東京電力は7月6日、福島第一原子力発電所にたまる「ALPS処理水」の海洋放出を始めた。放出開始は2023年8月からの通算で21回目、2026年度としては3回目にあたる。7月24日までの19日間で、約7800トン(貯蔵タンク約8基分)を海水で薄めて沖合へ流す計画だ。
今回の放出の中身
今回放出する処理水に含まれるトリチウムの総量は、想定で約1.3兆ベクレル。放出は毎日、海水と混ぜたあとの濃度を測りながら進め、1リットルあたり1500ベクレル未満に収まっているかを確認する。この値は国の規制基準(1リットルあたり6万ベクレル)の40分の1で、世界保健機関(WHO)が定める飲料水の指標のおよそ7分の1にあたる。
放出開始からの累計は約15万7000トンに達した。処理水は原発の敷地内に1000基を超えるタンクでためられており、廃炉作業を進める場所を確保するためにも、計画的に減らしていく必要がある。
そもそも処理水とは何か
福島第一原発では、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に地下水や雨水が触れ、放射性物質を含む「汚染水」が今も発生し続けている。この汚染水を「ALPS(多核種除去設備)」に通し、62種類の放射性物質を国の規制基準を下回る水準まで取り除いたものが処理水だ。
ただし、水素の仲間であるトリチウムだけは水と性質が近く、技術的に取り除くのが難しい。このため、大量の海水で薄めて濃度を大きく下げたうえで放出する仕組みをとっている。トリチウムは自然界や水道水にも微量に含まれ、世界各国の原発でも同様に海や大気へ放出されている。
年間の上限を下回る運用 国際機関も監視
東京電力は、年間のトリチウム放出量を、事故前の福島第一原発の管理目標だった「年22兆ベクレル」を上限とし、それを下回る水準に抑えるとしている。2026年度は年8回・合わせて約6万2400立方メートル、トリチウム量にして約11兆ベクレルの放出を予定する。
放出をめぐっては、国際原子力機関(IAEA)が現地に事務所を置いて継続的に監視し、日本の対応が国際的な安全基準に合致していると評価している。海域のモニタリングは東京電力に加え、国や環境省も実施し、測定結果を随時公表している。廃炉の完了までにはなお数十年かかる見通しで、処理水の放出も長期にわたって続くことになる。