消費者庁の「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」(座長・山本隆司東京大大学院教授)は9月10日、中間取りまとめを公表した。柱の一つが、キャンセル料や違約金といった「解約料」をめぐる立証責任の見直しで、高すぎるかどうかを証明する役割を、請求された消費者から請求した事業者の側へ移す案を示した。消費者庁は9月16日から、この中間取りまとめへの意見を募集している。締め切りは10月31日午後11時59分。
今は請求された側が「高すぎる」と証明しなければならない
消費者契約法9条1項1号は、契約を解除したときに払う損害賠償や違約金を定めた条項について、同じ種類の契約を解除されたときに事業者に生じる「平均的な損害の額」を超える部分は無効だと定めている。1万円のキャンセル料でも、事業者に実際に生じる損害が3000円なら、超えた7000円分は払わなくてよい、という仕組みだ。
問題は、その「平均的な損害の額」を法廷で示す役割が、現在は消費者の側にあることだ。額を計算するには、事業者がどれだけ費用をかけ、解約された分をどれだけ他に振り向けられたかという内部の数字が要る。消費者はそれを持っていない。中間取りまとめは、令和4年の法改正時に国会が付けた附帯決議でも「『平均的な損害の額』に係る立証責任の転換を含め」検討するよう求められていたと指摘した。
二つの案 ともに事業者側へ
示されたのはA案とB案だ。A案は、9条1項1号の規律について事業者が立証責任を負うものとする。そのうえで、早割のように「安く買える代わりにキャンセル料が高い」タイプの解約料には、損害額とは別の物差しを用意する。同じ商品やサービスに複数の選択肢があり、そのうち最も解約料が安いもの(無料の場合を含む)が平均的な損害の額を超えていなければ、他の選択肢の解約料には損害額の基準を当てはめない、という考え方だ。ただし実際に消費者がその選択肢を選んだ実績があることと、選べるだけの情報が適切に示されていることが条件で、条件を満たすことの証明も事業者が負う。
B案は、支払った費用の穴埋めに当たる部分は従来どおり消費者が証明し、それ以外の部分は事業者が証明する、と役割を分ける。いずれの案も、複数の選択肢を切り分けられるか、事業者が解約料を適正に設定する動機を失わないかといった課題が残るとして、検討会は今後さらに詰めるとしている。
解約料の説明制度も広げる。現在の9条2項は、消費者から求められたときに算定根拠の概要を説明する「努力義務」にとどまる。中間取りまとめは、解約料の目的や機能、解約率までを説明の対象に含めることや、努力義務ではなく義務にできないかを検討課題に挙げた。
解約妨害の禁止や、契約者が亡くなったときの手順も
中間取りまとめは解約料以外にも、継続的な契約から抜ける際の「解約妨害」の禁止、契約の自動更新や内容変更の際の通知、契約者が亡くなった後の対応手順を事業者があらかじめ定めて周知する努力義務などを並べた。誰もが加齢やデジタル化の中で判断を誤りやすくなるという前提に立ち、事業者に消費者への「配慮」を求める規定を置くことも提案している。
解約料に関する消費生活相談は、直近10年間、年3万件を超える水準で推移している。消費者庁は2023年に「解約料の実態に関する研究会」(座長・丸山絵美子慶応大教授)を設け、事業者や業界団体13者から聞き取ったうえで、2024年12月に議論の整理をまとめていた。今回の中間取りまとめは、その実態調査を法改正の設計図に落とし込む段階にあたる。意見募集の結果を踏まえ、検討会が最終的な取りまとめに進む。
