厚生労働省は9月18日、令和6年度(2024年度)に都道府県などが病院に実施した立入検査の結果を公表した。医師数を調べた7618病院のうち、医療法が定める標準数に医師が届かなかったのは157病院だった。標準を満たした病院の割合(適合率)は97.9%で、前年度(7587病院中7427病院)と同じ水準が続いている。
病院に置くべき人数は法令で決まっている
立入検査は医療法25条1項に基づき、都道府県と保健所を設置する市、東京23区が原則として年1回、病院に立ち入って行う。人員がそろっているか、設備や管理が法令に合っているかを確かめ、合っていなければ指導して改善させる仕組みだ。
置くべき医師の数は医療法施行規則19条が定めている。入院患者と外来患者の数から「特定数」を計算し、52までは3人、それを超える分は16人ごとに1人を加える。精神病床と療養病床の入院患者は3人で1人分として数える。看護師・准看護師は一般病床と感染症病床の入院患者3人につき1人、療養・精神・結核の各病床は4人につき1人が標準になる。
検査は人員だけではない。管理、帳票・記録、業務委託、防火・防災体制、放射線管理を合わせた6分野が対象で、令和6年度は延べ62万1855項目を調べ、61万2352項目が適合した。全体の適合率は98.5%で、前年度の98.3%からわずかに上がった。
医師不足は北海道・東北と小規模病院に集中
医師数の適合率を地域別に見ると、全国平均97.9%に対して北海道・東北が94.8%で最も低い。1059病院のうち適合は1004病院で、標準に届かない55病院は全国で最も多かった。前年度の94.2%からは持ち直している。九州は1483病院中1454病院(98.0%)、関東は1590病院中1568病院(98.6%)、近畿は1220病院中1210病院(99.2%)だった。
規模の小さい病院ほど厳しい。病床数別の適合率は20〜49床が95.1%で最も低く、400〜499床は99.7%、500床以上は100%と、大きい病院ほど高い。標準に届かなかった157病院のうち83病院は99床以下に集中している。
標準の半分にも医師が足りない病院も8病院あった(前年度は11病院)。充足率が50〜60%未満は2病院、60〜70%未満は12病院、70〜80%未満は24病院となっている。看護師・准看護師の適合率は99.3%(7620病院中7570病院)で前年度の99.4%からほぼ横ばい、薬剤師は97.7%(7445病院)で前年度と同率だった。医師と看護師の両方が標準に届かない病院は9病院ある。
最も守られていないのは許可手続きとサイバー対策
小項目別で適合率が最も低かったのは「医療法許可事項の変更」で92.7%。7428病院を調べて6883病院しか適合せず、前年度の92.7%から改善していない。医療法7条2項は、病院が病床数や病床の種別などを変える場合に都道府県知事の許可を受けるよう義務づけており、その手続きが抜けている病院が1割近くあることになる。
2番目に低いのが「サイバーセキュリティの確保」の92.8%で、7126病院中6611病院が適合した。前年度の91.1%からは上がっており、改善の速さでは上位に入る。3番目は「職員の健康管理」の94.1%で、こちらも前年度の92.1%から伸びた。精神科病院だけを取り出すと、サイバーセキュリティの確保が1104病院中1007病院の91.2%で最下位となる(前年度89.5%)。
特定機能病院は88のうち53病院に指摘
厚労省は同じ18日、令和7年度に地方厚生局が実施した特定機能病院への立入検査結果も公表した。特定機能病院は高度な医療の提供・開発・研修を担う病院として厚生労働大臣が承認したもので、大学病院の本院などが該当する(医療法4条の2)。
検査を受けた88病院のうち53病院に指摘があった。文書で「不適切な事項」を通知されたのは3病院・4件で、内訳は医療の安全管理体制の確保が2件、職員研修の実施が1件、事故等報告書の作成と登録分析機関への提出が1件。「検討を要する事項」は3病院・3件だった。口頭での指摘は50病院・115件にのぼり、最も多かったのは事故等報告書の作成・提出の30件、次いで医療の安全管理体制の確保が15件、院内感染対策と医薬品・医療機器の安全管理がそれぞれ11件と続く。
なお令和6年度の立入検査の実施率は、8073病院中7620病院の94.4%だった。令和2年度は32.1%まで落ち込み、3年度68.7%、4年度87.8%、5年度93.2%と回復してきている。厚労省は、指摘があった病院について翌年度の立入検査で改善状況を確認するとしている。
