理化学研究所や京都大学iPS細胞研究所、大阪大学、徳島大学などの研究チームは7月3日、血液に含まれる遺伝子の働き方(発現)のデータから、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者と健康な人を見分ける手法を開発したと発表した。研究成果は、科学誌「Biology Methods and Protocols」に掲載された。

ALSは、体を動かす指令を筋肉に伝える神経(運動ニューロン)が徐々に働かなくなり、手足や呼吸などの筋肉が動かしにくくなっていく進行性の難病だ。有効な治療法は確立されておらず、国が指定する難病の一つになっている。現在は、症状の確認や神経の検査を重ね、似た症状を示す他の病気を一つずつ除外しながら診断するため、確定までに時間がかかることが課題とされてきた。

研究チームは、多数の血液サンプルに含まれる遺伝子発現のデータを、機械学習と呼ばれるAIの技術を使って解析した。その結果、「PRKAR1A」「QPCT」「TMEM71」という3つの遺伝子の働き方の組み合わせに注目すると、ALSの患者と健康な人を見分けられることを突き止めた。

見分ける精度は、AUCと呼ばれる指標の平均で0.83だった。AUCは1に近いほど正確に区別できることを示す値で、0.83は「精度が高い」と評価できる水準にあたる。別に集めた血液サンプルで試しても同じように見分けられ、結果を再現できたという。

チームはさらに、iPS細胞から作った運動神経の細胞を使い、3つのうち「PRKAR1A」という遺伝子の働きが低下すると、ALSの発症に関わるとされる「TDP-43」というたんぱく質が、細胞の核から外へ異常に移動する現象が起きることを確かめた。血液で見つかった遺伝子の変化が、実際の病気の仕組みとつながっている可能性を示すものだ。

ただし、今回はあくまで基礎研究の段階で、そのまま病院の検査に使えるわけではない。実用化には、さらに多くの患者での検証が必要になる。それでも、採血という体への負担が小さい方法でALSを早期に見分ける道や、新しい治療薬の標的を探る手がかりとして、研究チームは今後の発展に期待している。