警察庁は9月18日、道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案について、意見募集(パブリックコメント)を始めた。75歳以上の一部の運転者が免許更新時に受ける運転技能検査に、課題「方向変換」を加えるのが柱で、施行予定日は2027年6月1日。意見の受け付けは10月17日までの30日間で、電子政府の総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームなどで受け付ける。

踏み間違いの死亡事故、7割が75歳以上

運転技能検査は、教習コースなどを実際に運転して技能を確かめるもので、現在の課題は「一時停止」「指定速度による走行」「右折・左折」「信号通過」「段差乗り上げ」の5つ。ここに6つ目として「方向変換」が加わる。教習所で車庫入れのように後退して車の向きを変える課題で、後方や左右へ注意を配りながら、ハンドルとアクセル、ブレーキの操作を同時に行う必要がある。

狙いはペダル操作の正確さの確認にある。警察庁がまとめた有識者検討会の報告書によると、2025年に自動車で起きた死亡事故のうち、アクセルとブレーキの踏み間違いによるものは46件あり、このうち31件と約7割を75歳以上の運転者が占めた。75歳以上の死亡事故を人的要因別に見ると、ハンドルやペダルの「操作不適」が全体の3割超にあたる120件を占め、そのうち約3割が踏み間違いだった。75歳未満では操作不適は全体の1割程度で、踏み間違いは15件にとどまる。

検討会では「S字」や「クランク」を加える案も出たが、検査時間が延びて受検待ちが生じるなど教習所側の負担が増えるとして、追加は「方向変換」だけに絞られた。

検査に合格した人の方が事故を起こしていた

見直しのきっかけは、合格者を追った調査の結果だった。

警察庁は、2023年5月15日から8月31日までに運転技能検査に合格した5,270人と、検査の対象ではなく高齢者講習の実車指導を受けた75歳以上の8,233人について、その後2年間の人身事故と違反を追跡した。その結果、10万人当たりの人身事故件数は、検査の合格者の方が実車指導を受けた人の2倍以上に上った。違反件数も約2倍だった。運転技能が落ちて事故を起こしやすい状態の人が、検査を通過しているとみられる。

検査後に事故を起こした合格者81人について、その検査の中身をさかのぼると、約3割にあたる26人が「一時停止」の課題で減点されていた。「右折・左折」と「段差乗り上げ」で減点されていた人もそれぞれ11人いた。また、合格者が起こした事故83件の法令違反は「安全運転義務違反」が53件と6割を超え、うち26件は前方や左右の確認を怠る「安全不確認」だった。

報告書はこれを受け、今回の内閣府令案とは別に、警察庁の通達で定める減点項目に「安全不確認」を加え、交差点に進入するまで止まらない「一時不停止(大)」の減点点数(現行は20点)を引き上げる方向も示している。

大型二輪の「波状路」も基準を変更

改正案にはもう1件、大型自動二輪免許の教習に使う「波状路コース」の形状と構造の基準を新たに定める内容が含まれる。路面の突起を乗り越えながら低速で走る課題で、突起部の間隔を1.3メートルから2.6メートルへ、1.0メートルから2.15メートルへとそれぞれ広げる。難易度を落とさずに、より安全に教習を行えるようにするためで、施行予定日は2027年2月1日と、方向変換の追加より4か月早い。

対象は「違反歴のある75歳以上」

運転技能検査は2020年の道路交通法改正で設けられ、2022年5月13日に始まった。更新期間が満了する日の年齢が75歳以上で、かつ更新前の一定期間に信号無視、通行区分違反、踏切不停止など、事故につながりやすいとされる違反をした人が対象になる。認知機能の低下がなくても運転操作の誤りによる事故が多いことを踏まえ、技能が明らかに落ちた人には免許を更新させない仕組みだ。

採点は100点からの減点式で、普通免許などは70点以上、第二種免許を持つ人などは80点以上で合格となる。2025年の対象者は16万5,756人で、受検したのは延べ15万6,513人。合格したのは14万5,935人で、対象者に占める合格者の割合は約88%だった。

70歳以上の運転者には別に高齢者講習の受講が義務づけられており、その中の実車指導は運転技能検査と同じ内容で行われている。今回の課題追加は、この実車指導の内容にも及ぶことになる。