厚生労働省は9月15日、全国の労働基準監督署などが2025年(令和7年)に外国人技能実習生や特定技能外国人を使う事業場へ行った監督指導と送検の状況を公表した。技能実習生を使い、労働基準関係法令の違反が疑われるとして立ち入り調査を受けた1万3148事業場のうち、73.2%にあたる9619事業場で実際に違反が確認された。特定技能外国人を使う事業場でも、調査した8082事業場の76.5%にあたる6179事業場で違反が見つかっている。
多いのは機械の安全対策と割増賃金
技能実習生を使う事業場の違反で最も多かったのは、使用する機械などの安全基準で2994事業場(22.8%)。労働安全衛生法が定める、回転する刃や歯車に覆いを付けるといった危険防止の措置を怠ったものだ。次いで、健康診断の結果について医師から意見を聞く義務の不履行が2066事業場(15.7%)、残業や休日労働に対する割増賃金の未払いが2045事業場(15.6%)と続く。労働条件の明示が1655事業場(12.6%)、年次有給休暇が1542事業場(11.7%)だった。
特定技能外国人の側も並びはほぼ同じで、安全基準が1676事業場(20.7%)、医師からの意見聴取が1349事業場(16.7%)、割増賃金の支払いが1315事業場(16.3%)となっている。厚労省は、度重なる指導にも違反を是正しない重大・悪質な事案について、技能実習生関係で26件、特定技能外国人関係で9件を送検した。
なお、この違反件数は事業場全体に対する監督の結果であり、技能実習生や特定技能外国人以外の日本人労働者に関する違反も含まれる。
建設業は8割超 飲食店も80.6%
業種別の違反率には開きがある。技能実習では建設が2808事業場中2252事業場で違反が見つかり80.2%と最も高い。農業・畜産が589事業場中444事業場で75.4%、繊維・衣服製造が505事業場中366事業場で72.5%、食料品製造が1738事業場中1248事業場で71.8%、機械・金属製造が3523事業場中2416事業場で68.6%と続く。
特定技能でも建設が1238事業場中1008事業場の81.4%で最も高く、飲食店が366事業場中295事業場で80.6%、社会福祉施設が1047事業場中802事業場で76.6%だった。飲食店では違反事項の1位が労働時間(124事業場、33.9%)で、他業種が安全基準を筆頭とするのと様相が異なる。
調査の数は5年で4千件増えたが、違反率は動かない
監督指導を受けた技能実習生関係の事業場数は、2021年(令和3年)の9036から2022年9829、2023年1万378、2024年1万1355、2025年1万3148と増え続けている。一方で違反率は2021年72.6%、2022年73.7%、2023年73.3%、2024年73.2%、2025年73.2%と、5年間ほぼ横ばいだ。調べる件数を増やしても、違反が見つかる割合は下がっていない。
特定技能でも同じ傾向が出ている。監督指導した事業場は前年の5750から8082へ増えたが、違反率は前年の76.4%から76.5%とほとんど変わらなかった。
外国人本人から監督署に是正を求めてなされた申告は、技能実習生が108件、特定技能外国人が150件。技能実習生の申告内容は賃金・割増賃金の不払いが93件で大半を占め、解雇手続きの不備が15件、賃金が最低賃金を下回るものが7件だった。特定技能外国人も賃金・割増賃金の不払いが131件と突出し、最低賃金額未満が19件、解雇手続きの不備が17件となっている。
厚労省が挙げた事例の一つは土木工事業のケースだ。技能実習生から残業代が支払われていないと申告があり、監督署が立ち入り調査したところ、週40時間を超えて働かせた分の割増賃金が支払われていなかった。事業者は不足額の合計約110万円を支払っている。この事業者は、技能実習生が業務中にけがをした際の治療費に健康保険を使わせ、本人に自己負担分を払わせてもいた。業務上のけがの治療費は労災保険で全額まかなわれ、健康保険は使えない。監督署の是正勧告を受け、事業者は本人負担分を支払ったうえで、健康保険に返還した。
2027年4月、技能実習は育成就労へ
技能実習制度は、開発途上国への技能移転による「国際貢献」を目的に掲げてきた制度だが、実態は人手不足の職場を支える労働力になっているとの指摘が続いていた。2024年6月21日公布の令和6年法律第60号によって制度は廃止が決まり、2027年4月1日から育成就労制度に切り替わる。新制度は目的を人材の確保と育成と明記し、3年間の就労で特定技能1号の水準まで技能を引き上げることを想定している。
厚労省は今回の公表で「度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していく」との方針を示した。次回の集計対象となる2026年(令和8年)は、現行制度で監督指導が行われる最後の通年となる。
