移民政策の柱の一つだったが、各地の下級裁判所が相次いで差し止めを命じ、争いが最高裁に持ち込まれていた。
争点は、憲法と連邦法にある「その管轄に服する(subject to the jurisdiction)」という言葉の解釈だった。政府側は、不法・一時滞在者の子は親の忠誠が他国にあるため「管轄に服する」に当たらない、と主張していた。
多数意見「出生地主義を定着させる意図」
ロバーツ長官が執筆した多数意見は、不法滞在や一時滞在の親のもとに米国で生まれた子も「管轄に服する」市民にあたるとした。修正14条の起草者は、出生による市民権を「恒久的に定着させる」意図だったと指摘。政府が唱えた「第一の忠誠」や「定住」を要件とする主張は「根拠が乏しい」として退けた。
反対意見「定住が要件」
一方、トーマス判事はゴーサッチ判事とともに、91ページに及ぶ反対意見を書いた。市民権条項はもともと解放奴隷を念頭に置いた措置で、「米国で生まれても、ここに定住していない親の子」には出生地主義は及ばない、と主張した。
カバノー判事は、大統領令は無効としつつ、違反するのは憲法ではなく連邦法(1401条)だとの立場を示した。そのうえで、議会が同条を改正すれば、修正14条に反せずに例外を設けることは可能だが、いまはそうしていない、と述べた。今回の判断は、トランプ政権が進めてきた移民政策に打撃となる。