世界気象機関(WMO)は9月17日、地球全体の水の状態をまとめた年次報告書「世界の水資源の現状2025」を公表した。2025年の河川の流量は、過去35年で最も乾いた部類に入った。世界の流域面積の36%で流量が平年を下回り、陸に蓄えられた水も、氷河の氷も減り続けている。WMOのセレステ・サウロ事務局長は「私たちは地球の貯蓄を取り崩している」と述べた。

この報告書は、川の流量だけでなく、地下水、蒸発散、陸に蓄えられた水の総量、雪と氷までを一つにまとめて評価するもので、WMOが2021年から毎年出している。各国の気象・水文機関が持ち寄る観測データと衛星データを組み合わせており、世界の水循環を年単位で通しで見られる数少ない資料である。

「平常」の川が戻ってこない

流量が平年並みだった流域は、2025年は全体の34〜38%だった。1991〜2020年の平均は46%で、平常の川は1割前後減った計算になる。しかもこれは単年の異変ではなく、1991年以降で「平常」の流域が最も少ない状態が7年続いている。

陸に蓄えられた水の総量も、2010年代半ばから減少が続く。サウロ事務局長は、2014〜2016年を境に10年にわたって同じ向きの信号が出ていると指摘した。地下水では、監視されている井戸の約3分の2で、水位が過去の正常な範囲から外れていた。雨が降ったときにだけ川が増える一方、地下や土壌に残る蓄えが薄くなっていく構図で、渇水が起きたときの「持ちこたえる力」が落ちることを意味する。

氷河は4年連続で全地域が減少

氷河は2022年から4年続けて、世界のすべての地域で氷が減った。2025年単年の損失は408(±132)ギガトンで、海面上昇に換算すると1.1(±0.4)ミリにあたる。2023年から2025年までの3年間の累計では約1400ギガトンに達する。

氷河は、夏に雪解け水を送り出して川の流れを支える「自然のダム」の役割を果たしている。ヒマラヤやアンデスのように下流の農業や飲み水を氷河に頼る地域では、当面は解けた分だけ水が増え、その後に急激に減るという二段階の変化が起きる。今の数字は、その前半にあたる。

被害はアジアとアフリカに集中

水に関わる極端な災害の負担は、地域によって大きく偏る。WMOによると、過去5年間に記録された水関連の極端現象の少なくとも半分、報告された死者の80%以上を、アジアとアフリカが占めた。

2025年の例では、ジャマイカがハリケーン「メリッサ」で国内総生産(GDP)の41%に相当する損害を受け、スリランカもサイクロン「ディトワ」でGDPの約4%を失った。南アジアと東南アジアでは、熱帯低気圧と激しいモンスーンにより、スリランカ、パキスタン、ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンで最大3600人の死者が報告された。

WMOは、水の量が「多すぎる」と「少なすぎる」の間で振れ幅を広げており、過去の実績をそのまま前提にした水利用の計画は成り立たなくなりつつあるとみる。サウロ事務局長は、各国が観測データを共有し、測り方の基準をそろえ、早期警戒の仕組みを共同で整える必要があると訴えた。日本にとっても、コメや小麦、飼料の輸入先である国々の水事情は食料価格を通じて跳ね返ってくるため、遠い話ではない。