厚生労働省は9月11日、2025年度(令和7年度)に全国の都道府県労働局が対応した「使用者による障害者虐待」の状況を公表した。虐待が認められたのは421事業所の610人で、前年度に比べ事業所数で3.0%、人数で6.4%減っている。一方、通報・届出のあった事業所は1663(前年度比4.4%増)、対象となった障害者は1953人(同6.9%増)と、いずれも過去5年で最多となった。

8割超が「経済的虐待」

認められた虐待を種別でみると、経済的虐待が521人で83.1%を占めて最も多い。以下、心理的虐待62人(9.9%)、身体的虐待31人(4.9%)、放置等による虐待9人(1.4%)、性的虐待4人(0.6%)と続く(一人に複数の虐待が認められた場合は重複して数えている)。

経済的虐待は、障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)が「障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること」と定めるものだ。実際の中身は、賃金の不払いや最低賃金を下回る賃金の支払いが大きな比重を占める。労働局が講じた措置658件のうち、労働基準関係法令に基づく指導等が561件(85.3%)で、そのうち207件(全体の31.5%)が最低賃金法に基づく指導だった。

厚労省が示した事例の一つは、卸売業・小売業の事業所で働く発達障害のあるパート従業員のケースだ。労働基準監督署が監督指導で賃金台帳などを確認したところ、約束していた賃金が地域別最低賃金を1時間あたり約600円下回っていた。監督署は最低賃金法に基づき、差額を支払うよう事業主を指導している。

小規模な職場に集中

虐待が認められた421事業所を規模別にみると、従業員5〜29人が168事業所(39.9%)、5人未満が70事業所(16.6%)で、30人未満の職場が合わせて238事業所と半数を超える。業種別では医療・福祉が102事業所(24.2%)で最多となり、製造業87、卸売業・小売業58、宿泊業・飲食サービス業46が続いた。

虐待をした側の内訳は、事業主が359人(83.7%)で8割を超え、職場の上司は45人(10.5%)にとどまる。被害を受けた610人の就労形態は、パート・アルバイトが272人(44.6%)、正社員が203人(33.3%)。障害種別では精神障害220人(35.7%)、知的障害194人(31.4%)、身体障害140人(22.7%)の順だった。

通報は増え、認定は減る

通報・届出のあった事業所は、2021年度(令和3年度)の1230から5年で1663へと3割以上増えた。対象となった障害者数も同じ期間に1431人から1953人に増えている。これに対し、虐待が認められた障害者数は2023年度の761人をピークに2年続けて減少し、610人となった。

この統計は、障害者虐待防止法28条が厚生労働大臣に毎年度の公表を義務づけているものだ。同法は障害者虐待に気づいた人に通報を義務づけており、市町村に寄せられた通報は都道府県を経て、企業側が加害者となる「使用者虐待」であれば都道府県労働局へ報告される。労働局や労働基準監督署、ハローワークに直接相談することもできる。2025年度に通報・届出を把握した端緒は、労働局などへの相談が1281事業所(77.0%)で最も多く、都道府県からの報告237事業所(14.3%)、監督指導や事業所訪問による労働局側の発見145事業所(8.7%)が続いた。

厚労省は今回の結果を受け、「引き続き、地方公共団体との緊密な連携を図りながら、使用者による障害者虐待の防止のために取り組んでいく」としている。