東京都と気象庁は9月20日午後9時50分、東京都杉並区・中野区を流れる善福寺川に「レベル4氾濫危険警報」を発表した。松見橋水位観測所(杉並区)の水位が氾濫危険水位を超えたためで、氾濫が起きれば杉並区と中野区で浸水が想定される。台風25号の接近を翌21日に控えた前夜、その先触れの雨で都内の河川が先に危険な水位に達した形だ。
松見橋で氾濫危険水位を0.23メートル超過
洪水予報によると、松見橋水位観測所の水位は20日午後9時35分時点で2.24メートル。氾濫危険水位の2.01メートルを0.23メートル上回った。ただし川があふれ出す氾濫発生水位は3.55メートルで、そこまではまだ1.31メートルの余裕がある。午後10時30分までの予測水位は2.15メートルで、都は水位が横ばいから微減に向かうと見込んでいた。
下流側の白山前橋水位観測所(杉並区)は午後9時35分時点で1.96メートルで、氾濫危険水位の2.53メートルには届いていない。
水位を押し上げたのは、ごく短時間の強い雨だった。善福寺川流域の平均雨量は20日午後8時30分から午後9時30分までの1時間で20ミリ。気象庁のアメダスでは、東京(大手町)の21日午前0時までの24時間雨量は17.5ミリ、練馬は6.0ミリにとどまっており、都心の観測点だけを見れば大雨と呼ぶほどではない。
善福寺川は杉並区の善福寺池を源に、中野区で神田川に合流する全長10キロ程度の都市河川だ。流域が狭く、周囲がアスファルトやコンクリートで覆われているため、雨が地面にしみ込まずに一気に川へ流れ込む。同じ20ミリの雨でも、山地を抱える大きな川なら水位はほとんど動かないが、都市河川では短時間で危険水位まで届く。この日の数字は、その特性をそのまま示している。
避難所の開設を11時間前倒し
杉並区は当初、台風25号に備えて21日午前11時に避難所を開く計画だった。だが20日夜の雨を受けて予定を繰り上げ、午後11時10分に西荻地域区民センター(桃井4丁目3番2号)と松溪中学校(荻窪2丁目3番1号)の2か所を開設した。予定より11時間近く早い判断となる。
区は「大雨の中での避難は危険を伴う」として移動時の注意を促すとともに、すでに危険が迫っている場合は建物の上階へ移る「垂直避難」で身の安全を確保するよう呼びかけた。今後の気象状況によっては避難指示を出す可能性があるとしている。
気象庁が20日午後11時51分に発表した警報・注意報では、杉並区と中野区に大雨警報(浸水害)と洪水警報が出ている。目黒区、板橋区、西東京市にも大雨警報が発表された。
「レベル4氾濫危険警報」は避難指示の目安
レベル4氾濫危険警報は、災害の危険度を5段階で示す警戒レベルのうち、上から2番目にあたる情報だ。自治体が避難指示を出す目安とされる。洪水予報の主文も「流域の住民は、建物の二階に避難するなど浸水に警戒してください」「地下施設は水が流れ込むおそれがあります」と、具体的な行動を求める内容だった。
紛らわしいのが「氾濫危険水位」と「氾濫発生水位」の違いである。前者はいつ氾濫してもおかしくない段階に入ったことを示す水位で、実際に水があふれる水位ではない。松見橋の場合、両者には1.54メートルの開きがある。警報が出た時点で川が決壊しているわけではないが、避難にかかる時間を逆算すれば、この段階で動き出す必要があるという設計になっている。
21日は東京で24時間250ミリ、線状降水帯のおそれ
気象庁によると、大型で強い台風25号(ドゥージェン)は20日午後9時、日本の南にあって時速およそ10キロで北へ進んでいた。中心気圧970ヘクトパスカル、中心付近の最大風速35メートル、最大瞬間風速50メートルで、中心から半径130キロ以内が暴風域となっている。
進路予報では、21日午前9時に八丈島の西南西約180キロ、同日午後9時には千葉県勝浦市の東南東約80キロに達し、中心気圧は965ヘクトパスカルまで下がる見込みだ。22日午後9時には日本の東で温帯低気圧に変わると予想されている。
21日午前0時から22日午前0時までの24時間に予想される雨量は、多い所で東京地方250ミリ、伊豆諸島北部・南部でいずれも350ミリ。1時間雨量は東京地方60ミリ、伊豆諸島70ミリに達するおそれがある。気象庁は伊豆諸島と東京地方で21日昼前から夜遅くにかけて線状降水帯が発生し、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるとしている。
風は伊豆諸島南部で最大風速35メートル、最大瞬間風速50メートルの予想で、気象庁は「一部の電柱が倒壊したり、建物の一部が広範囲に飛散するおそれもある猛烈な風」と表現した。波の高さは伊豆諸島南部で9メートルに達する見込みだ。東京地方でも21日夜のはじめ頃から22日はじめにかけて非常に強い風が吹き、進路によっては暴風となる可能性がある。
20日夜の善福寺川の水位上昇は、台風本体が到達する前の段階で起きたものだ。21日の雨量予想は、この日の流域平均20ミリとは桁が違う。気象庁は東京地方について、21日夜遅くにかけて河川の増水や氾濫に厳重に警戒し、昼過ぎからは土砂災害にも厳重な警戒が必要だとしている。次の東京都気象解説情報は21日午前6時ごろに発表される予定だ。
