環境省と農林水産省は9月11日、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(第2版)」を公表した。通称は「生態系被害防止外来種リスト」で、2015年3月に作った第1版以来、11年ぶりの改訂となる。掲載種数は第1版の429種類から596種類へ167種類増え、約1.4倍になった。両省は「近年の外来種の侵入状況や生態系への被害に関する知見の蓄積を踏まえ、新たな外来種や国内由来の外来種などを追加した」と説明している。種によって科・属・種と記載の単位が違うため、数は「種」ではなく「種類」で数えている。

リストは2012年9月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2012-2020」で、侵略的外来種リストの作成が主要行動目標に掲げられたのを受けて作られた。2023年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」で見直すとされ、両省は2023年度から生物学などの専門家による検討を進めてきた。今年4月2日から5月1日まで意見公募を実施し、その結果も同時に公表している。

外来種の導入・定着の速度を2030年までに少なくとも50%減らすことは、世界目標の一つにも掲げられている。その進み具合を点検する国際会議は、生物多様性条約COP17がアルメニアで開幕 2030年の世界目標、初の進捗点検へで伝えている。

キンギョやヒメダカは飼えなくなるのか 規制がかかるのは「特定外来生物」だけ

今回の改訂で最も身近なのは、観賞用のキンギョとヒメダカが人工改良品種として新たに載ったことだ。ヒメダカは優先的に防除を進める「防除推進外来種」、キンギョは防除を検討する「防除検討外来種」に区分された。両省は、これらの種による生態系への影響に注意を促すとしている。

ただし、リストに載ることと法律で規制されることは別だ。環境省の外来生物法の解説によると、輸入、放出、飼養、譲渡しなどが禁じられるのは、同法に基づいて指定された「特定外来生物」に限られる。特定外来生物は「海外起源の外来種」の中から指定される仕組みで、キンギョやヒメダカのような国内由来の外来種や人工改良品種は今回のリスト掲載によって規制の対象になるわけではない。その特定外来生物の動物が実際にどこまで広がったかは、環境省が「緑の国勢調査」50年分を総合解析で、全国の累積確認種類数が1990年以前の19種類から2022年には41種類に増えたと整理されている。

公表文はリストの目的を、国、地方公共団体、事業者、研究者、国民が外来種対策を進める際の「基礎資料」として使ってもらうことだと説明している。概要資料も、リストを通じて「国民に対して外来種の適切な取扱いを呼びかける」ことを掲げる。リストに載ったことを理由に、家庭で飼っているキンギョやヒメダカを手放す必要はない。求められているのは、池や川に放さないことだ。

参考になるのが、2023年6月から「条件付特定外来生物」となったアカミミガメとアメリカザリガニの扱いだ。環境省によると、この2種は特定外来生物でありながら、規制の一部が適用除外とされている。法律の規制がかかる種でさえ扱いが分けられており、規制のないリスト掲載種はなおさら「飼ってよいが放さない」が基本になる。

魚類は国内由来が4種類から25種類へ 「国内の移動」も外来種になる

分類群別で増え方が目立つのが魚類だ。概要資料によると、国外から入ってきた外来種は55種類から89種類へ、国内の別の地域から持ち込まれた「国内由来の外来種」は4種類から25種類へと増えた。国内に自然分布域を持つ国外由来の外来種も新たに4種類加えている。国内由来の種類数は5倍以上で、両省は「国内での近縁種の移入が在来生態系に与える影響が明らかになってきたことを示している」としている。

国内由来の外来種とは、日本にもともといる生物でも、本来の分布域の外へ人が運べば在来の個体群と交雑したり、餌を奪ったりするという考え方に立つ区分だ。ヒメダカの掲載もこの文脈にある。野生のメダカがいる水辺に飼育品種を放せば、地域ごとの集団と交雑するおそれがある。

鳥類でも、南西諸島のキジが国内由来の外来種として初めて載り、国内由来は0種類から1種類になった。昆虫類では、沖縄本島の陸産貝類の多くに大きな影響を与えているヤエヤママドボタルを国内由来の外来種として新たに掲載した。国内希少野生動植物種を含む貝類が被害を受けており、防除が始まっているという。

