令和8年秋の全国交通安全運動が、9月21日から30日までの10日間実施される。警察庁が9月10日に実施を公表した。最終日の9月30日は「交通事故死ゼロを目指す日」とされる。運動は内閣府、警察庁、総務省、国土交通省など10府省庁と、都道府県・市区町村、自動車安全運転センターや全日本交通安全協会などの関係団体が主催する。
全国重点は3点で、(1)〈歩行者〉歩行者の安全確保と反射材用品の着用促進、(2)〈自動車〉夕暮れ時の早めのライト点灯と飲酒運転や「ながらスマホ」の根絶、(3)〈自転車〉自転車・特定小型原動機付自転車の交通ルールの理解・遵守の徹底――となった。中央交通安全対策会議交通対策本部が7月1日に推進要綱を決定し、警察庁が7月7日付の通達で都道府県警察に実施を指示していた。
9月1日に変わったばかりの「生活道路は30キロ」
今回の運動が例年と違うのは、直前に道路交通法のルールが二つ変わっている点だ。
一つは、9月1日から始まった生活道路の法定速度の引き下げである。道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第248号)により、中央線や車両通行帯のない道路――警察庁が「生活道路」と呼ぶ、主に地域住民の日常生活に使われる道――の自動車の法定速度が、時速60キロから30キロに下がった。
注意が必要なのは対象の線引きだ。中央線や車両通行帯がある一般道路、中央分離帯などで往復方向が分けられている一般道路は対象外で、これまでどおり時速60キロのままとなる。また標識で速度が指定されている道路では、法定速度ではなく標識の指定速度が最高速度になる。つまり「住宅街はすべて30キロになった」わけではなく、中央線が引かれているかどうかが判断の目安になる。
警察庁は通達で、この改正を「国民生活に大きく関わるもの」と位置づけ、十分な広報啓発が必要だとしている。運動期間中は、通学路や子どもが集団で移動する経路での見守り活動の強化、生活道路の速度を物理的に抑える「ゾーン30プラス」の整備なども併せて進める。
自転車は4月から「青切符」 16歳以上が対象
もう一つは自転車のルールだ。2026年4月1日から、16歳以上による一定の交通違反に交通反則通告制度、いわゆる「青切符」が導入された。反則金を納めれば刑事手続きに進まずに処理が終わる仕組みで、これまで自動車やオートバイに適用されてきた制度が自転車にも広がった形になる。
同じ4月1日には、車道で自動車などが自転車のそばを通るときに側方の接触を防ぐ義務も施行されている(道路交通法の一部を改正する法律・令和6年法律第34号)。自転車側だけでなく、自転車を追い越す自動車の側にも新しい義務がかかっている。
警察庁は自転車の取り締まりについて、自転車指導啓発重点地区・路線を中心に「指導警告を行うことを原則とし、悪質・危険な交通違反に対しては検挙を行う」という考え方を示している。運動期間中にただちに青切符が乱発されるわけではなく、まず周知に重点を置く姿勢だ。
秋は「日の入り後1時間」に死者が集中
全国重点の根拠として、警察庁は事故の実態を挙げている。交通事故死者を状態別に見ると歩行中の割合が最も高く、そのうち高齢者が約7割を占める。歩行中に亡くなった人の半数以上には、横断歩道以外の場所での横断や信号無視といった法令違反が認められるという。歩行中の児童の死者・重傷者は、約4割が登下校中に集中している。
秋に運動を置く理由は日照時間にある。通達は、日の入り時刻が急激に早まる秋口以降は夕暮れ時から夜間にかけて重大事故が多発し、特に日の入り後1時間の死者が多いと指摘する。昼間と比べ、歩行者が横断中に死亡する事故が多いことも特徴に挙げた。反射材用品や明るい色の衣服の着用、前照灯の早めの点灯とハイビームの活用を呼びかけるのは、この時間帯の事故を減らすためだ。
このほか、飲酒運転による死亡・重傷事故は令和5年以降、年間400件を超えて下げ止まっている。スマートフォンなどを使いながら運転する「ながらスマホ」が要因の死亡・重傷事故は令和2年以降、年々増えている。75歳以上の運転者による死亡事故は、免許保有人口当たりで75歳未満の約2倍発生しているという。
自転車では、乗用中の死者の約8割に法令違反が認められ、年齢別では65歳以上が多くを占める。死者の約半数は頭部に致命傷を負っており、ヘルメット非着用時の致死率は着用時より高い。自転車と歩行者の衝突事故は増加傾向にあり、その約6割が歩道または横断歩道上で起きている。電動キックボードなどの特定小型原動機付自転車については、全事故に占める飲酒事故の割合が著しく高く、歩行者との事故の割合が自転車対歩行者の約3倍に上ることが挙げられた。
