国民生活センターは9月16日、住宅の分電盤やブレーカーの点検を口実に高額な交換工事を契約させる「点検商法」について、相談が各地に広がっているとして注意を呼びかけた。全国の消費生活センターなどに寄せられた相談は2025年度が6,545件で、前年度の1,290件から約5倍に増えた。契約した人は70歳以上が8割を超え、契約金額の平均は約18万円だった。

3年前は年14件だった

同センターが全国の相談情報を集めるデータベース「PIO-NET(パイオネット)」に登録された件数は、2022年度が14件、2023年度が39件にとどまっていた。それが2024年度に1,290件へ跳ね上がり、2025年度は6,545件になった。2026年度も7月31日までの登録分で2,223件あり、前年の同じ時期の1,312件を上回るペースで続いている。

相談が寄せられた地域も変わった。2024年度は埼玉、千葉、東京、神奈川の南関東で目立っていたが、2025年度は北関東や九州北部を含む各地で急増した。特定の地域で通用した手口が、そのまま全国へ持ち込まれた格好になる。

契約した人の年代(2025年度、6,039件)は80歳代が2,609件で最も多く、全体の43.2%を占めた。次いで70歳代が1,722件(28.5%)、60歳代が665件(11.0%)、90歳以上が571件(9.5%)と続く。70歳以上を合わせると8割を超え、60歳未満は472件(7.8%)にとどまる。

契約金額は15万円以上20万円未満が1,515件と最も多く、全体の46.6%を占めた。20万円以上も659件(20.3%)あり、平均は約18万円になる。

「法律で15年」という説明にあたる法律は無い

同センターが公表した相談事例では、業者が実在する組織の名をかたる形が共通している。80歳代の男性は大手電力会社を名乗る業者の訪問を受け、「古いので交換が必要」と言われて約20万円の交換工事を契約した。1か月前に法定点検を受けて異常なしと言われたばかりだった。70歳代の女性には「市役所から依頼されてブレーカーの点検に行く」と電話があり、約12万円の契約に至っている。

別の70歳代の女性は、電話で「電力会社のものですが分電盤の点検に伺います」と告げられ、法定点検だろうと思って来訪を承諾した。点検後に「分電盤の耐用年数は法律で15年と決まっている。漏電したら大変なことになる」と言われ、約14万円で契約したという。

だが同センターは、住宅用分電盤の使用期限を定めた法律は無いと明確に否定している。交換が必要かどうかは機器の状態の問題で、年数で一律に決まるものではない。

分電盤は、電力会社から引き込んだ電気を各部屋のコンセントや照明に振り分け、漏電や電気の使いすぎがあれば自動で遮断する装置で、玄関や洗面所の壁の上部に取り付けられていることが多い。交換には電気工事士の資格が要る。

本物の法定点検は4年に1回、電話では知らせない

見分ける手がかりははっきりしている。電気事業法に基づく一般家庭の法定点検は無料で、4年に1回以上の頻度で行われる。経済産業省によると、点検の日時は事前に書面で案内され、電話で知らせることはない。点検するのは身分証明書を携帯した電力会社(一般送配電事業者)か、委託を受けた登録調査機関の調査員に限られる。そして点検後に、その場で交換工事の契約を持ち掛けることはない。

つまり「電話がかかってきた」「その場で契約を求められた」のどちらかに当てはまれば、法定点検ではないと判断できる。

同センターは、電話などで点検を持ち掛ける業者に安易に点検させないこと、交換が必要と言われても複数の業者から見積もりを取ることを勧めている。訪問販売にあたる場合は、契約書面を受け取った日から8日以内であればクーリング・オフができる。期間を過ぎても、契約の重要な部分について事実と違う説明を受けていた場合は、気づいた時から1年間は取り消せることがある。相談先は消費者ホットライン「188」。

未払いのうちに相談が届いている

相談件数が5倍に増える一方で、代金をすでに支払った後の相談は全体の3.8%にあたる248件だった(2025年度)。2022年度は2件ながら14.3%、2023年度は8件で20.5%を占めていたのに比べると、割合は下がっている。契約はしたものの支払い前に不審に思い、消費生活センターへ持ち込む段階で止まっている例が多いことになる。

この手口は2年前から注意喚起が繰り返されてきた。同センターは2025年1月15日に「『分電盤の点検に行きます』の電話から始まる勧誘に注意」を公表し、経済産業省も同じ日に電気設備の点検を装う訪問者への注意喚起を出している。それでも件数は5倍に増えた。

今回、同センターは経済産業省と一般社団法人送配電網協議会に対し、電気設備の法定点検についての正確な情報提供と、点検商法への啓発を進めるよう要望した。消費者庁、内閣府消費者委員会、警察庁などにも情報を提供している。

契約当事者の8割が70歳以上という数字は、本人だけの注意では防ぎきれないことを示している。同センターは、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員からでも消費生活センターへ相談できるとして、周囲が高齢者の様子の変化に気づくことの重要性を挙げている。