高市早苗首相は9月17日、第2次改造内閣の発足にあたって開いた記者会見で、エネルギー政策の新たな総合パッケージ「パワーGX戦略」を年末までに取りまとめるよう、留任した赤澤亮正経済産業相にすでに指示したと明らかにした。「次の国会への法律案の提出を含めて、実行に移すことができる取組から速やかに着手していく」と述べた。

赤澤氏はGX(グリーントランスフォーメーション)実行推進担当相を兼ねる。首相は留任の理由について「こうした取組を強力に進めるためにも、これまでGX実行推進担当大臣を務めてきた赤澤大臣を再任した」と説明した。今回の改造で赤澤氏には、新設の「AX(AI・トランスフォーメーション)社会実装担当」も兼務させている。

「二つの強靱化」をまとめてパワーGXと呼ぶ

パワーGXは、8月26日に開かれた第17回GX実行会議で方向性が決まった。正式には「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ」で、英語名の頭文字(Policy Package for Wide Energy and Resources Resilience through GX)をとった呼び名だ。

会議資料は、中身を二つの「強靱化」に整理している。一つは、化石燃料の調達先と輸送経路を広げて調達の安定性を高めること。もう一つは、原子力や国産の再生可能エネルギーを増やしてエネルギー自給率を上げること。そのうえで、アジアや中東の国々と組んで世界全体の需給構造を強くする取り組みを加えた。

首相は会見で、8月の会議で決めた内容として、原油やナフサの調達先を広げる事業者への支援の仕組み、石油関連製品の供給体制の強化、「安全性を大前提とした原子力の最大限の活用」によるエネルギー価格の抑制、ペロブスカイト太陽電池と次世代地熱発電、化石燃料に代わる燃料の開発加速、同じ価値観を持つ国との連携枠組み「パワー・アジア」を挙げた。

中東依存度は石油危機前より高い95.9%

なぜ今なのか。会議資料が示す数字がその答えになっている。

日本の原油輸入に占める中東の割合は、2024年度で95.9%。第1次石油危機前の1972年度は80.7%、第2次石油危機前の1978年度は77.9%で、1987年度には67.9%まで下がっていた。それが東日本大震災後の2013年度に83.6%へ戻り、さらに上がった形だ。

原油の輸入量そのものは減っている。1972年度の2億4700万キロリットルに対し、2024年度は1億3600万キロリットル。エネルギー供給に石油が占める割合も74.1%から34.5%へ下がった。石油への依存は半分以下になったが、その石油をどこから買うかという点では、石油危機の当時よりも中東に頼っている。

資料は、日本が調達先にしてきたアジアの産油国が経済成長で国内需要を増やして輸出余力を落としたこと、ロシアによるウクライナ侵略で選択肢が狭まったことを理由に挙げた。そのうえで、ホルムズ海峡をめぐる今回の中東情勢の混乱で、原油だけでなくナフサなど石油製品にも供給の偏りと目詰まりが生じたとし、「エネルギーや石油関連製品は、自由に取引される商品から、外交手段としてより戦略的に利用される物資へと変化」したと指摘している。

原子力は2040年代に2〜5基の建て替えを想定

具体策として並ぶのは、実務的な項目だ。調達面では、原油の安定的な輸送確保に関する「多角化指針」の策定、輸送コストの差に着目した支援、ホルムズ海峡を通らない経路を増やすための代替パイプライン建設の支援、ナフサ利用分を前提にした国家備蓄などが挙がる。

供給面では、原子力について「今後の建替え見通し」として2040年代に2〜5基、2050年代に11〜14基という数字を置き、次世代革新炉の社会実装に向けた研究開発と投資判断を促す措置の具体化、使用済み燃料の最終処分などバックエンドの取り組み加速、規制体制の充実を掲げた。再生可能エネルギーでは、ペロブスカイト太陽電池、次世代型地熱、洋上風力を国内産業の基盤づくりの対象とした。

AIの普及で電力需要が増えることも織り込んでいる。データセンターの省エネ半導体や高効率AIサーバーへの転換、天然ガス火力の供給力向上とCCS(二酸化炭素回収貯留)の事業環境整備、タービンの供給能力倍増、送電網と大規模電源の整備を並べた。

「日本成長戦略」の戦略分野の一つ

首相は会見で、「資源・エネルギー安全保障・GX」が「日本成長戦略」の戦略分野の一つだと述べ、「官民連携の下で、民間の国内投資を引き出して、国内外の需要創出までの一貫した支援を行う」と語った。同じ日に閣議決定された内閣の基本方針でも、日本成長戦略の17の戦略分野を中心とした危機管理投資・成長投資を進めるとしている。

エネルギー政策を「環境対策」としてではなく、投資を呼び込んで成長率を上げる産業政策として位置づけ直したうえで、その前提に調達の安全保障を置く。パワーGXという呼び名が示しているのは、その組み替えである。年末までに戦略がまとまれば、次の臨時国会に出る法案の中身が見えてくる。