哺乳類から植物まで 分類群ごとの主な追加

ほかの分類群でも掲載が増えた。哺乳類は国外由来が35種類から41種類、国内由来が6種類から7種類に増えた。新たに特定外来生物に指定された「タイワンザルとニホンザルの交雑種」を定着防止外来種に、「アカゲザルとニホンザルの交雑種」を防除推進外来種に加えている。鳥類は国外由来が15種類から22種類になり、四国で定着が確認されたサンジャクなどが載った。

爬虫類は国外由来が21種類から25種類に、両生類は13種類から16種類に増えた。両生類では、新たに特定外来生物に指定された「オオサンショウウオ属の交雑個体」を防除推進外来種に加えた。昆虫類は国外由来が20種類から33種類、国内由来が2種類から3種類となった。特定外来生物のハヤトゲフシアリやツヤハダゴマダラカミキリに加え、指定されていないソテツシロカイガラムシやムネアカハラビロカマキリも、国内での被害や侵入の事例を踏まえて載った。

無脊椎動物は整理し直した。掲載が増えたことから、これまで「その他無脊椎動物」にまとめていた甲殻類と軟体動物を独立させた。甲殻類は国外由来の20種類を載せ、沖縄県で定着が確認されたミステリークレイフィッシュは、まだ入っていない段階の区分から防除推進外来種に移った。植物は国外由来が190種類から234種類、国内由来が10種類から14種類に増えた。園芸種など身近な種については、どのような場所で特に防除が必要かを示す「特段の防除取り組みが要請される区域」という項目を新たに設けている。

クビアカツヤカミキリは「まん延期」の区分へ カナダガンは根絶で移動

区分が変わった種もある。サクラやウメ、モモを枯らすクビアカツヤカミキリは、第1版では「定着初期/限定分布」の段階の種として「その他の総合対策外来種」に入っていた。その後の分布拡大と被害の拡大を踏まえ、第2版では「分布拡大期~まん延期」の種として「防除推進外来種」に移された。

環境省と農水省は同じ11日、クビアカツヤカミキリの被害が深刻化していることを受け、第2回クビアカツヤカミキリ対策本部を霞が関の環境省で開くと発表していた。関係省庁と地方公共団体が連携し、今後の対策を強化するためとしている。発見情報を全国から集める取り組みは環境省の発見情報の地図公開の試行で、防除に充てる予算は予備費による防除の記事で伝えた。

逆方向の変更もあった。特定外来生物のカナダガンは国内で根絶されたことに伴い、防除の対象である「総合対策外来種」から、再び入り込ませないための「定着防止外来種」へ移っている。

区分は「防除推進」と「防除検討」の2つに パンフレットは今年度中

区分の名称も整理された。第1版の「定着予防外来種」は「侵入・定着防止外来種」に、「その他の定着予防外来種」は「定着防止外来種」に改められた。総合対策外来種は「緊急対策外来種」「重点対策外来種」「その他の総合対策外来種」の3区分だったものを、緊急と重点を統合した「防除推進外来種」と、「防除検討外来種」の2区分にまとめた。適切な管理の下で利用する「産業管理外来種」は残っている。外来種ごとに求められる対策の方向がわかりやすく伝わるようにするためだという。各種の記載には「関係する感染症」「防除事例」「他法令での位置づけ」といった項目も新たに加えた。

リストは環境省のウェブサイトで公開されている。環境省は2026年度中に、普及啓発用のパンフレットなどを作る予定だ。

外来種への対策は、国民が国に求める取組としても上位に挙がっている。内閣府の世論調査を伝えた「生物多様性」の意味を知っている人は38.3% 4年前の29.4%から上昇 ただし「行動に移せていない」は33.7%から42.7%に増加 内閣府世論調査も参照してほしい。国内にまだ入っていない種を水際で止める取り組みは、神戸港でコガネヒアリを国内初確認 働きアリ約2万個体、女王アリも約20個体 環境省が集中防除で定着阻止へで伝えている。