上野賢一郎厚生労働相は10日の記者会見で、社会保障や労働に関わる各制度で異なる「高齢者」の年齢区分を制度横断的に総点検し、必要に応じて引き上げも視野に検討する方針を明らかにした。自民党と日本維新の会の両党が交わした合意に基づく取り組みで、見直しの手順を示す改革工程表を令和8年度末(2027年3月)までに策定する。
制度ごとに違う「高齢者」の線引き
日本では、何歳から「高齢者」とみなすかが制度によってばらばらだ。医療保険は75歳以上を「後期高齢者」、65〜74歳を「前期高齢者」と区分する。介護保険で保険料を負担し、原則としてサービスを受けられる「第1号被保険者」は65歳以上。公的年金の受給が原則として始まるのも65歳からだ。一方、高年齢者雇用安定法は企業に対し、希望する社員が70歳まで働けるよう就業機会の確保を努力義務として課している。
上野氏は、両党合意に「社会保障及び労働分野の制度ごとに設けられている高齢者の年齢区分等」を制度横断的に総点検し、「必要に応じて引上げ等を行う方向で検討する」と明記されていると説明した。対象となる制度の具体的な数や内容については「両党の今後の協議も踏まえながら検討する」と述べ、現段階での言及は避けた。
見直しの背景には、医学的な議論もある。日本老年医学会は2017年、心身の若返りを踏まえ、高齢者の定義をいまの65歳以上から75歳以上に引き上げるよう提言している。
「年齢によらない応能負担」も検討
医療費の窓口負担のあり方も見直しの対象に挙がっている。上野氏は「年齢によらない真に公平な応能負担の実現」を掲げ、現役世代が支払う支援金の負担を軽くする観点から、公費負担の内訳とあわせて「総合的に検討していくことが必要だ」と述べた。応能負担とは、負担できる力(所得や資産)に応じて負担を求める考え方を指す。
高齢化で医療や介護の給付が膨らむ一方、支え手となる現役世代は人口減少で細っている。年齢を基準にした一律の線引きを見直し、負担能力に応じて分担し直すのが政府・与党の狙いだ。
創薬力強化へ官民協議会
上野氏はこの日、創薬力の向上に向けた官民協議会を10日午後5時半から首相官邸で開くことも明らかにした。製薬企業やアカデミア(大学などの研究機関)、スタートアップ、患者団体が参加し、新薬を生み出す「創薬エコシステム」の強化策を話し合う。高市首相も出席する予定だ。
高齢者の年齢区分をめぐる工程表は令和8年度末までにまとめる方針で、どの制度を対象にどこまで年齢を引き上げるかは、今後の両党協議で詰める。